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本編

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「そうだ、あのゲームのこと。あれは何なの?」

「ああ、この間途中だったよね。あのゲームは桜木杏梨が作ったんだ」

ぽかーんとする私。だって意味わかんないし。

「この時間軸だと、アンジェリカの記憶を持った桜木杏梨が将来作るゲームだ。君の為に」

「え!?私の為!?」

「そう。この世界の知識が全くない君の為に、桜木杏梨が作ったんだよ。ここへ戻ったときに少しでも困らないようにと」

それっておかしくない?だって桜木杏梨の中に居た私と、元に戻った桜木杏梨が同時に存在するってことだよね?

「混乱させてごめんね。チキュウの概念で並行世界って知ってる?」

「SFめいてきたね。一応何となくは知ってるよ、今いるところとは別の現実世界ってやつだよね」

「うん、僕は桜木杏梨に頼まれて、並行世界の君に届けたんだ。出来る限り死の直前にある君にね」

あれ、あのゲーム勧めてくれた友達って誰だっけ……何でかな、顔も名前も思い出せないや。

「ふふ、その友達は僕だよ。僕が君に届けたんだ。でも君ってばコンプする前に辞めちゃうんだもん、女子力どこに忘れちゃったんだろね」

なんと……私の為のゲームだったなんて!興味ないとか途中で投げ出して桜木杏梨に申し訳ないじゃない!彼女の気持ちを知らずに踏みにじった罪悪感がひしひしと押し寄せてきた。

「アンジェリカはそのゲームに出てくるの?」

「出てこないよ。彼女は敢えてアンジェリカを出さなかった。その代わりアンジェリカを取り巻く人間模様をフィクション交えつつゲームにしたんだ」

「どうしてセレスちゃんが主人公なの?」

「セレスティーヌはアンジェリカの親友だった。きっと君の力にもなってくれるとわざわざ主人公にして目立たせたんだよ」

私気付いたら号泣してた。そんなに私の事を思って、この世界で困らないようにってゲームまで作って……アンジェリカとして沢山辛い思いしてたのに!

皆口をそろえて元アンジェリカを悪く言う。でも本当のあなたはこんなに思いやりがあって優しい女の子だったんだね。そう思ったらもう泣けて泣けて仕方なかった。
そしてさ、ここでやっと私神様に怒りが湧いてきちゃったよ。

「私が怒ったってなじったってあんたにとっては屁でもないんだろうけど……桜木杏梨がこれから絶対幸せになれるように見守ってて。じゃなきゃ私あんたを許さない」

「分かった、チキュウの神に良く言っておく」

「チキュウの神?神様っていっぱいいるの?」

「そうだよ。今回の試練は何にしようか相談したら、取り違えの話をチキュウの神から持ち掛けられたんだ。一番親和性の高い器ってことで桜木杏梨が選ばれたんだけど、26年しか保たなかったね」

ヤダもうなに神ってサイコパス?人間の物差しで計るのがそもそも間違いだけどさ、なんか胸糞悪い存在だわー!束にして燃やしてやりたい!

「ねえアンジェリカ、僕たちを燃やす前に聞きたいことはないの?」

「……そうだ!私の魔力検知能力!なんでないの?」

「え、要る?」

「欲しいよ!敵が近くにいても分かんないし」

「実はすごーく優秀な検知能力を持ってるんだ君は。でも性能が良過ぎて君ノイローゼになっちゃったから封じてるんだよ」

「ノイローゼになるほどの力ってなに!?検知するだけじゃないの?」

「君には魔力がノイズに聞こえるらしいんだ。四六時中魔力のノイズに苛まれて頭おかしくなっちゃうかもだけど……それでも欲しいの?」

騒音被害って深刻だよね。しかも四六時中!?

「……そういうのは要らないです」

神様笑顔でうんうん頷いてる。あんたの与える能力はホント極端なんだよなぁ……

「さて、今回はここまでかな。また会いに来るから聞きたいことでも相談でもまとめておいてね」

そこで神様ウィンクするとバチッと意識が途切れた。
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