乙女ゲーに転生!?ある日公爵令嬢になった私の物語

ゆーかり

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本編

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シアさんの顔は見れないけど気配が遠ざかっていく。完全に気配が消えた所で私グレンの胸をペシペシ叩いた。

「グレン痛いよ痣になっちゃう!」

グレンはっとして腕の力緩めた。

「悪い、加減忘れた……」

見かけによらずバカ力め。てか加減忘れる程余裕無かったってこと?まさか私の芝居に動揺して?え、やだちょっと可愛い。私笑いが込み上げてきちゃった。

「何がおかしいんだ……」

「いや~中々の名演技だったね、お互い!」

「演技?」

「王太子様を欺く為一肌脱いでくれたんでしょ?」

「いや、そんなつもりは1ミリもなかったけどな」

まて。全て本音で素だっていうの?ヤメテヤメテ!

「演技ってことにしておいて!」

「なんでだ?」

「いいから!私これから元アンジェリカみたいにグレン大好き!なスタンスでいくことにしたから、そこんとこよろしくね!」

「……王太子を欺く為か?」

私渋々頷く。

「今更なんで王太子が出てきたのか分かんないけど、私王太子妃なんて本気で御免だから」

「ふん、動機は気に入らねぇけど付き合ってやる」

ガンガン口悪くなってくなあ王子様よ。

「そもそもなんで二人で居たんだよ」

グレン超不機嫌だ。まぁ敵対視されてる王太子と一緒に居たんだもんね、そりゃ怒るよな……グレンに隠し事は後々めんどくさいから、出会いから今日までのこと全部話したんだ。

「王宮で出会ったのは本当に偶然か?」

「私はそう思ってる」

「……俺のところの侍女が一人死んだという話は聞いてる。だが詳細は不明だ」

「どんな人だったか覚えてる?」

「いや、全く……戻ったらカル辺りに聞いてみるか」

「全部王太子側の自作自演だった……なんてことはないか」

はははって笑うとグレンが無表情で私の顔をじっと見詰める。

「いや……可能性としてゼロではない。些細な綻びから陥れられる、なんてことはザラだ」

「うわー人間不信になりそうだわ……」

グレンはちょっと表情緩めると私の頭ワシワシ撫でまわした。髪グチャグチャなるやん!

「お前のことは極力守ってやる。だからあまり目の届かない所にはいくなよ」

「あ、ありがとう」

何だよちょっとかっこいいじゃん!私柄にもなくキュンとしちゃったよ!いやそれよりちょっと待ってよ、何で都合よくここにグレンが?

「何でグレンここに居るの?」

「……お前に分からない様に護衛をつけてたんだ」

「え!?全然気付かなかった!」

「優秀な精鋭だからな、簡単に気付かれる筈がない。王太子とお前が接触した時点で俺に報告が来た」

「それで駆けつけて来てくれたってこと?」

グレン不機嫌にブスっとしつつ頷いた。てかそんな秘かに護衛とかってさ、監視の意味もあるのかもだけど、結構本気で私の身を心配してくれてるのかな?実際こうやって駆けつけて来てくれてる訳だし。ああ、ほんとこの男って――

「損な男だよね、あんた」

「……どういう意味だ?」

「優しさが分かり難いんだよ」

グレン珍しく言葉に詰まってる。

「……俺は、優しくなんてない」

「私が優しいって思ったら、少なくとも私にとってグレンは優しいんだよ」

笑いながら見上げたら、グレン見たこともない位無防備な顔して茫然としてた。

「え?グレンどうしたの?」

顔覗き込んだらいきなり縋るように抱き付いてきた。な、なんだどうしたんだ?

「お前って何なんだろな」

「わ、私が何なの?」

「……お前の言葉はいつも直に俺の胸に届くんだ。不思議だな」

そうだったんだ、なんかそれってちょっと嬉しいかも。私ご褒美気分でグレンの柔らかい金髪ワシワシ撫でまわしてやる。あれ、意外にも嫌がらないな。

「いつもこうだと可愛いのにね」

「……俺のセリフだ。痛っ!」

「あ、ごめんねゴミついてた」

べって舌出したら頬っぺた摘まれた。

「いひゃい!なにふんの!」

「生意気なんだよバカアンリ」

「なんだとおおおおお!?」

辺りが薄暗くなる中、私達はバカな言い合いを延々と致したのでした……全く何やってんだよ……
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