乳房星(たらちねぼし)−1・0

佐伯達男

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第14話・飾りじゃないのよ涙は

【ふぞろいの人生】

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時は、日本時間2月11日の午後3時頃であった。

またところ変わって、和歌山市新留町《きしゅうわかやまにいどめちょう》にある中型の2階建ての借家にて…

借家に中古品の家具と家電製品が次々と入れられていた。

借家は、ゆきさんと哲人《てつと》と前の夫の連れ子・沙都水《さとみ》と沙都水のふたりの娘・沙由水《さゆみ》(長女・11歳)と沙緒莉《さおり》(次女・4歳)の合計5人が暮らす予定である。

ゆきさんと哲人《てつと》は、ケーサツの生活安全課《セイアン》に保護された。

まきたくみ夫婦が身元を引き受ける形で出たあと、ここに移り住んだ。

沙都水《さとみ》は、前の夫とリコンしたあと沙由水《さゆみ》と沙緒莉《さおり》を連れてここに帰って来た。

ゆきさんは、イワマツグループを退職して家庭に入ることにした。

哲人《てつと》は、契約職員《ケーヤク》で和歌山市役所《しやくしょ》に再就職した。

沙都水《さとみ》は、和歌山市内《しない》にあるスーパーストアに再就職した。

沙由水《さゆみ》は、和歌山市内《しない》の小学校に…

沙緒莉《さおり》は、和歌山市内《しない》の幼稚園に…

それぞれ転校・転園した。

ゆきさんは、家族5人でもう一度やり直して行こうと決意した。

しかし、その一方でゆきさんは医師から『要精密検査ですよ…』と言われたことをきれいに忘れていた。

ゆきさんは、大型病院ヘ精密検査に行くことがめんどくさいと感じていたと思う。

時は、アメリカ東部時間2月12日の夜7時半頃であった。

またところ変わって、ヒルトンミッドタウンホテルのキッチン付きの豪華スイートルームにて…

特大広間のテーブルにA班のメンバーたちが集まっていた。

キッチンにいる風香《フー》ちゃんとイナ姐《ねえ》はんは、プルコギを作っていた。

この時、ゆきさんが忘れて行ったケータイに電話がかかっていた。

ゆかさんが電話の応対をしていた。

電話は、大阪鴫野《おおさかしぎの》にある中型病院…ゆきさんが検査を受けた病院の男性医師からであった。

ゆかさんは、困った声で言うた。

「もしもし、鴫野《しぎの》の(中型病院)さまでございますね…うちは、君波ゆきの次姉《あね》でございますが…あの子…ケータイを置いて外へ出たのでうちが預かっています…要精密検査…ゆきは、身体の具合がそんなに悪いのですか?…もしもし…うちはゆきと離れ離れになっているので…あの子の様子はよくわからないのですが…分かりました…次回、帰国する日が決まってないので…帰国した際に精密検査に行くように伝えておきます…どうもすみませんでした。」

(ピッ…パタン…)

ゆかさんは、ケータイをとじたあと大きくため息をついた。

ゆりさんは、ゆかさんに声をかけた。

「ゆか。」
「なあにおねーちゃん。」
「ゆきが検査を受けた病院から電話があったのね。」
「うん。」
「ゆきは、要精密検査と言われたのね。」
「せや…エコー検査で子宮ケイツイガンの疑いが見つかったのと…MRI検査で脳の血管にコブが見つかったのよ。」

ゆりさんは、おどろいた声で言うた。

「それは非常に危ないわよ!!このままだと、ゆきは死んじゃうわよ!!」
「そんな~」

ゆりさんは、ものすごく困った声で言うた。

「次回、ヨシタカさんのテレビ出演する日がまだ決まっていないわね…沖縄ヘ行く予定ができた場合…途中で伊丹か関空に到着するかどうかよ…こんな非常時にゆきはなに考えているのよ!!」

この時、大番頭《おおばんと》はんがつらそうな声で言うた。

「もうそななことはどーでもええ…それよりもアテは腹がへってんねん…風香《フー》ちゃん、イナさん…プルコギはまだでおますか~」
「おまたせいたしました~」

このあと、エプロン姿の風香《フー》ちゃんとイナ姐《ねえ》はんがプルコギが入っている大きな鍋を持って特大広間に入った。

その後、食卓づくりを始めた。
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