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第四幕 みんなが子猫を探して上や下への大騒ぎ
子猫たちの大冒険
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霧は百合丸が寺から借りてきた縄梯子を使って地上に戻ったが、軽く体を動かしてどこにも怪我が無い事を確認するとすぐに井戸の底に戻った。今度は他の三人も一緒だ。
四人が井戸の底に降りたのには三つの理由がある。
一つは、せっかく見つけた一両(猫)が横穴の奥へと行ってしまったので再捕獲するため。
もう一つは、ここが余三郎の探していた『秘密の抜け路』かもしれないので、これを余三郎に報告する前に入り口付近だけでも探索しておこうという思惑があったため。
そして何よりも、この先に何があるのかを知りたい、冒険したい、という子供らしい好奇心が疼いたのだ。
四人は子供特有の身軽さでするすると井戸を降りた。けれど、いくら子供とはいえ全員が降りるとさすがに窮屈だった。
ぎゅうぎゅうに身を寄せながら寺から無断で借りてきた提灯に火を入れて横穴を調べてみる。
横穴はわりと大きくて茶室の躙り口《ぐち》ほどの間口があった。
大柄な大人が通るには少々キツいかもしれないけれど、子供しかいない愛姫一行は特に苦労することもなく通り過ぎることができた。
横穴は立って歩けるほどの高さはないので皆四つん這いになってノソノソと進む。百合丸が先頭になって提灯を持ち、続いて愛姫、霧、最後尾に青太郎という順だ。
緩やかに下るその通路は先に進むほど広く、高くなって、しばらくすると普通に立って歩けるくらいになった。
「けっこうな距離を歩いている気がするけど、これ、誰が作ったんだろうねぇ。城の石垣みたいに道が舗装されているから自然に出来たものじゃないってのだけは確かだけど」
まさかこの通路が自分の先祖である東照権現(家康)様の密命で作られた城外脱出用の通路だとは言えないので愛姫は「さぁ、誰じゃろうのぅ」ととぼけてみせた。
段々と下りの角度がきつくなってきたところで厳めしい扉が四人の足を止めさせた。城の門扉のような観音開きの扉で、縁が鍛鉄で補強されているそれは掌ほどの隙間が開いた状態でギシリと固まっている。
「あ、毛がある、なの」
霧が指摘したとおり扉の縁の金具に白い毛が数本挟まっていた。
「きっと一両がここを通る時に挟まったでござるな」
「では、あの猫はこの先に行ってもうたのか」
扉の蝶番が赤く錆びていたけれど、百合丸が力を込めて押すと、ギ、ギギギ……と肌が粟立つ音を立てて、なんとか人が通れるくらいにまで開くことが出来た。
「なんだ……ここは?」
扉を抜けた百合丸は急に変化した周囲の様子に驚いた。
扉の先にはとてつもなく広い空間があった。
強い潮の香りを含んだ風がさらりと髪を揺らし、棚田のように積み重なった石灰華壇(リムストーン・プール)からは音もなく水が流れ落ちている。
「ほぉ、ここは鍾乳洞か。話で聞いたことはあるが実際に見るのは初めてじゃ。まさかお江戸の地下にこのような場所があるとはのぅ」
愛姫は感嘆の声を上げ、霧と青太郎は初めて見る神秘的な光景に驚いて言葉もなく、二人揃って口を△の形に開いて呆然としている。
「むぅ……。これなら松明を持ってくるべきでござったな。この広さの中で提灯の明かりだけではなんとも心もとない」
確かに提灯の中にある一本の蝋燭だけが光源では近くにいる四人の姿がぼんやりと分かる程度でしかなく、鍾乳洞の全容を見渡すのは無理だった。
「この広い空間で手元しか見えないのは些か不安でござるな……」
提灯の明かりで地面を照らしながら進むと岩肌だった地面が一部砂地になっていた。そこにくっきりと猫の足跡がついている。
「これだけはっきりした足跡は疑いようもなく最近のモノでござるな。一両はこの先にいるでござる」
完全に『一両』という名が定着した白猫。だが、その姿はまだ見えない。
「しかし、随分と先に行ったものじゃな。それほど妾たちから逃げたいのかのぅ」
すでに井戸のあった地点から一町ほども歩いているのに、猫との距離が縮まっている実感がまるでなかった。
四人が井戸の底に降りたのには三つの理由がある。
一つは、せっかく見つけた一両(猫)が横穴の奥へと行ってしまったので再捕獲するため。
もう一つは、ここが余三郎の探していた『秘密の抜け路』かもしれないので、これを余三郎に報告する前に入り口付近だけでも探索しておこうという思惑があったため。
そして何よりも、この先に何があるのかを知りたい、冒険したい、という子供らしい好奇心が疼いたのだ。
四人は子供特有の身軽さでするすると井戸を降りた。けれど、いくら子供とはいえ全員が降りるとさすがに窮屈だった。
ぎゅうぎゅうに身を寄せながら寺から無断で借りてきた提灯に火を入れて横穴を調べてみる。
横穴はわりと大きくて茶室の躙り口《ぐち》ほどの間口があった。
大柄な大人が通るには少々キツいかもしれないけれど、子供しかいない愛姫一行は特に苦労することもなく通り過ぎることができた。
横穴は立って歩けるほどの高さはないので皆四つん這いになってノソノソと進む。百合丸が先頭になって提灯を持ち、続いて愛姫、霧、最後尾に青太郎という順だ。
緩やかに下るその通路は先に進むほど広く、高くなって、しばらくすると普通に立って歩けるくらいになった。
「けっこうな距離を歩いている気がするけど、これ、誰が作ったんだろうねぇ。城の石垣みたいに道が舗装されているから自然に出来たものじゃないってのだけは確かだけど」
まさかこの通路が自分の先祖である東照権現(家康)様の密命で作られた城外脱出用の通路だとは言えないので愛姫は「さぁ、誰じゃろうのぅ」ととぼけてみせた。
段々と下りの角度がきつくなってきたところで厳めしい扉が四人の足を止めさせた。城の門扉のような観音開きの扉で、縁が鍛鉄で補強されているそれは掌ほどの隙間が開いた状態でギシリと固まっている。
「あ、毛がある、なの」
霧が指摘したとおり扉の縁の金具に白い毛が数本挟まっていた。
「きっと一両がここを通る時に挟まったでござるな」
「では、あの猫はこの先に行ってもうたのか」
扉の蝶番が赤く錆びていたけれど、百合丸が力を込めて押すと、ギ、ギギギ……と肌が粟立つ音を立てて、なんとか人が通れるくらいにまで開くことが出来た。
「なんだ……ここは?」
扉を抜けた百合丸は急に変化した周囲の様子に驚いた。
扉の先にはとてつもなく広い空間があった。
強い潮の香りを含んだ風がさらりと髪を揺らし、棚田のように積み重なった石灰華壇(リムストーン・プール)からは音もなく水が流れ落ちている。
「ほぉ、ここは鍾乳洞か。話で聞いたことはあるが実際に見るのは初めてじゃ。まさかお江戸の地下にこのような場所があるとはのぅ」
愛姫は感嘆の声を上げ、霧と青太郎は初めて見る神秘的な光景に驚いて言葉もなく、二人揃って口を△の形に開いて呆然としている。
「むぅ……。これなら松明を持ってくるべきでござったな。この広さの中で提灯の明かりだけではなんとも心もとない」
確かに提灯の中にある一本の蝋燭だけが光源では近くにいる四人の姿がぼんやりと分かる程度でしかなく、鍾乳洞の全容を見渡すのは無理だった。
「この広い空間で手元しか見えないのは些か不安でござるな……」
提灯の明かりで地面を照らしながら進むと岩肌だった地面が一部砂地になっていた。そこにくっきりと猫の足跡がついている。
「これだけはっきりした足跡は疑いようもなく最近のモノでござるな。一両はこの先にいるでござる」
完全に『一両』という名が定着した白猫。だが、その姿はまだ見えない。
「しかし、随分と先に行ったものじゃな。それほど妾たちから逃げたいのかのぅ」
すでに井戸のあった地点から一町ほども歩いているのに、猫との距離が縮まっている実感がまるでなかった。
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