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「愛してるアリーチェ。どうか俺を受け入れてくれ、お前の意思で」
「わたくしの、意思?」
「お前が嫌がることはしたくない。今すぐ抱きたくて堪らないが……お前が嫌なら我慢する」
戸惑い揺れる瞳を覗き込んで俺はアリーチェの意思を問う。吸い込まれそうなほど澄んだ瞳が俺を捉えた。
「ずっとご不興を買って仕置きをされているのだと思っておりました。公爵様、あれは愛故の行為だったのですか?」
「そうだアリーチェ。はじめは酷くしてしまったが……お前を仕置きのつもりで抱いたことなど、ただの一度もない」
アリーチェはここでふっと瞳を和らげた。
「だからなのですね。わたくしいけないことだと思いながら、とても気持ちがいいと感じてしまって……」
ああ、可愛すぎるアリーチェ……
「これからは我慢などせず、好きなだけ声を出して俺に気持ち良いと伝えて欲しい。お前が感じてくれるのは、俺も嬉しいんだ」
「公爵様……なんて勿体ないお言葉でしょう。ありがとうございます」
美しく微笑するアリーチェに夢中で口付けながら、俺はアリーチェの体を弄る。
「契約、してくれるか?」
潤んだ瞳の艶めかしさにゾクリとしながら、俺はアリーチェの頬を撫でる。
「ですが、わたくし今度はこちらでお世話になろうかと……」
「ダメだ!お前の主人は俺だろ!」
「え、今はもう……」
「主人の命令は絶対、だよな?」
アリーチェは俺の迫力に呑まれているようだ。当たり前だ、初めて愛した女を娼館になぞやってたまるか!
「アリーチェ、俺の妻として契約しろ!命令だ!」
アリーチェは目をパチパチと瞬かせると、戸惑いながら頷いた。俺の勝利だ!
俺はピンクで統一された卑猥なベッドにアリーチェを押し倒すと、心ゆくまでその肢体を貪った。抱けば抱くほど愛おしさが募る。ああ、愛しいアリーチェ、もう決して決して離さない──
どういう訳か解雇されたその日の内に、わたくしは公爵邸へ連れ戻されたのです。今度の契約は「妻」との事でしたが、わたくしにはその役割がよく分かりません。
ただ二つばかり分かったことがあります。少なくとも公爵様の目にわたくしは醜く映ってはいないということ、そして恐れ多くもわたくしなどを好いて下さっているということ。
その思いを聞いて公爵様に優しく「抱かれ」て、わたくしははじめて絶頂というものを味わいました。天国なのか地獄なのかも分からない程の快感に頭が真っ白になりました。
そして心が温かいもので満たされてゆくようです。その心のまま、わたくしは初めて自ら公爵様に触れました。恐る恐る広い背に腕を回すと公爵様は嬉しそうにわたくしを抱きしめて下さいました。とても幸せだと思いました。
「公爵様……」
「名を呼んでほしいアリーチェ。私の妻として」
「申し訳ございません、存じ上げません……」
公爵様はふっと微笑まれると、耳元で秘事のように囁かれました。その名を、わたくしは宝物のようにそっと胸に刻んだのでした。
「わたくしの、意思?」
「お前が嫌がることはしたくない。今すぐ抱きたくて堪らないが……お前が嫌なら我慢する」
戸惑い揺れる瞳を覗き込んで俺はアリーチェの意思を問う。吸い込まれそうなほど澄んだ瞳が俺を捉えた。
「ずっとご不興を買って仕置きをされているのだと思っておりました。公爵様、あれは愛故の行為だったのですか?」
「そうだアリーチェ。はじめは酷くしてしまったが……お前を仕置きのつもりで抱いたことなど、ただの一度もない」
アリーチェはここでふっと瞳を和らげた。
「だからなのですね。わたくしいけないことだと思いながら、とても気持ちがいいと感じてしまって……」
ああ、可愛すぎるアリーチェ……
「これからは我慢などせず、好きなだけ声を出して俺に気持ち良いと伝えて欲しい。お前が感じてくれるのは、俺も嬉しいんだ」
「公爵様……なんて勿体ないお言葉でしょう。ありがとうございます」
美しく微笑するアリーチェに夢中で口付けながら、俺はアリーチェの体を弄る。
「契約、してくれるか?」
潤んだ瞳の艶めかしさにゾクリとしながら、俺はアリーチェの頬を撫でる。
「ですが、わたくし今度はこちらでお世話になろうかと……」
「ダメだ!お前の主人は俺だろ!」
「え、今はもう……」
「主人の命令は絶対、だよな?」
アリーチェは俺の迫力に呑まれているようだ。当たり前だ、初めて愛した女を娼館になぞやってたまるか!
「アリーチェ、俺の妻として契約しろ!命令だ!」
アリーチェは目をパチパチと瞬かせると、戸惑いながら頷いた。俺の勝利だ!
俺はピンクで統一された卑猥なベッドにアリーチェを押し倒すと、心ゆくまでその肢体を貪った。抱けば抱くほど愛おしさが募る。ああ、愛しいアリーチェ、もう決して決して離さない──
どういう訳か解雇されたその日の内に、わたくしは公爵邸へ連れ戻されたのです。今度の契約は「妻」との事でしたが、わたくしにはその役割がよく分かりません。
ただ二つばかり分かったことがあります。少なくとも公爵様の目にわたくしは醜く映ってはいないということ、そして恐れ多くもわたくしなどを好いて下さっているということ。
その思いを聞いて公爵様に優しく「抱かれ」て、わたくしははじめて絶頂というものを味わいました。天国なのか地獄なのかも分からない程の快感に頭が真っ白になりました。
そして心が温かいもので満たされてゆくようです。その心のまま、わたくしは初めて自ら公爵様に触れました。恐る恐る広い背に腕を回すと公爵様は嬉しそうにわたくしを抱きしめて下さいました。とても幸せだと思いました。
「公爵様……」
「名を呼んでほしいアリーチェ。私の妻として」
「申し訳ございません、存じ上げません……」
公爵様はふっと微笑まれると、耳元で秘事のように囁かれました。その名を、わたくしは宝物のようにそっと胸に刻んだのでした。
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