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第11話・願いごとのもち腐れ

【風の中】

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時は、1月20日の午前10時頃であった。

48時間に及ぶ大量収録を終えた私は、番組スタッフさんたち3人と一緒にA班のメンバーたちが待機している楽屋に帰った。

ところ変わって、楽屋にて…

「ああ、おかえりなさいませ…」

大番頭《おおばんと》はんは、スタジオから帰って来た私に声をかけたあと福也《さちや》さんにディレクターチェアを用意してほしいと頼んだ。

「福也《さちや》さん…福也《さちや》さん!!」
「はい?」
「『はい?』じゃおまへんねん!!ヨシタカさまがお帰りになられましたよ!!」
「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて、いす!!」
「ああ、すみませんでした~」

ものすごくあせった表情を浮かべている福也《さちや》さんは、大急ぎでディレクターチェアをセットした。

「ヨシタカさま、おまたせいたしました。」
「あっ、はい。」

私は、疲れた表情でディレクターチェアにこしかけた。

その後、ゆかさんが私のもとにやって来た。

ゆかさんは、かばんの中から水銀の血圧計を取り出したあと腕の曲り目に聴診器をあてた。

その上からリストバンドを巻き付けたあと、血圧測定を始めた。

(ペコンペコンペコンペコン…プシュー…)

リストバンドのエアーが抜けたあと、ゆかさんはチェックシートに血圧値と脈拍数を記入した。

それから2分後であった。

ゆかさんは、福也《さちや》さんに対して怒った声で言うた。

「福也《さちや》さん…福也《さちや》さん!!」
「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて体温計…」
「えっ?」
「体温計!!」

ゆかさんにどやされた福也《さちや》さんは、ものすごくアタフタとした表情で言うた。

「すみません…忘れてました~」
「コラ!!」
「すみません…今すぐにはかります…」
「早くしなさいよもう!!」
「え~と…」

福也《さちや》さんは、オムロンの電子体温計をそのまま入れようとしたのでゆかさんから『電源!!』と怒鳴られた。

「すみません~」
「しょうがない子ねもう!!」

ものすごく怒った表情を浮かべているゆかさんは、福也《さちや》さんから電子体温計を取りあげた。

ゆかさんは、電子体温計の電源を入れたあと私に電子体温計を渡した。

その後、私は電子体温計を右わきにはさんだ。

時は、午前11時50分頃であった。

またところ変わって、テレビ局の正面玄関前にて…

正面玄関前に特大バスとヒノクルージングレンジャーのウイング(特大トラック)3台の合わせて4台の車両が停まっていた。

A班のメンバーたちは、付き人軍団の男たち3000人に見守られる形でバスに乗り込んだ。

その後、丁稚どんたち5000人と運送会社の作業員たち500人による大荷物を積み込む作業が開始された。

丁稚どんたち5000人と運送会社の作業員たち500人は、特大バスのトランクと特大トラックのウイング(開閉式の荷台)に大荷物を積み込む作業に取り組んでいた。

A班のメンバーたちは、バスに乗り込んだあと子守女《こもりめ》さんたちから受け取った丸徳寿司チェーンのバッテラの詰め合わせでランチを摂った。

さて、その頃であった。

またところ変わって、都島南通りにて…

日菜《ひな》から福也《さちや》が忘れて行ったケータイを届けてほしいと頼まれた奈保子《なおこ》は、目的地へ向かって歩いていた。

しかし、途中で道に迷ったのでものすごく困っていた。

目印になるものが見つからないよぅ…

早くしないと、出発時刻が来てしまうわ…

奈保子《なおこ》が大パニックを起こしたので、冷静に行動することができなくなった。

時は、午後1時過ぎであった。

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…)

テレビ局の正面玄関前に停まっていた車両4台が一斉に出発した。

車両4台は、テレビ局から出発したあと阪神高速道路へ向かって走行した。

車両4台が法円坂ランプに入った時であった。

奈保子《なおこ》がテレビ局に到着した。

奈保子《なおこ》は、大急ぎで受け付けの人にたずねた。

「すみません…あの…内之倉福也《うちのくらさちや》さまは…」

受け付けの人は、めんどくさい声で『ただいま出発しましたけど…』と答えた。

そんな…

奈保子《なおこ》は、ものすごくがっかりとした表情でつぶやいた。

(ゴーッ…)

時は、夕方4時頃であった。

A班のメンバーたちが乗り込んだ専用機が大阪伊丹国際空港から飛び立った。

専用機は、福岡空港を経由して目的地へ向かう予定である。

このあとも、予定がたくさん入っているので休みはない。
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