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「公爵様がこのようなこと……どうか自分でやりますのでお止めくださいませ」

何を言っても公爵様は無言でわたくしの体を頭から爪先まで念入りに洗い清め、湯船に沈めました。

湯船に公爵様と向かい合う形となり、わたくしはさすがに困っておりました。公爵様は一体何をなさりたいのでしょう?

「髪も染めていたのか……何てことだ……」

公爵様は大変難しい顔をされております。

「お見苦しい姿を……申し訳ございません」

見るに耐えないわたくしの姿に、益々公爵様のご不興を買ってしまったのだ、とわたくしは理解しました。

もう本当にここには居られないかもしれませんね。けれど幸いにもわたくしはまだ若く、仕事を選ばなければどこででも暮らしてゆけます。
大丈夫、追い出されてもきっと何とかなります。前向きに考えれば気持ちも明るくなってきました。

「お前、処女じゃなかったな。誰かの情婦なのか?」

「わたくしのような者が情婦など……神父様はお仕置きをして下さっただけなのです。決して性の捌け口などではございません」

「は!?神父だと!?」

公爵様の目の色が変わりました。一体どうされたのでしょう?

「その仕置きとやらはいつからされていたんだ?」

「わたくしが15になった歳からです。お前は罪深い存在だから、と」

公爵様は忌々しげに舌打ちなさると、わたくしを抱きしめました。とても鍛えられているのでしょうか、公爵様の体は硬くてゴツゴツとしております。

「……お前名前は?」

「アリーチェと申します」

「姓はないのか?」

「わたくしは孤児ですから、ただのアリーチェです」

「歳はいくつだ?」

「今年18になりました」

公爵様はそこで深々と溜息をつかれると、わたくしの胸を揉みながら乳首をきゅっと摘みました。思わず漏れそうになる声をわたくしは必死で堪えます。

「アリーチェ、今日から夜は俺の部屋で寝ろ」

何と恐れ多い……けれど主人の命令は絶対なのです。わたくしは戸惑いながらも承諾するほかありませんでした。

「承知いたしました公爵様。お仕事は今まで通りさせて頂けますか?」

「働きたいのか?」

「はい、わたくしは仕事が好きですので」

「いいだろう。ただしこれまで通り髪は染め眼鏡も決して外すな」

「ありがとうございます公爵様」





その夜からわたくしは公爵様のお部屋で寝起きをすることとなりました。同じベッドなど恐れ多いとさすがに固辞したのですが、公爵様のご不興を買ってしまい大変厳しいお仕置きを頂いたのでした。主人の命令は絶対、わたくしは恐縮しつつも公爵様と同じベッドで寝ることになりました。
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