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本編

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「あとね、私魔導研究所で働きたいんだ」

「は?何でだ?」

「サリーちゃんをただの女の子に戻してあげたい。その為の研究出来るところって魔導研究所しかなくってさ。それ許してくれるんならグレンの嫁でも何でもなる!」

グレンは眉間にシワ寄せる。ここは貴族の女性が社会に出るのが一般的でない世界だ。普通の感覚なら許せないだろうな。

「……いいだろう。ただし魔導研究所は狭き門だ。俺は手心を一切加えないからな」

「え、ほんと!?もちろんだよ!ありがとうグレン!」

「言質は取ったぞアンリ」

ニヤってグレンが嫌な笑い。え、何どういうこと!?

「カル、聞いていたな?」

「はっ!確かにこの耳で」

おいいいい!あんたいつからそこにいたカル!?

「おめでとうございます殿下、アンジェリカ様」

カルにっこり爽やか素敵な笑顔。はぁマジ良い体……じゃなくて!

「証人を盾に結婚するまで私を脅すつもり!?」

「もちろんそのつもりだ。逃さないって言っただろ?外堀から何重にも埋めてやる」

笑顔真っ黒魔王スマイルなグレン。何か嵌められた感満載……でもさ、そこまでして私と結婚したいんだねグレン。ここって普通なら好きだとか愛してるだとか言う場面じゃん?こう肝心なところ素直じゃないのが何か妙に可愛く思えちゃったんだよね。

「分かりましたよ王子様、あんたみたいな捻くれ性悪の相手なんて私くらいしか務まらないだろうしね」

べって舌出したらぐにって頬っぺた摘まれた。

「痛いな!何すんだ!」

「本当にこんな生意気なヤツの何が良いんだか……こんな物好き俺くらいなもんだろ」

悔しいけどぐっと言葉に詰まる。何だかんだ私のことまるごと信じて受け入れてくれるような男って本当グレン位なのかもしれない。
記憶喪失ってことでさ、家族にも言えてないんだ。頭おかしくなったと思うじゃん普通。グレンって意外と懐深いのかな?こんな私と結婚したいだなんてさ。

「もー分かった逃げないよ!あんたと結婚する!」

「アンリ!」

満面の笑みのグレンに力一杯抱きしめられた。いでででで!加減してよねもう!でも凄い嬉しそうなグレン見てたら文句も引っ込んじゃった。何か胸の奥があったかくてムズムズする。
あ、私幸せかも──アンジェリカになって初めて心からそう思った。
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