乳房星(たらちねぼし)

佐伯達男

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第3話・どうぞこのまま

【どうぞこのまま】

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7月5日の朝10時頃であった。

マァマと私がいるソッチョのビーチに、女医の富永ミンジュンさん(以後、ミンジュンさんと表記・当時27歳)が付き人軍団の男たち30人たちに護られてお越しになった。

ミンジュンさんは、ニューヨークの総合病院の産婦人科医の女医さんである。

この時、マァマと私は桟敷席で海をながめながら静かな時を過ごしていた。

ネイビーのリクルートスーツ姿のミンジュンさんは、マァマと私にやさしく声をかけた。

「こんにちは…あなたがコリントイワマツヨシタカグラマシーさまですね。」
「あっ、はい。」
「初めまして、私は女医の富永ミンジュンです。」
「あっ、富永さん。」
「ミンジュンでいいよ。」
「あっ、ミンジュンさん…よろしくお願いいたします。」

このあと、3人は海の家へ移った。

ところ変わって、海の家の6畳ひと間の部屋にて…

最初に、ミンジュンさんはマァマと私に大番頭はんと連絡がついたことを伝えた。

そのあと、ミンジュンさんはマァマに私の今後のことについて話した。

「眞規子さん。」
「はい。」
「ヨシタカさんの今後の人生設計のことで眞規子さんにお話しがあります。」
「よーくんの人生設計のことですか?」
「ええ。」

ミンジュンさんは、ひと間隔おいてマァマに話した。

「ヨシタカさんはゆめいろ市から家出して以降各地を転々としながらバイトをしていたこととゆめいろ市の高校をやめる手続きが取れたことと女子生徒の家のご家族との示談が成立したことをカンアンして…もう一度、再渡米させます。」
「もう一度、再渡米…そんな…」

マァマは、震える声で『そんな~』と言うた。

ひと間隔あけて、ミンジュンさんは、私に再進学先のハイスクールが決まったことを伝えた。

「ヨシタカさん。」
「あっ、はい…」
「ヨシタカさんの再進学先のハイスクールが決まったのでお伝えします…今年の9月から、ニューヨークにある産業系のハイスクールへ行くことが決まりました。」
「産業系のハイスクール…」
「働きながら学ぶ通信制の高校です。学校の建物はアメリカ国内にあります…サポート校は屋久島の通信制高校です。」
「通信制高校へ行きます。」
「その方がいいわね…同時にイワマツを作るプロジェクトを早めに始めましょう。」

私は、マァマと別れて再渡米することを決意した。

マァマと私とミンジュンさんは、いったんソウルへ戻ることにした。

午後1時半頃に、3人はヤンヤン国際空港からチャーター機に乗ってソウルキンポ空港へ戻った。

その後、遥姐はんの夫婦の家に帰って再渡米する旨を伝えて、出発準備を始めた。

時は、夜7時頃であった。

ところ変わって、ソウルキンポ空港にて…

ミンジュンさんと私は、夜8時発の最終の飛行機に乗って旅に出る。

遥姐はんの夫婦とマァマがミンジュンさんと私のお見送りに来た。

遥姐はんのダンナさんは、ミンジュンさんに私のことを頼むと伝えた。

「ほなミンジュンさん、よーくんを頼むね。」
「あっ、はい…お受けいたします。」

このあと、ミンジュンさんは私の手を引いて搭乗ゲートに入った。

つづいて、付き人軍団の男たち30人があとにつづいて搭乗ゲートに入った。

それから3分後であった。

サクラン状態におちいったマァマが、搭乗ゲートに向かって走り出した。

遥姐はんが必死になってマァマを止めたが、マァマは激しい叫び声をあげた。

「イヤ!!よーくん行かないで!!」
「眞規子!!眞規子!!」
「イヤ!!行かせて!!」
「眞規子!!よーくんは眞規子と別れて旅に出るのよ!!」
「イヤ!!行かせて!!」
「あきまへん!!」
「イヤ!!よーくんと別れたくない!!」
「アカン言うたらアカン!!よーくんは眞規子と別れんとアカンのよ!!」

それから30分後…

ミンジュンさんと私が乗り込んだ最終便の飛行機が滑走路から飛び立った。

遥姐はんをふりほどいたマァマは、ロビーの大きな窓に写る夜景を見ながら泣き叫んだ。

「よーくぅーん!!行かないで!!行かないで!!」

マァマは、何度も繰り返して私を呼んでいた。
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