乳房星(たらちねぼし)

佐伯達男

文字の大きさ
上 下
66 / 153
第14話・みずいろの雨

【みずいろの雨】

しおりを挟む
時は6月12日の正午過ぎのことであった。

(ドザー!!ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!ドスーン!!ドザー!!)

この日は、朝から雨…昼前から昼過ぎにかけて雷を伴った非常に激しい雨が断続的に降る予報であった。

たつろうさんの実家のテレビが置かれている居間のすぐ向かいにある広い土間でみつろうがセンタクをしていた。

(土間の右側が浴室と洗面所、左側にくみ取り式のトイレがある)

(ジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブ…)

みつろうは、大きめのタライに水とシャボン(センタクせっけん)を入れて、センタク板でセンタク物をこすっている。

センタク係のさよこがいなくなったので、汗くさい作業着を自分で洗わなければならなくなったことにみつろうはブツクサ文句言い続けていた。

そんなみつろうのもとに、和子がやって来た。

「おにい。」
「なんぞぉ~」
「そないにしんどいのであれば、洗濯機を買い直したらええやん。」
「できたらそのようにしたいけど、オヤジのお人よしのせいで洗濯機が買えねえのだよ!!そななことよりも、和子はなにしに来たんぞ!?」

和子は、みつろうにたけろう由芽夫婦がマダガスカルへ移住すると言うた理由を説明した。

「おにい…たけろうと由芽夫婦がマダガスカルへ移住したい理由が分かったわよ。」
「言わんでも分かるわ…作物を作りたいからだろ…マダガスカルの主食は米食だから米作りたいならここでもでけるのだよ。」
「そうじゃないのよ!!」
「そうなんだよ!!移住したい理由が作物を作りたい…それは米に決まってるだろ…米作りたいならうちの田を使えばええだけや!!」
「たけろうと由芽は作物を作りたいとは言うだけど、米とはいわなんだ!!」
「米じゃなかったらなんやねん!?」

和子は、ひと間隔空けてからみつろうに言うた。

「バニラ…バニラよ。」
「バニラ…それって、料理に使うあれか?」
「そうよ…バニラエッセンスの原料よ。」

たけろう由芽夫婦は、バニラの栽培にチャレンジしたいのでマダガスカルへ移住するというてた。

バニラは、ラン科の植物でマダガスカルはバニラの生産が盛んな国である。

製品になるまでの間、ていねいに栽培しなければならない。

和子は、たけろう由芽夫婦がマダガスカルでバニラの栽培にチャレンジすると言うた理由を数日前のテレビの夕方のワイドニュース番組の特集を見て訣意(けつい)したと言うた。

みつろうは、あきれ声で言うた。

「やっぱりテレビか…」
「テレビで取り上げられた人は、由芽さんの初恋の男性(ひと)よ…由芽さんにフラれてワーキングホリデービザを取得してマダガスカルへ行ったのよ…現地のバニラ畑で働きながらバニラの栽培方法などを学んで…貯めたお金で自分の土地をこうて…それでバニラの栽培を始めたのよ。」
「ああ、もうええ…それ以上の話しは聞きとない!!」

みつろうは、ブツクサ文句言いながらセンタクを続けた。

(ジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブ…)

「たけろうも逸郎も、どこのどこまで甘ったれているのだ!!オレはガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンして…お人よしのオヤジのためになにもかもガマンしてきたのに、幸せになれない…不公平だ!!」

ところ変わって、台所にて…

優香は、共稼ぎの世帯の奥さまから頼まれてお弁当を作っていた。

しかし、高2の長男は他の生徒のお弁当をパクっていたのでお弁当を作ることをやめた。

ただ、中2の次女はお弁当が必要なのでお弁当を作ることにした。

優香は、お弁当を作る食材を調理台にならべていた。

戸棚に置かれているポータブルラジオのスピーカーからNHKラジオで放送されている『昼のいこい』が流れている。

オープニングのあと、一曲目の歌・八神純子さんの歌で『みずいろの雨』が流れていた。

その時であった。

となり近所の奥さまが勝手口に上がってくるなりに、優香に怒った声で言うた。

「優香さん!!ちょっとかまんかしら!!」
「あら、おとなりの奥さま。」
「あんたね!!おひとよしもたいがいにしてや!!あんたの性格はオシュウトさんソックリねぇ!!」
「奥さま!!それはどういう意味なのですか!?御坊さん(共稼ぎの世帯の夫婦)カタのお子さまのお弁当を作るのがそんなにいかんのですか!?」
「いかんから怒っとんよ!!」

怒り狂っている奥さまは、優香に共稼ぎの世帯の夫婦の長男が大ケガを負って救急車で病院に搬送されたことを言うた。

「御坊さんカタの(高2の長男)くんね、お弁当をパクられた男子生徒に殴られて反撃したのよ…そのさいに頭を硬いもので激しく殴られて大ケガを負って救急車で病院へ搬送された…けど、病院に到着した直後に大量出血で心肺停止状態に鳴ったのよ!!」
「えっ、そんなぁ~」
「(高2の長男)くんがハヤベンしよったけん、あなな目におうたんよ…(長女)ちゃんは大阪で苦学生の暮らしをしてはる…(次女)ちゃんは成績優秀でテストは学年トップでみんなからソンケーされている…ご主人はトーダイをトップの成績で卒業した3高で、ソンケーの的になっている…なんで(長男)くんはあななダメな子になったのかしらねぇ~」
「奥さま!!そななことを言うためにうちに来たのですか!?」
「優香さん!!うちは優香さんにチューコクしたのよ!!」
「チューコクって、証券会社であつかってるあれ?」
「それは中期国債ファンド(チューコクファンド)!!あんたね!!つばえとる場合じゃないのよ!!」
「奥さま!!うちは厚意で御坊さんが奥さまの頼みを引き受けていたのよ!!厚意で引き受けることがそんなにいかんのですか!?」
「優香さん!!サイゴツウチョウをつきつけるわよ!!御坊さんカタの家に寄りかかっていたら、優香さんが被害を受けるのよ!!そのことはよぉにおぼえておきなさい!!」

となり近所の奥さまは、優香にサイゴツウチョウを突きつけたあと勝手口から出ていった。

サイゴツウチョウを突きつけられた優香は、お弁当作りをやめたあと、自分の部屋に閉じこもった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

恥辱の日々

特殊性癖のおっさん
大衆娯楽
綺麗もしくは可愛い女子高校生が多い女子校の銀蘭高校の生徒達が失禁をする話 ルーレットで内容決めてんで同じ内容の話が続く可能性がありますがご容赦ください

怪異・おもらししないと出られない部屋

紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。 ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。 こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。 強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選

上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。 一人用の短い恋愛系中心。 【利用規約】 ・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。 ・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。 ・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。

知人のくすぐり体験談

かふぇいん
大衆娯楽
知人(女性)から聞いたくすぐられた時の話を載せてます。

処理中です...