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わたくしは孤児院で育ちました。

皆の父とも呼ぶべき神父様はそれは礼儀作法に厳しく、わたくしたちは常に清廉にして品行方正であることを求められました。

普段厳しい神父様でしたが、わたくしは特別に目をかけて頂いていたように感じます。

物心ついた幼い頃、お前はあまりに醜いから、と大変に大きな伊達眼鏡を下さいました。
決して人前で外してはいけない。何度も何度も言い聞かされました。
それ故わたくしは顔が隠れるほどの大きな伊達眼鏡に、簾のような前髪がトレードマークとなりました。

ブロンドの髪も大変破廉恥である、と神父様に毎日染めるよう指導頂きました。選んで頂いたダークブラウンの髪も今ではわたくしのお気に入りとなっております。

お前は醜い上に罪深い存在なのだ、とおっしゃって神父様はわたくしに罰をお与えになりました。

毎晩のようにわたくしの部屋へ足を運び、ご自身の杭をわたくしに突き立てるのです。
痛みが徐々に快楽へ変わる様も罪深いのだ、と神父様は激しく詰りながらわたくしに杭を打ち付けました。何度も、何度も。

18歳になると孤児達は孤児院を巣立つ決まりとなっております。わたくしは幸運にも篤志家である公爵様のお屋敷へ、メイドとして雇って頂けることになりました。

旅立ちの日、神父様はお前の家はここだ、休みの度に戻るように、と繰り返しおっしゃって下さいました。
けれどわたくしは二度と戻るつもりはありません。わたくしのように醜く愚かで罪深い存在をここまで育てて下さった神父様。それだけでも恐れ多いことです。これ以上迷惑をかけたくはありません。いつかささやかでもご恩返しが出来れば、と願いつつわたくしは孤児院を後にしたのでした。







公爵様のお屋敷は見たこともないほどに立派で、洗練された使用人の方々、調度品の数々からもその御威光の程が窺い知れるのでした。

「お前がアリーチェ?ふふ、私の目に狂いはなさそうね。セイラ色々教えてあげて頂戴」

わたくしを選び雇い入れて下さった大奥様は貫禄十分、大変ふくよかな方でいらっしゃいます。わたくしを見るなり満足そうに頷くと、メイド長のセイラ様に福々しい顎で指図されました。

セイラ様に連れられてメイド控え室へ入った瞬間、わたくしは自分が選ばれた理由を知るのです。
皆わたくし同様不器量な女性ばかりだったからです。わたくしはこの醜さ故に選ばれたのでした。悲しむべきなのでしょうか?いいえ、わたくしは素直に喜ぶことにしたのです。

「アリーチェと申します。不慣れではございますが皆さまよろしくご指導のほどお願いいたします」

深々とお辞儀をすると、皆さま気のいい方ばかりのようでにこやかに迎え入れて下さいました。上手くやっていけそうだと、わたくしは期待に胸を膨らませたのでした。


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