乳房星(たらちねぼし)

佐伯達男

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第1話・遠くへ行きたい

【国境の町】

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時は流れて…9月27日のことであった。

一行は日本を出国したあと、韓国~フィリピン経由で中国に入国した。

入国したあと、ペキンから長距離列車に乗って、東北部の方へ向かった。

この日の朝9時半頃のことであった。

一行は、内モウコ自治区東部にある国境の町・マンシュウリに到着した。

マンシュウリは、中国とモンゴルとソヴィエトの三つと国境を接している人口17万人の都市(まち)…

19世紀まではのどかな遊牧地であったが、20世紀初頭に鉄道が開通したのを機に、国際貿易都市・中ソ間の交通の要所として発展した…

(ガタンガタンガタンガタン…ピーッ…)

駅の構内に、ソヴィエトから運ばれてきた物資を積んだ貨物列車がゆっくりと通過した…

市街地には、たくさんの高層ビルが建ち並んでいる。

長距離列車から降りた一行は、プラットホームで待ち合わせていた中国人ガイドの男性と合流したあと、駅の玄関の前に停車しているマイクロバスへ向かった。

それから40分後に、一行が乗っているマイクロバスが駅の玄関前から出発した。

行き先は、東世紀大街にある大型病院である。

大型病院には、私の実父の実父(祖父にあたる人)のコリンチャンスイワマツキザエモンセヴァスチャンが入院している。

病室には、ケントさん夫妻の事務所のスタッフさん6人と番頭はんが雇った付き人軍団の男たち6人が待機している。

病院に到着したあと、一行はセヴァスチャンじいさんと一緒に、対策会議を開く予定である。

時は、午前11時に5分前のことであった…

一行は、東世紀大街にある大型病院に到着した。

ところ変わって、セヴァスチャンが入院している病室にて…

一行は、病院の職員の案内で病室に入った。

病室の戸がしめられた後、付き人軍団の男たち6人が入り口をふさいだ。

他の数人の付き人軍団の男たちは、病室の灯りをつけたあと窓のカーテンを閉じた。

その後、一行とセヴァスチャンじいさんとの間で打ち合わせを始めた。

セヴァスチャンは、事務長はんに例のアレはどうなっているのかとたずねた。

「守口…例のアレは大丈夫か?」
「はっ、例のアレは、アークレイリにいるケントさんご夫妻にすべて託しました…じいさんのユイゴン通りに、イワマツの財産書に記載されている全財産は、きょうこさんの胎内にいる赤ちゃんに行き渡るように手はずを整えました。」
「ホーデ、ホーデ…」
「とにかく急ぐぞ…あのクソガキが現れたらややこしいことが起こるさかいに…みんな、打ち合わせを始めるぞ!!」
「はっ…」

一行とセヴァスチャンじいさんの打ち合わせは、40分間つづいた。

(ゴーッ)

それから100分後のことであった…

セヴァスチャンじいさんとの打ち合わせを終えた一行は、マンシュウリの空港からチャーター機に乗って、ヘルシンキのヴァンター空港を経由してアイスランド第二の都市・アークレイリへ向かった…

現地に到着した一行は、ケントさん夫妻と合流したあと、早速手続きを取る作業を始めた。

10月4日、実母とセヴァスチャンじいさんの婚姻届をアークレイリの市役所に提出した。

この瞬間、私が生まれたあとの本籍地はアイスランドに決まった…

それから1ヶ月後、実母とセヴァスチャンじいさんの家の世帯がグリムスエイ島にある一戸建ての家がある在所へ移った…

そして、11月30日…

「オギャー、オギャー、オギャー、オギャー、オギャー、オギャー、オギャー…」

私・コリントイワマツヨシタカグラマシーは、グリムスエイ島にある一戸建ての家で、多民族多国籍の男性として生まれたけど、数日後に実母と別れた。

日本人の名前であるけど、私は日本人ではない…

私は、複雑な事情を抱えた状態でこれから先の人生を送ることになった。
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