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本編

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「ふふ、アンジェリカ緊張したのかい?震えてる」

私の手はかじかんだみたいに冷たくなってて、小さく震えてた。確かにアニエステ妃はおっかなかった。ザ悪女!って感じで。自由はきかなくてもこういう生理現象だけは表に出るのか。

「シアさんが側に居てくれたから大丈夫です」

「健気だね」

シアさんはすっと目を細めると私の顎を持ち上げた。

「本心から僕を選んで欲しいと思うよ」

「私はシアさんのものです」

私は笑いながら涙を溢してた。生理現象が今出来るささやかな抵抗とは……
そんな私をシアさんは意外にも優しく抱きしめた。

「ごめんねアンジェリカ、僕にはどうしても君が必要なんだ」

どうしてここまでして私を?体の自由はきかないし、分かんないことだらけでストレスMAX。あああ腹立つ!体よいい加減動け動けっ!

怒り爆発、キレ気味に念じたら願いが通じたのか、ふっと五感が蘇った。え?これって術解けたのかな?あ、本当に体自由になるみたいだ。

さて、シンキングタイム。
私はここでシアさんをぶん殴ることも出来る。だがしかし今は敵の内情を探る絶好のチャンス。ついでにやっとグレンの役に立てるかもしれない。少しは借金チャラに出来るかなあ?なんてチラッと思いつつ……

よし決めた!いけるとこまでやったろうじゃないの!さあ私は女優よ(かっ)!

「私にはシアさんだけです」

にっこりシアさんを見上げる。シアさんは本当に嬉しそうに笑った。よしよし気付かれてないようだ。グレンラブ♡で培った演技力も伊達じゃないな!さー頑張るぞー!









てっきり監禁部屋に戻されるかと思ったら、シアさんの私室の隣の部屋に連れて来られた。

「会いたいときいつでも会えるように……ここを好きに使って」

「嬉しいですシアさん……」

うっとりウルウル目まで潤ませちゃいます。似合わなくっても細かい演出は大事だからね!

「ふふ、そんな可愛い顔しないで。婚儀まで我慢できなくなってしまう」

やり過ぎましたすいません勘弁してください!……なんて勿論顔には出さない。だって今の私は女優!

「そんなシアさん……」

ポッと顔赤らめて俯いてみる。私確実に女子力上がってるよね、うん。

「本当に可愛いねアンジェ。今日はここで大人しくしてて。僕は色々と仕事が残ってるから……又顔を見に来るよ」

「分かりました、お待ちしてます」

我ながら完璧なカーテシーでお見送り。何か演技とはいえお淑やかなお嬢様になった気分。いや、元アンジェリカのこと考えたらそうあるべきなんだろうけど……私元々がさつで女子力ないしなぁ。
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