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第10話・長い夜

【さらばシベリア鉄道】

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時は、2013年1月8日の午前11時頃であった。

またところ変わって、中国東北部・内モウコ自治区のマンシュウリの中心地にあるプロテスタント系の教会の敷地の中にある霊園にて…

この日は、セヴァスチャンじいさん(私の実父)の三十五回忌の法要がいとなまれた。

セヴァスチャンじいさんは、太平洋戦争が終結した翌年にここに移り住んだ。

35年前の冬、自宅の寝室で病気療養中に心不全で亡くなった。

A班のメンバーたちとゆなさんとゆみさんは、神父さんと一緒にセヴァスチャンじいさんの墓前に並んでいた。

神父さんは、私に大きな花輪を手渡した。

神父さんから花輪を受け取った私は、セヴァスチャンじいさんの墓前に花輪をお供えした。

その後、メンバーたち全員は静かにいのりをささげた。

(プォー!!プォー!!ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン!!)

時は、午後8時過ぎであった。

A班のメンバーたちとゆなさんとゆみさんは、シベリア鉄道の夜行列車に乗ってハルビンへ向かった。

私がいる個室にて…

ベッドに横たわっている私は、エクスペリアのウォークマンで歌を聴いていた。

イヤホンから大滝詠一さんの歌の全曲集が流れていた。

その中で『さらばシベリア鉄道』を一曲リピートにセットして聴いていた。

私はこの時、2歳くらいの時に大好きなママ(当時・22歳)と一緒にマンシュウリ近郊にある草原に行った。

人生で初めて恋をしたお相手は、ママである…

人生最初のデートは、おててをつないでゆっくりと草原を歩いた…である。

時は、1950年の5月はじめ頃だった。

ママと私がやって来た草原は、マンシュウリハイラル区から南へ200キロ先にあった。

中国とモンゴルの国境付近にある小さな場所だった。

第二次世界大戦中に発生したノモンハン事件の舞台となった草原と言えばわかると思う…

時は、午後2時半頃であった。

2歳の私とママは、遠くに見えるゲートを見つめていた。

ゲート付近には、多くの人たちが往来していた。

2歳の私は、ママに声をかけた。

「ママ~」
「なあによーくん。」
「ママ、遠くに見えるゲートの近くに…人がいっぱいいるよ。」
「あら、ほんとうね。」
「ママ、ぼくたちも行こうよ~」
「よーくん…よーくんがゲートの近くに行きたいと言う気持ちは分かるけど…あのゲートは…だれでも通れるわけじゃないのよ。」
「どうして?」
「あのゲートは、モンゴル人と中国人だけしか通りぬけることができないのよ。」

ママが言うた言葉に対して、2歳の私は悲しげな表情でママに言うた。

「ママ、行きたい…ぼくだってモンゴル人と中国人の血が流れているのだよ~」

ママは、もうしわけない声で2歳の私に言うた。

「よーくんごめんね…よーくんの身体にモンゴル人と中国人とモンゴルの系統の血が流れていたよね…ママの身体にもよーくんと同じ血が流れているのよ…だけどね…よーくんとママは、複数の国の国籍を保有していることと…よーくんとママの身体に複数の国と民族の血が流れている…と言うことがあるのよ…あと…モンゴルと中国の(政治の)形がさま変わりしたことなどもあるし…」

2歳の私は、ママに言うた。

「それじゃあ、いつになったらあのゲートをとおることができるの?」
「いつになるのかは分からないけど…いろんな国の人々が往来できるようになったら、ママと一緒におててつないで…ゲートを越えようね。」
「うん。」

このあと、ママは立ち上がったあと両手を広げて私を読んだ。

「よーくん…おいで~」
「ママ~」

私は、ママの199のMカップの極爆乳《おおきすぎるおっぱい》に抱きついた。

「よーくん…キュー…キュー…」

ママは、両手で2歳の私の身体を優しく抱きしめた。

「ママ…ママ…ママ…ママ…」
「よーくん…キュー…キュー…キュー…キュー…」

それから数分後であった。

2歳の私は、大好きなママと一緒に草原をかけめぐった。

「ママ~、ママ~、ママ~…」
「よーくん、ママはここにいるよ。」

2歳の私とママは、無我夢中で草原をかけめぐった。

それから10分後であった。

2歳の私があたりを見渡した時であった。

一緒にいたはずのママがいなくなった。

「ママ…ママ…ママ…ママ…」

2歳の私はママを呼んだけど、どこにもいなかった。

「ぐすんぐすんぐすんぐすん…」

2歳の私は、ひとりで泣いていた。

(プォー!!プォー!!プォー!!ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン!!)

時は2013年1月9日深夜であった。

またところ変わって、夜行列車の個室にて…

ベッドに横たわっている私は、エクスペリアのウォークマンで歌を聴きながら考え事をしていた。

イヤホンから流れている『さらばシベリア鉄道』は、大滝詠一さんの歌声から太田裕美さんの歌声に替えて一曲リピートにセットして聴いていた。

ママ…

ママは…

あの草原から…

どこへ行ったのかな…

どうして…

私のもとから…

離れて行ったのかな…

ママ…

ママ…

ママ…

ママ…

「うううううううううううううううううううううううう…ママ…ママ…ママ…」

私は、震える声で泣いた。

スマホの画面に貼られている保護フィルムの上に、大つぶの涙がたくさん落ちた。

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