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第五幕 やんちゃな子猫は空を舞う
御前沙汰 2
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一度口を開いて調子に乗ってきた鶴宗はいつも持ち歩いている朱漆の大扇の先を余三郎に向かって突きつけた。
「わしも今朝は町民共の間で出回っているかわら版を読んでみたのじゃが、この江戸城に達する大穴が掘られていて、もう少しで本丸に迫る所まで掘り進められていたとか。猫柳家という小さな旗本家を継いだ余三郎にそのような工費を捻出できるとは思わぬが、あるかわら版では余三郎が先頭に立ち、亀宗将軍の治世を快く思わぬ大名やら大商人やらが資金を都合しておるのだと吹聴しておった。ま、わしは信じておらぬがの? でもまぁ、火のない所に煙は立たずという諺もあるし、このような憶測が世間に蔓延るのも何かしらネタがあっての事じゃと思うが? そこのところどうなのじゃ余三郎」
「そ、そのようなことなぞ――」
突然思いもしなかった嫌疑までかけられて狼狽える余三郎。
身に覚えのない事なので反射的に反論しようとしたところ、余三郎に代わって側用人の平左が話に加わってきた。
「それは妙な話です。拙者は今朝江戸市中で撒かれていたかわら版を全て取り寄せて吟味致しましたがそのような話を書いたものは一つとしてありません。おそれながら鶴宗様、今そのかわら版をお持ちでしたら拙者にも拝見させてもらえぬでしょうか」
平左に突っ込まれて、鶴宗は「うぐっ!?」と喉を鳴らして息を詰まらせた。
「読んだかわら版は配下の者に渡してしもうた。読み終わったら紙屑屋に売ってもかまわぬと言っておるので、もう誰も持っておらぬと思うぞ」
朱漆の大扇を開いて頬に滲み始めた汗を乾かしていると、月宗の隣に片膝立ちで座っていた四男の栗宗が顔を半笑いにして野次を飛ばしてきた。
「へへぇ? 余三郎をなじった論拠にしたかわら版を持ってないって? 本当かよ鶴宗兄者。てゆーか、こういう場合ってぇのは犯人探しを始めた奴こそ真犯人ってゆーのがお約束なんだよなぁ。知ってるかい鶴宗兄者『すかしっ屁の法則』ってやつを。誰よりも先に騒ぎ出して大声で犯人捜しを始めた奴こそ実は屁をスカした真犯人だ。って法則なんだけどよぉ」
織田信長に心酔している栗宗が着崩した着物の内側でボリボリと胸を掻きながら無頼の徒のように体を揺らして下から睨み上げるように鶴宗を見ている。
鶴宗と栗宗の間に挟まれている月宗が居心地悪そうに顔をしかめて少しだけ後ろに下がった。
「し、知らぬ! わしはそのような下品なことなど知らぬ!」
「だいいち余三郎は『身の丈に合った生活が出来ればそれでいい』ってガキの頃から隠居ジジイみたいなことを言っていた奴だぞ? そんな余三郎が謀反とか有り得ねぇって」
「うぐぐぐ……」
「そうですな。法則はともかく、拙者も余三郎様が地下道の掘削に加担した可能性は限りなく低いと見ております。そもそも余三郎様は地下の奴隷たちを扇動して集団脱走を成させております。もしも余三郎様が黒幕なのであれば奴隷たちに脱走などさせず口封じで皆殺しにしているはず」
「ぐふぅ……」
「さらに申し上げれば、奴隷として使われていた者たちの半数は口入れ屋で騙された町人で、残りの半数は死刑を宣告されていた罪人。罪人どもには一つ共通点があり、全員が南町奉行所で捕らえられていた者どもです。となれば、南町が管轄している牢からまとまった数の死刑囚を外に連れ出せる権能を持つ者が地下道掘削計画に加担していることは明白。今後の調べでそれが誰であるのかを突き止めれば、あとは芋づる式に真犯人まで辿りつけましょう」
平左がそう言いきると、一時は回復していた鶴宗の顔色が再び青くなって、頬肉がまたブルブルと震え始めた。
「え、えぇ……何やら寒気がして堪らん。実はわしは朝から風邪気味でな、話の途中で申し訳ないがわしは中座させてもらうぞ」
俯いてそう言った鶴宗は、誰とも目を合わせずにそそくさと皆の前から姿を消した。
「……ふん、さっそく証拠隠滅に動いたか。きっと明日には南町奉行所の誰かが土座衛門になって堀川あたりに浮いていることだろうよ」
「栗宗、自分の兄をそのように疑うな。兄弟間の不和はそのまま天下の乱れの元ぞ」
小馬鹿にした口調で鶴宗を罵る栗宗を、隣の月宗が窘めた。
ともすれば腰抜けとも言われることのある穏健派の月宗の苦言に栗宗はつまらなそうに唇を尖らせる。
「俺たち兄弟の誰と仲が良くて誰と仲が悪くても関係ねぇよ。肝心なのは我らが亀宗兄者に忠誠を尽くしているかどうかだ。武門を継がずに出家した柿宗なら関係ない話かもしれねぇが――」
「いい加減に黙れ、栗宗」
この部屋に入ってくる前からずっとキレ気味の亀宗に注意された栗宗は即座に口を噤んで姿勢を正した。
亀宗はふぅ~と長い息を吐いて脇息にギシリと体を預けて余三郎の後頭部に目を戻す。
「のぅ、余三郎。おぬしに害意があって此度のことがあったとはわしも思っておらぬ。愛のわがままが過ぎたということも重々承知だ。だがな、人の世には『けじめ』というものが必要なのだ。おぬしが犯した罪の重さを思えば尚更にな……おまえが犯した罪とはどんな罪なのか自分でわかるか?」
「拙者が犯した罪……世間を騒がせた罪ですか、兄者」
「違う。愛の身を心配するあまり、この数日でわしの髪が一割ほど抜け落ちた」
左側に居並ぶ兄弟たちが一斉に自分の頭を押さえた。もちろん余三郎も。
誰だか分からないが主に左列の面々から「恐ろしい、なんという大罪じゃ」と余三郎を非難する声が上がり始めている。
「それを考えると、お前への罰は猫柳家の取り潰しのうえ、江戸十里四方払――」
「やり過ぎじゃ父上!」
何の前触れもなくスパーンと襖を鳴らして愛姫が入ってきた。
「め、愛……」
亀宗以外の全員が慌てて平伏した。
「余三郎叔父上は悪くない! 妾が無茶をして叔父上に迷惑をかけただけじゃ!」
「し、しかしなぁ愛よ……」
娘が顔を真っ赤にして怒っている姿に亀宗は激しく動揺した。
「罰を与えるなら望んで城を出た妾にすれば良いのに、叔父上を罰するなんて道理に合わぬ! これではただの弱い者いじめじゃ! 父上はいつからそのような卑怯者になったのじゃ!?」
「わ、わしが卑怯者……」
いくら天下を治める将軍であっても、亀宗個人は世にわんさかといる『娘大好きなバカ親』の一人でしかない。
その亀宗が思いもしなかった罵倒を喰らって、この世の絶望を全て集めたような顔になった。
「そんな卑怯者の父上なんて妾は嫌いじゃ! 大っ嫌いじゃ!」
困りきった亀宗が小刻みに震える顔を動かして最も信頼する家臣の平左へ助けを求める視線を送ると、馬鹿馬鹿しい家庭内騒動に巻き込まれたくない平左はあからさまに目を逸らした。
孤立無援となった亀宗はがっくりと項垂れて、これ以上娘に嫌われる事がないように全力で機嫌取りに走った。
「……わかった、今回の事は姫自信の罪であり、その親であるわしに責がある。よって今回の件について余三郎に対する罪は無いものとしよう。……それで良いな? 愛」
「不問だけでは足りぬのじゃ。妾を猫柳家に逗留させてくれた礼もしたいし、今度妾が遊びに行った時には茶くらい出してくれる家であって欲しいのじゃ!」
その言葉に亀宗は眉を寄せた。
「茶を出せる? 余三郎。おぬしはわしの愛に茶の一つも出さなんだのか? あ?」
「あ、いえ……一応細やかではありますが急須に茶葉は入れたので色のついた湯くらいにはなっていたかと……」
平伏したまま言い訳する余三郎。
「あんな物は白湯と同じじゃ。匂いも味もせなんだ!」
「ど、どうかご容赦を……」
あまりにも情けなく身を縮める余三郎の姿に、左右に居並ぶ幕閣たちの間からいくつも失笑が漏れた。
亀宗もまた「おぬし、それでもわしの弟か」と眉を寄せた。
「まったく情けない……姫の接待費用として猫柳家に捨て扶持で五石の追加じゃ。平左、事務方にそう伝えておけ」
亀宗の突然の差配だったが、切れ者平左は無言で一礼して手元の巻紙にさらりと覚書を走らせた。
「……は? ご加増……ですか?」
つい今しがたお家断絶されそうだった状況から一転してお扶持加増の沙汰を下されて余三郎は目を見開く。
「そうじゃ。余の弟なら姫に茶ぐらい出せ、情けのうて涙が出るわ。……これはおぬしへの褒美ではないからな。勘違いするなよ?」
「しょ、承知しておりますっ!」
問責されるために呼び出された余三郎へ罰とは真反対の褒美を賜ったことに驚いたのは本人だけではない。
どの家も財政が厳しい中でのこの加増は意外であり『なぜあいつが!』と反感が渦巻いた。
しかし――、
「うん? おぬしら不満そうだのう、さっき我が弟の余三郎が茶も出せぬほど困窮していることを鼻で嗤っていたくせに、たった五石一人扶持程度の捨扶持が与えられたことを不満に思うのか? あぁ?」
亀宗の凄みのある目で睨まれた家臣たちは、先ほど嫌味なほど余三郎を嗤った自らを恥じて余三郎の加増の沙汰を渋々黙認することにした。
「わしも今朝は町民共の間で出回っているかわら版を読んでみたのじゃが、この江戸城に達する大穴が掘られていて、もう少しで本丸に迫る所まで掘り進められていたとか。猫柳家という小さな旗本家を継いだ余三郎にそのような工費を捻出できるとは思わぬが、あるかわら版では余三郎が先頭に立ち、亀宗将軍の治世を快く思わぬ大名やら大商人やらが資金を都合しておるのだと吹聴しておった。ま、わしは信じておらぬがの? でもまぁ、火のない所に煙は立たずという諺もあるし、このような憶測が世間に蔓延るのも何かしらネタがあっての事じゃと思うが? そこのところどうなのじゃ余三郎」
「そ、そのようなことなぞ――」
突然思いもしなかった嫌疑までかけられて狼狽える余三郎。
身に覚えのない事なので反射的に反論しようとしたところ、余三郎に代わって側用人の平左が話に加わってきた。
「それは妙な話です。拙者は今朝江戸市中で撒かれていたかわら版を全て取り寄せて吟味致しましたがそのような話を書いたものは一つとしてありません。おそれながら鶴宗様、今そのかわら版をお持ちでしたら拙者にも拝見させてもらえぬでしょうか」
平左に突っ込まれて、鶴宗は「うぐっ!?」と喉を鳴らして息を詰まらせた。
「読んだかわら版は配下の者に渡してしもうた。読み終わったら紙屑屋に売ってもかまわぬと言っておるので、もう誰も持っておらぬと思うぞ」
朱漆の大扇を開いて頬に滲み始めた汗を乾かしていると、月宗の隣に片膝立ちで座っていた四男の栗宗が顔を半笑いにして野次を飛ばしてきた。
「へへぇ? 余三郎をなじった論拠にしたかわら版を持ってないって? 本当かよ鶴宗兄者。てゆーか、こういう場合ってぇのは犯人探しを始めた奴こそ真犯人ってゆーのがお約束なんだよなぁ。知ってるかい鶴宗兄者『すかしっ屁の法則』ってやつを。誰よりも先に騒ぎ出して大声で犯人捜しを始めた奴こそ実は屁をスカした真犯人だ。って法則なんだけどよぉ」
織田信長に心酔している栗宗が着崩した着物の内側でボリボリと胸を掻きながら無頼の徒のように体を揺らして下から睨み上げるように鶴宗を見ている。
鶴宗と栗宗の間に挟まれている月宗が居心地悪そうに顔をしかめて少しだけ後ろに下がった。
「し、知らぬ! わしはそのような下品なことなど知らぬ!」
「だいいち余三郎は『身の丈に合った生活が出来ればそれでいい』ってガキの頃から隠居ジジイみたいなことを言っていた奴だぞ? そんな余三郎が謀反とか有り得ねぇって」
「うぐぐぐ……」
「そうですな。法則はともかく、拙者も余三郎様が地下道の掘削に加担した可能性は限りなく低いと見ております。そもそも余三郎様は地下の奴隷たちを扇動して集団脱走を成させております。もしも余三郎様が黒幕なのであれば奴隷たちに脱走などさせず口封じで皆殺しにしているはず」
「ぐふぅ……」
「さらに申し上げれば、奴隷として使われていた者たちの半数は口入れ屋で騙された町人で、残りの半数は死刑を宣告されていた罪人。罪人どもには一つ共通点があり、全員が南町奉行所で捕らえられていた者どもです。となれば、南町が管轄している牢からまとまった数の死刑囚を外に連れ出せる権能を持つ者が地下道掘削計画に加担していることは明白。今後の調べでそれが誰であるのかを突き止めれば、あとは芋づる式に真犯人まで辿りつけましょう」
平左がそう言いきると、一時は回復していた鶴宗の顔色が再び青くなって、頬肉がまたブルブルと震え始めた。
「え、えぇ……何やら寒気がして堪らん。実はわしは朝から風邪気味でな、話の途中で申し訳ないがわしは中座させてもらうぞ」
俯いてそう言った鶴宗は、誰とも目を合わせずにそそくさと皆の前から姿を消した。
「……ふん、さっそく証拠隠滅に動いたか。きっと明日には南町奉行所の誰かが土座衛門になって堀川あたりに浮いていることだろうよ」
「栗宗、自分の兄をそのように疑うな。兄弟間の不和はそのまま天下の乱れの元ぞ」
小馬鹿にした口調で鶴宗を罵る栗宗を、隣の月宗が窘めた。
ともすれば腰抜けとも言われることのある穏健派の月宗の苦言に栗宗はつまらなそうに唇を尖らせる。
「俺たち兄弟の誰と仲が良くて誰と仲が悪くても関係ねぇよ。肝心なのは我らが亀宗兄者に忠誠を尽くしているかどうかだ。武門を継がずに出家した柿宗なら関係ない話かもしれねぇが――」
「いい加減に黙れ、栗宗」
この部屋に入ってくる前からずっとキレ気味の亀宗に注意された栗宗は即座に口を噤んで姿勢を正した。
亀宗はふぅ~と長い息を吐いて脇息にギシリと体を預けて余三郎の後頭部に目を戻す。
「のぅ、余三郎。おぬしに害意があって此度のことがあったとはわしも思っておらぬ。愛のわがままが過ぎたということも重々承知だ。だがな、人の世には『けじめ』というものが必要なのだ。おぬしが犯した罪の重さを思えば尚更にな……おまえが犯した罪とはどんな罪なのか自分でわかるか?」
「拙者が犯した罪……世間を騒がせた罪ですか、兄者」
「違う。愛の身を心配するあまり、この数日でわしの髪が一割ほど抜け落ちた」
左側に居並ぶ兄弟たちが一斉に自分の頭を押さえた。もちろん余三郎も。
誰だか分からないが主に左列の面々から「恐ろしい、なんという大罪じゃ」と余三郎を非難する声が上がり始めている。
「それを考えると、お前への罰は猫柳家の取り潰しのうえ、江戸十里四方払――」
「やり過ぎじゃ父上!」
何の前触れもなくスパーンと襖を鳴らして愛姫が入ってきた。
「め、愛……」
亀宗以外の全員が慌てて平伏した。
「余三郎叔父上は悪くない! 妾が無茶をして叔父上に迷惑をかけただけじゃ!」
「し、しかしなぁ愛よ……」
娘が顔を真っ赤にして怒っている姿に亀宗は激しく動揺した。
「罰を与えるなら望んで城を出た妾にすれば良いのに、叔父上を罰するなんて道理に合わぬ! これではただの弱い者いじめじゃ! 父上はいつからそのような卑怯者になったのじゃ!?」
「わ、わしが卑怯者……」
いくら天下を治める将軍であっても、亀宗個人は世にわんさかといる『娘大好きなバカ親』の一人でしかない。
その亀宗が思いもしなかった罵倒を喰らって、この世の絶望を全て集めたような顔になった。
「そんな卑怯者の父上なんて妾は嫌いじゃ! 大っ嫌いじゃ!」
困りきった亀宗が小刻みに震える顔を動かして最も信頼する家臣の平左へ助けを求める視線を送ると、馬鹿馬鹿しい家庭内騒動に巻き込まれたくない平左はあからさまに目を逸らした。
孤立無援となった亀宗はがっくりと項垂れて、これ以上娘に嫌われる事がないように全力で機嫌取りに走った。
「……わかった、今回の事は姫自信の罪であり、その親であるわしに責がある。よって今回の件について余三郎に対する罪は無いものとしよう。……それで良いな? 愛」
「不問だけでは足りぬのじゃ。妾を猫柳家に逗留させてくれた礼もしたいし、今度妾が遊びに行った時には茶くらい出してくれる家であって欲しいのじゃ!」
その言葉に亀宗は眉を寄せた。
「茶を出せる? 余三郎。おぬしはわしの愛に茶の一つも出さなんだのか? あ?」
「あ、いえ……一応細やかではありますが急須に茶葉は入れたので色のついた湯くらいにはなっていたかと……」
平伏したまま言い訳する余三郎。
「あんな物は白湯と同じじゃ。匂いも味もせなんだ!」
「ど、どうかご容赦を……」
あまりにも情けなく身を縮める余三郎の姿に、左右に居並ぶ幕閣たちの間からいくつも失笑が漏れた。
亀宗もまた「おぬし、それでもわしの弟か」と眉を寄せた。
「まったく情けない……姫の接待費用として猫柳家に捨て扶持で五石の追加じゃ。平左、事務方にそう伝えておけ」
亀宗の突然の差配だったが、切れ者平左は無言で一礼して手元の巻紙にさらりと覚書を走らせた。
「……は? ご加増……ですか?」
つい今しがたお家断絶されそうだった状況から一転してお扶持加増の沙汰を下されて余三郎は目を見開く。
「そうじゃ。余の弟なら姫に茶ぐらい出せ、情けのうて涙が出るわ。……これはおぬしへの褒美ではないからな。勘違いするなよ?」
「しょ、承知しておりますっ!」
問責されるために呼び出された余三郎へ罰とは真反対の褒美を賜ったことに驚いたのは本人だけではない。
どの家も財政が厳しい中でのこの加増は意外であり『なぜあいつが!』と反感が渦巻いた。
しかし――、
「うん? おぬしら不満そうだのう、さっき我が弟の余三郎が茶も出せぬほど困窮していることを鼻で嗤っていたくせに、たった五石一人扶持程度の捨扶持が与えられたことを不満に思うのか? あぁ?」
亀宗の凄みのある目で睨まれた家臣たちは、先ほど嫌味なほど余三郎を嗤った自らを恥じて余三郎の加増の沙汰を渋々黙認することにした。
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