上 下
74 / 77
本編

72

しおりを挟む
グレンは王宮の中庭まで私をエスコートした。あれ、ここっていつぞや迷子になってシアさんと初めて会った場所じゃないかな?

今日はまだ日も高いから色んな色の花が一面咲き乱れてるのが見えた。うん、凄い綺麗!花の名前とか全然知らないけど!
私が密かに喜んでるの、グレンにはお見通しみたいだ。このすぐ顔に出るの何とかしたいよもう!

「気に入ったか?ここは俺の母の為に作られた場所なんだ」

へえ、こんな綺麗な場所を……今でもよく手入れされてるし王様、もしかして王妃様のこと?

「父上は愛してたらしい。だから母の命を奪われて以降全てにおいて気力を失ったんだ。その結果の現状なんだろうな……」

やれやれって感じでグレンはため息つく。無気力でアニエステ妃の暴走も放ったらかしだったのか……何というか正直呆れちゃうけど王様も不器用な方なんだな。

「王宮は俺にとって地獄だった。常に命を狙われながら、感情を殺して淡々と与えられた役割をこなす。何で生きてるのかも良くわからなかったな。なあアンリ」

「ん?」

「お前が来てから俺は生きるのが楽しくなった。何でだろうな、厳しい精神鍛錬を受けてきた筈なのに、お前の前では感情もうまくコントロールできないんだ」

グレンいつもとは違う少し照れ臭そうな顔してる。王子様っていうより、等身大の17歳の青年って感じがした。これが素のグレンなんだな、きっと。

「だから俺と結婚しろアンリ」

「はいっ!?」

思わず目ん玉ひん剥いちゃうよ私。しかもイエスマンタイムだから拒否できないじゃん!

「仕方ないだろ、お前と居るとすげぇ楽しいんだ。素でいられるのもお前の前だけだしな。だから諦めて俺と結婚しろ」

グレンズルい!策士め!

「……イエスと言う前に大事な条件が」

「お前今イエスマンじゃないのか?」

「こんな大事な事ゲームみたいに従わせるなっ!バカグレン!」

「お前意外に真面目だよな。ゲーム感覚でサラッと流せないのか」

「あんたが素直に心情明かしてるのにゲーム感覚で流せるかっ!あんたそういうとこポンコツだよね!」

「ポンコツ……」

グレン固まる。頭良かったりとかするのかもだけどさ、人の心の機微ってやつに関してコイツはマジでポンコツ!

「私は一夫一婦な価値観で育ったから、愛妾愛人作り放題なこの世界の男の価値観がまるで合わない!だからグレンもハーレム作るつもりなら──」

「バカか……女なんてお前一人でも手に余る。それにな、こんな世界で生きてきて俺が女好きになると思うか?」

いや、グレンってむしろ嫌いだよね女……アニエステ妃の弊害がこんなところに……あ、私にとっては感謝すべき点なのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」 と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。 攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。

❄️冬は つとめて
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生した私。昨今、悪役令嬢人気で、逆ざまぁが多いいので。慎ましく、生きて行こうと思います。 作者から(あれ、何でこうなった? )

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

処理中です...