152 / 153
最終回スペシャル・後編
【泣いていた女の子】
しおりを挟む
1月23日頃であった。
ゆめいろ市の私立学園(私がかつていた私立高校がある学園)の新総長に山岡の兄・重朝が就任した。
それに伴って、やる気のない生徒たちを強制的に追放した。
それと同時に、オクギョ理事長たちを筆頭に本学(私立高校)の校長、附属の小学校中学校の校長、短大の学長などの幹部クラス全員をハイセキして、学園すべてのジッケンをショウアクした。
1月24日に予定していた本学のスイセン入試が突然中止になった。
他の附属学校も新年度の生徒学生募集が強制的に停止した。
新総長のオウボウが原因で、生徒学生たちの間で大パニックが発生した。
そして2月4日頃、総長が突然シッソウした。
同時に、学園が債務超過におちいって破綻した。
ゆめいろ市は、今回の一件できわめて危険な状態におちいった。
さて、その頃であった。
溝端屋のダンナたちにナンキンされていた私は、2月6日の早朝頃にJR香椎線の須恵中央駅(福岡県須恵町)で解放された。
自由の身となった私は、なんとしてでも出国したい気持ちでいっぱいになっていた。
とにかく、一刻も早く日本から出国しなければ…
残された時間は、コクコクと削られて行く…
急げ…
時間がない…
2月7日頃であった。
私は、3月31日までの契約で二日市(福岡県筑紫野市)のマンスリーアパートで暮らすことになった。
その間に、日雇いの仕事で小銭を稼いで出国に向けて準備をすすめた。
その間に、ゆめいろ市で恐ろしい事件が多発した。
莉江子の兄・滋が酒場街でヤクザと乱闘さわぎを起こしたあげくに、チャカでドタマぶち抜かれた。
莉江子と両親と芳美は、浪江(福島県)にある芳美の実家へ逃げ込んだ。
自分の物を積んだリヤカーをひいて家出した温品くんは、ゆめいろ市を出たあと行方がわからなくなっていたが、2月11日頃に海沿いの道路で激しい横風にあおられて海に落ちて流されて行方不明になった。
オクギョ理事長たちは、長州組のヤクザたちとトラブルを起こしていたことが原因で一生追われる身になった。
…など、このあともゆめいろ市では恐ろしい事件がつづくようだ。
さて、その頃であった。
私は、日本から出国するための準備をすすめていたが、入国管理局のナマクラコームインのせいで手続きができないので困っていた。
どないしたらええねん…
助けてくれぇ…
私は、2月23日に入国管理局へ行って出国申請をお願いした。
しかし、担当者が『年度末で忙しい…』と言うて手のひらでパタパタ(シッシッ)とふって私を追いだしたので怒り狂っていた。
ふざけんなよ…
私は、ノラ犬か…
話は、大喪の礼の日の翌日のことであった。
私は、アパートの部屋でイビキをかいて寝ていた。
時は、午後3時過ぎのことであった。
(コンコン…)
玄関のドアをノックする音が聞こえた。
ドアをノックする音で目ざめた私は、どちらさまですかとたずねた。
「どちらさまですか?」
「ワシやワシ…」
「溝端屋のダンナ…」
(ガチャ…)
私は、玄関のドアをゆっくりとあけた。
玄関の前に、溝端屋のダンナが立っていた。
溝端屋のダンナは、私に声をかけた。
「溝端屋のダンナ…」
「イワマツくん、大丈夫かね?」
「大丈夫じゃあらへんねん…心身ともにしんどいねん。」
「そうか…イワマツくんも大変だったね…きょうは、イワマツくんにええもんみしたろと想ってきたんや。」
ええもんみしたろって…
一体なやねん…
溝端屋のダンナは、コンワクしている私に1枚の写真をみせた。
1枚の写真は、南アジアの系統の男の写真だった。
私は、溝端屋のダンナに写真の男のことを聞いた。
「この男性は、誰なのですか?」
溝端屋のダンナは、私にえげつない言葉を言うた。
「写真の男は、イワマツくんの実父や。」
それを聞いた私は、全身が凍りついた。
ウソやん…
そんなんウソに決まっとるねん…
私は、ダンナに写真の男のことを聞いた。
「ダンナ。」
「なんぞぉ~」
「私は、父親…いえ、両親の顔…しらんねん。」
「せやったのぉ…イヤなことを思い出してすまなんだのぉ~…この男は、イワマツくんが生まれた年に今治の建材屋の経営者のどら息子を殺して逃げた…その際に、わしらが世話したったんや…その恩をきれいに忘れた上に、数人の子分どついて逃げたんや…」
「そんな…」
「この男は、今もこのキンペンにセンプクしとるさかいに…もし見かけたらわしらにしらしてくれ…ほな…」
溝端屋のダンナは、私にこう言うたあとその場から立ち去った。
ワケが分からなくなった私は、ボーゼンとした表情で立っていた。
その日の夕方であった。
私は、アパートにいるのが苦痛になったのでショルダーバッグを持って再び家出した。
時は、夕方6時過ぎであった。
私は、西鉄二日市駅の前の商店街の通りをトボトボと歩きながら考え事をしていた。
これから先どないしようか…
日本から出国できなくなったら、どないしたらええねん…
そんなことばかりが頭の中で渦巻いていた。
商店街の通りのスピーカーから、南らんぼうさんの作詞作曲で、1979年にNHKの『みんなのうた』で発表された『泣いていた女の子』が流れていた。
歌を聴いた私は、悲しくなって泣いた。
「うう…マァマ…マァマ…」
日本から出国したい…
韓国にいるマァマに会いたい…
アメリカ合衆国のハイスクールに復学したい…
歌が流れている間、私は声を震わせて泣いた。
その日の夜、私は商店街の近くの公園のふじ棚で野宿した。
明日からは、ずっと野宿がつづく…
ホンマにサイアクだ…
ゆめいろ市の私立学園(私がかつていた私立高校がある学園)の新総長に山岡の兄・重朝が就任した。
それに伴って、やる気のない生徒たちを強制的に追放した。
それと同時に、オクギョ理事長たちを筆頭に本学(私立高校)の校長、附属の小学校中学校の校長、短大の学長などの幹部クラス全員をハイセキして、学園すべてのジッケンをショウアクした。
1月24日に予定していた本学のスイセン入試が突然中止になった。
他の附属学校も新年度の生徒学生募集が強制的に停止した。
新総長のオウボウが原因で、生徒学生たちの間で大パニックが発生した。
そして2月4日頃、総長が突然シッソウした。
同時に、学園が債務超過におちいって破綻した。
ゆめいろ市は、今回の一件できわめて危険な状態におちいった。
さて、その頃であった。
溝端屋のダンナたちにナンキンされていた私は、2月6日の早朝頃にJR香椎線の須恵中央駅(福岡県須恵町)で解放された。
自由の身となった私は、なんとしてでも出国したい気持ちでいっぱいになっていた。
とにかく、一刻も早く日本から出国しなければ…
残された時間は、コクコクと削られて行く…
急げ…
時間がない…
2月7日頃であった。
私は、3月31日までの契約で二日市(福岡県筑紫野市)のマンスリーアパートで暮らすことになった。
その間に、日雇いの仕事で小銭を稼いで出国に向けて準備をすすめた。
その間に、ゆめいろ市で恐ろしい事件が多発した。
莉江子の兄・滋が酒場街でヤクザと乱闘さわぎを起こしたあげくに、チャカでドタマぶち抜かれた。
莉江子と両親と芳美は、浪江(福島県)にある芳美の実家へ逃げ込んだ。
自分の物を積んだリヤカーをひいて家出した温品くんは、ゆめいろ市を出たあと行方がわからなくなっていたが、2月11日頃に海沿いの道路で激しい横風にあおられて海に落ちて流されて行方不明になった。
オクギョ理事長たちは、長州組のヤクザたちとトラブルを起こしていたことが原因で一生追われる身になった。
…など、このあともゆめいろ市では恐ろしい事件がつづくようだ。
さて、その頃であった。
私は、日本から出国するための準備をすすめていたが、入国管理局のナマクラコームインのせいで手続きができないので困っていた。
どないしたらええねん…
助けてくれぇ…
私は、2月23日に入国管理局へ行って出国申請をお願いした。
しかし、担当者が『年度末で忙しい…』と言うて手のひらでパタパタ(シッシッ)とふって私を追いだしたので怒り狂っていた。
ふざけんなよ…
私は、ノラ犬か…
話は、大喪の礼の日の翌日のことであった。
私は、アパートの部屋でイビキをかいて寝ていた。
時は、午後3時過ぎのことであった。
(コンコン…)
玄関のドアをノックする音が聞こえた。
ドアをノックする音で目ざめた私は、どちらさまですかとたずねた。
「どちらさまですか?」
「ワシやワシ…」
「溝端屋のダンナ…」
(ガチャ…)
私は、玄関のドアをゆっくりとあけた。
玄関の前に、溝端屋のダンナが立っていた。
溝端屋のダンナは、私に声をかけた。
「溝端屋のダンナ…」
「イワマツくん、大丈夫かね?」
「大丈夫じゃあらへんねん…心身ともにしんどいねん。」
「そうか…イワマツくんも大変だったね…きょうは、イワマツくんにええもんみしたろと想ってきたんや。」
ええもんみしたろって…
一体なやねん…
溝端屋のダンナは、コンワクしている私に1枚の写真をみせた。
1枚の写真は、南アジアの系統の男の写真だった。
私は、溝端屋のダンナに写真の男のことを聞いた。
「この男性は、誰なのですか?」
溝端屋のダンナは、私にえげつない言葉を言うた。
「写真の男は、イワマツくんの実父や。」
それを聞いた私は、全身が凍りついた。
ウソやん…
そんなんウソに決まっとるねん…
私は、ダンナに写真の男のことを聞いた。
「ダンナ。」
「なんぞぉ~」
「私は、父親…いえ、両親の顔…しらんねん。」
「せやったのぉ…イヤなことを思い出してすまなんだのぉ~…この男は、イワマツくんが生まれた年に今治の建材屋の経営者のどら息子を殺して逃げた…その際に、わしらが世話したったんや…その恩をきれいに忘れた上に、数人の子分どついて逃げたんや…」
「そんな…」
「この男は、今もこのキンペンにセンプクしとるさかいに…もし見かけたらわしらにしらしてくれ…ほな…」
溝端屋のダンナは、私にこう言うたあとその場から立ち去った。
ワケが分からなくなった私は、ボーゼンとした表情で立っていた。
その日の夕方であった。
私は、アパートにいるのが苦痛になったのでショルダーバッグを持って再び家出した。
時は、夕方6時過ぎであった。
私は、西鉄二日市駅の前の商店街の通りをトボトボと歩きながら考え事をしていた。
これから先どないしようか…
日本から出国できなくなったら、どないしたらええねん…
そんなことばかりが頭の中で渦巻いていた。
商店街の通りのスピーカーから、南らんぼうさんの作詞作曲で、1979年にNHKの『みんなのうた』で発表された『泣いていた女の子』が流れていた。
歌を聴いた私は、悲しくなって泣いた。
「うう…マァマ…マァマ…」
日本から出国したい…
韓国にいるマァマに会いたい…
アメリカ合衆国のハイスクールに復学したい…
歌が流れている間、私は声を震わせて泣いた。
その日の夜、私は商店街の近くの公園のふじ棚で野宿した。
明日からは、ずっと野宿がつづく…
ホンマにサイアクだ…
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
怪異・おもらししないと出られない部屋
紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。
ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。
こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。
強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。
アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる