77 / 153
第16話・九月の雨
【ダブルブッキング】
しおりを挟む
話しは、その日の正午に5分前のことであった。
ところ変わって、中央町にある5階建てのテナントビルにて…
テナントビルの3階に英彦の出向先のオフィスがある。
英彦は、ゆうべの出来事なんか気にせずにいつも通りにデスクワークをこなした。
ワープロを打つ仕事がひといきついた英彦のもとに、課長さんがヘラヘラしたツラでワープロの原稿を持って来た。
「(言いにくい声で)ああ、荻楚くん。」
「(ムッとした声で)なんでしょうか!?」
「(言いにくい声で)ああ、午後からでかまんけん…これ…打ってくれるかなぁ~」
課長さんは、デスクの上にワープロの原稿を置いた。
英彦は、なにも言わずにワープロの原稿を受け取った。
ワープロの原稿は、取引先の卸問屋さまに送るゴルフコンペの案内書である。
課長さんは、ヘラヘラしたツラで英彦に言うた。
「(ヘラヘラした声で)荻楚くん…ねえ荻楚くん…」
「(怒った声で)課長!!なれなれしい声で言わないでください!!」
「(困った声で)なに怒っとんねん~」
「(怒った声で)部下に小うるさく言うてめえが勤務態度が悪いことに気がつけよボケ!!」
「(困った声で)なんでそないに怒るねん…ワシは急な出向で荻楚くんにすまんことしたけんあやまっているのだよ…」
「(ますます怒る)それが人にあやまる態度か!?」
「(女々しい声で)ほな、どないしたらこらえてくれるんで…(総合商社)にいた時に社内恋愛を実らせて、カノジョと結婚する予定をぶち壊したことについては『ごめんね』とあやまったよ…ワシはワープロが使えんのや…他の従業員さんたちもワープロパソコンがゼンゼン使えんのだよ…ほやけんワープロ検定1級とワードエクセル1級の資格を持っている荻楚くんに頼んだんや…」
(ジリリリリリリリリリ…)
この時、正午を告げるベルが鳴り響いた。
英彦は、タイムレコーダーの時計が12時1分になったのを見て外出時間をタイムカードに打刻した。
そして、青いキャリーに入っている仕出し弁当を持って外へ出て行った。
(バーン!!)
その際に、英彦は入り口のドアを激しくしめた。
イカクされた課長さんは、女々しい表情でドアの方を見つめていた。
またところ変わって、たつろうさんの実家の近くにある印刷工場にて…
いつもうちでお弁当を食べていた将之は、この日は工場のすみで弁当を食べていた。
その時に、和子が魔法びんと湯のみ急須と茶葉が入っている赤いつつを持ってきた。
「将之さん。」
「和子ちゃん。」
「ここで食べよったん?」
「ああ…おにいがおるところにおったらしんどいねん。」
「ごめんね…おにいは、仕事がうまいことゆかんけんイライラしよんよ。」
「そう…」
「お茶入れるね。」
和子は、お茶を煎れる(いれる)準備を始めた。
将之がのむお茶を煎れ(いれ)ている和子は、将之に言うた。
「将之さんは、ここへきて何年になるん?」
「20年…中学の卒業式を終えたあとすぐにクニを出た。」
「高校に行かなんだのね。」
「ああ。」
「クニはどこ?」
「クニ…そんなんねえよ。」
「どうしてなの?」
「オヤジの酒のせいでクニ棄てた(すてた)。」
「そう…」
和子は、いれたてのお茶を将之に差し出した。
将之は、なにも言わずにお茶をのんだ。
この時、和子は一目で将之を好きになった。
将之も、和子を好きになった。
この日から、ふたりは結婚することを念頭にしたお付き合いを始めた。
(前章・前フシのたつろうさんが住んでる地区の表記について・たつろうさんは実家と離れている…松山市で暮らしている嫁はんと不仲なので、事実上別居中である…そのために、たつろうさんはもといた地区の実家で暮らしていると言うことである…小関の家にムコヨウシに入っているが、血をわけたおやきょうだいであることに変わりはない…)
ところ変わって、中央町にある5階建てのテナントビルにて…
テナントビルの3階に英彦の出向先のオフィスがある。
英彦は、ゆうべの出来事なんか気にせずにいつも通りにデスクワークをこなした。
ワープロを打つ仕事がひといきついた英彦のもとに、課長さんがヘラヘラしたツラでワープロの原稿を持って来た。
「(言いにくい声で)ああ、荻楚くん。」
「(ムッとした声で)なんでしょうか!?」
「(言いにくい声で)ああ、午後からでかまんけん…これ…打ってくれるかなぁ~」
課長さんは、デスクの上にワープロの原稿を置いた。
英彦は、なにも言わずにワープロの原稿を受け取った。
ワープロの原稿は、取引先の卸問屋さまに送るゴルフコンペの案内書である。
課長さんは、ヘラヘラしたツラで英彦に言うた。
「(ヘラヘラした声で)荻楚くん…ねえ荻楚くん…」
「(怒った声で)課長!!なれなれしい声で言わないでください!!」
「(困った声で)なに怒っとんねん~」
「(怒った声で)部下に小うるさく言うてめえが勤務態度が悪いことに気がつけよボケ!!」
「(困った声で)なんでそないに怒るねん…ワシは急な出向で荻楚くんにすまんことしたけんあやまっているのだよ…」
「(ますます怒る)それが人にあやまる態度か!?」
「(女々しい声で)ほな、どないしたらこらえてくれるんで…(総合商社)にいた時に社内恋愛を実らせて、カノジョと結婚する予定をぶち壊したことについては『ごめんね』とあやまったよ…ワシはワープロが使えんのや…他の従業員さんたちもワープロパソコンがゼンゼン使えんのだよ…ほやけんワープロ検定1級とワードエクセル1級の資格を持っている荻楚くんに頼んだんや…」
(ジリリリリリリリリリ…)
この時、正午を告げるベルが鳴り響いた。
英彦は、タイムレコーダーの時計が12時1分になったのを見て外出時間をタイムカードに打刻した。
そして、青いキャリーに入っている仕出し弁当を持って外へ出て行った。
(バーン!!)
その際に、英彦は入り口のドアを激しくしめた。
イカクされた課長さんは、女々しい表情でドアの方を見つめていた。
またところ変わって、たつろうさんの実家の近くにある印刷工場にて…
いつもうちでお弁当を食べていた将之は、この日は工場のすみで弁当を食べていた。
その時に、和子が魔法びんと湯のみ急須と茶葉が入っている赤いつつを持ってきた。
「将之さん。」
「和子ちゃん。」
「ここで食べよったん?」
「ああ…おにいがおるところにおったらしんどいねん。」
「ごめんね…おにいは、仕事がうまいことゆかんけんイライラしよんよ。」
「そう…」
「お茶入れるね。」
和子は、お茶を煎れる(いれる)準備を始めた。
将之がのむお茶を煎れ(いれ)ている和子は、将之に言うた。
「将之さんは、ここへきて何年になるん?」
「20年…中学の卒業式を終えたあとすぐにクニを出た。」
「高校に行かなんだのね。」
「ああ。」
「クニはどこ?」
「クニ…そんなんねえよ。」
「どうしてなの?」
「オヤジの酒のせいでクニ棄てた(すてた)。」
「そう…」
和子は、いれたてのお茶を将之に差し出した。
将之は、なにも言わずにお茶をのんだ。
この時、和子は一目で将之を好きになった。
将之も、和子を好きになった。
この日から、ふたりは結婚することを念頭にしたお付き合いを始めた。
(前章・前フシのたつろうさんが住んでる地区の表記について・たつろうさんは実家と離れている…松山市で暮らしている嫁はんと不仲なので、事実上別居中である…そのために、たつろうさんはもといた地区の実家で暮らしていると言うことである…小関の家にムコヨウシに入っているが、血をわけたおやきょうだいであることに変わりはない…)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる