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Police! Police!(警備兵さん、こっちです!) 3
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市場からかなりの距離を走ってきたので、ラチアとラヴィ、そしてパイラを加えた一行は市場の入口へ向かっていた。
ラチアたちは横に並んで歩いていて、ラヴィは常にラチアを盾にする位置取りでパイラから隠れるようにしている。
さっきのことが相当怖かったらしい。
「あらら、もしかして怖がらせちゃった? ごめんねー。あたしはパイラ。パイラ・ロードグレイ。先輩より五つ年下の十九歳だよ、よろしくね。おチビちゃんのお名前は?」
「ボ、ボク……ラヴィ」
ラヴィはラチアの後ろに隠れながら顔を半分だけ覗かせてビクビクと怯えながら挨拶をした。
「ラヴィ? 覚えやすいね! 音の感じもキュートでラブリーだよ。で、歳はいくつ?」
「四歳……か、五歳。よく知らないけど、多分」
「おっとっと、そうだった。アニオンって実年齢より早く育つんだったね。人間で言うところの八歳か十歳ってとこかぁ。あと五年くらいであたしと同じ年になるんだね!」
『その間に自分も歳をとるって計算が抜けてるだろ……』
ラチアは心の中でそう突っ込んだが、あえて口にしなかった。
彼女は怯えているラヴィの手を強引に掴んで、陽気に「握手、握手ぅー!」と手を振りながら笑っている。
ラヴィがどんなに警戒していても彼女はそんなことなんてちっとも気にせずに、あくまでもマイペースだ。
「先輩。この子首輪をしていないってことは、まだ未登記ですよね? 野良だったんですか?」
「ああ、怪我の治療をしてやったら妙に懐かれてしまってな。たまに寝惚けて俺のベッドの中に潜り込んでくるほどだ」
「先輩のベッドに……」
「……なんだ、その邪推してそうな視線は」
「先輩、この子ってオス? メス? 子供すぎてわかんないんですけど」
「メスだって言ったら?」
「幼女趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「オスだって言ったら?」
「ショタ趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「俺はどう答えればいいんだ?」
どっちで答えても変態扱いだ。正解が見あたらない。
「『パイラ、愛してるのはキミだけだよ』って、甘い声で囁いてくれるのが正解です」
「…………(フッ)」
「え? なんで黙っちゃうんですか!? てか、今鼻で笑いませんでした!?」
ラヴィは二人の会話を聞きながら『靴を仕入れてくれたおじさんとは別のパターンだけれど、パイラって人もこれはこれでラチアと仲が良いんだろうな』と思った。
「そんなことより仕事のほうはいいのか? そろそろ隊に戻らないと隊長に怒られるだろう」
「泥棒を逮捕しに行ってくるって出てきましたから平気です」
「おい、俺はいつから泥棒になったんだ?」
「あたしと初めて会った時ですね。先輩はあたしの心を瞬時に盗んじゃったんです」
うふふふ。と、身体をくねらせているパイラを見てラチアは半ば以上本気でイラッとした。
「そんな怪しげなモノなんか盗んだ覚えはない」
「それに今ではあたしが隊長なんですよ。あたしを怒ることができるのは連隊長だけです。あたし出世街道まっしぐらなんです!」
「都合の悪いことは聞こえない耳なのも、相変わらずだな」
パイラが今日はずっと自分たちについてくるつもりなのだと分かったラチアは、げんなりと肩を落としてもう一度溜息を吐いた。
この街に入ったばかりの時でさえ人の多さに感動していたラヴィだけれど、市場の中の人混みには「ひわあぁぁ……」と、改めて感嘆の声を漏らした。
二十メルク以上も幅のある道の両側に、商人たちが露店を開いて雑多な商品を売っている。
通り過ぎる買い物客を呼び込もうと大声を張り上げている売り子の声や、値切り合戦でヒートアップした客と店主の怒鳴りあい。
市場の途中途中に設けらている広場では必ず何組かの大道芸人たちがいて、口から火を噴いたり、十本ものナイフでジャグリングをしたりと、買い物客の目を愉しませてくれている。
多くの買い物客で賑わっている市場はお祭りのように活気づいていて、耳のいいラヴィには痛いほどだ。
多種多様なお店がある市場で最もラヴィの興味を惹いたのは、砂糖を練り込んだ小麦粉を油で揚げた油菓子の匂いだった。
鼻をひくひくさせて、口元から、たり……と涎を垂らしていると、
「おチビちゃん、あれが食べたいの? おっし、お近づきのしるしにお姉さんが奢っちゃうよ!」
パイラが気前よく買ってくれた。
ついさっきまでパイラを怖がっていたのに「はい、どーぞ」と熱々の油菓子を渡されたラヴィは、持たされた油菓子とパイラを交互に見て「パイラはいい人だね!」と目を輝かせた。
「もぉもぉ何よ『いい人』だなんて、恥ずかしいわねぇ。もう一回言ってくれる? 先輩の心にも届くくらいに大きな声で」
油菓子一つで簡単にパイラに懐いたラヴィを見て、ラチアはなんだか複雑な気持ちになった。
『くそっ、俺と喋るようになるまで二日かかったくせに……』
市場の熱気と喧噪を楽しみながら(若干一名凹み気味)奥へ奥へと進んでゆくと、やがて他の場所とは明らかに雰囲気の違う広場に出た。
「なに……ここ……?」
ラヴィは一度どこかで感じたことのある黒い意思の流れを感じて体中の毛が逆立った。
その広場に集まった人間たちは、目をギラつかせて広場の奥にある半円状のステージを凝視している。
そこは楽しげな声など無く「五千二百F!」「五千三百F!」と競り値を重ねていく陰々とした雰囲気が凝り固まっていた。
「奴隷市場だよ」
「奴隷市場?」
「市民にとって奴隷は労働力であり財産。富がある人間は多くの奴隷を買って農場での労働力にしたり、私兵として抱えたりしてるの。ここはそんな奴隷を売買するところ」
ラヴィは目の前の光景に息を呑んだ。
競りに集まった人々の肩ほどの高さにあるステージの上には、手錠をかけられた狼タイプのアニオンが引き出されていて、周囲の人間たちが欲に汚れた目で値踏みをしながら買い取りの値段を大声で伝えている。
「六千F以上はいませんかぁー? 狼タイプ六歳のオス。労働力としても、兵士としても使える使い勝手のいいアニオンですよぉ!」
ステージの横で進行役を勤めている人間が商品となっている奴隷の説明を繰り返して買い手たちの様子を見いる。
暫くの間を置いても新しい声が上がらなかったので、トンと木槌を鳴らして落札を宣言した。
「では六千Fで落札。出品番号四十二はアルバンド商会さんに」
会場からパラパラとまばらな拍手が起きて、ステージにいた狼は虎タイプの屈強そうなアニオンに手錠を引かれてステージを降ろされた。
ステージを下ろされた狼の顔にはほとんど感情がなく、目は死んだ魚ように光を失っていた。
「すごく……悲しそう……」
見たままの感想を口にすると横にいたラチアが吐き捨てるように言った。
「当然だ。奴隷は自由を奪われて、命尽きるまで主人のために働かなければならない。そこに生き甲斐を見つけられる奴なんているはずがない」
「ラチア……もしかして、ボクも?」
自分もこれからそうしなきゃいけないのかと考えたラヴィは急に怖くなってきた。
奴隷市場の剣呑な空気も怖かったけれど、そこで値踏みをしている人間たちの目が、自分をこっぴどく殴りつけて追いかけ回してきた村人たちの雰囲気と似ているのが怖かった。
「違う、俺がオマエを売ったりするものか。昨日言っただろ? アニオンが人間の中で暮らすには主人を持たなければならない決まりになっているって」
「……えっと?」
覚えてなかった。可愛く首をかしげるラヴィにラチアがため息をつく。
「ったく……。昨日だけじゃなく、オマエが山を下りてくるたびにいつも言っていただろう。アニオンは奴隷。奴隷は商品。それが人間社会の共通の価値観だと。人里へ下りてくるなと言っていたのはこういう事情があったからだ」
ラヴィは目の前で行われている奴隷売買の光景を見て初めて、奴隷になるということがどういうことかをようやく実感した。
「ボク、あの時捕まってたら、あんなふうに売られてたんだ……」
ラヴィの顔から血の気が失せて真っ青になった。
不安そうに怯えているラヴィを見てラチアはポンとラヴィの頭に手を置く。
「そういうことだ。だが、心配するな。俺はオマエを奴隷扱いなんてしないし、他の誰かの奴隷にするつもりもない。だから今日、オマエの奴隷登記をするんだ」
「ふへ?……どいういこと?」
話の前後が微妙に繋がっていない気がして、ラヴィはもう一度不思議そう首をかしげた。
「えっとねぇ、わかりやすく言うなら、奴隷登記されていないアニオンって、川の中を泳いでいるお魚みたいなものなの。川の中のお魚は誰のモノでもなくって、それを釣り上げた人のモノ。で、おチビちゃんは釣り人がたくさんいる場所でふらふら泳いでいたお魚」
「ボク、お魚じゃないよ?」
「例え話だよ。そう考えるとわかりやすいでしょ?」
「う、うん……」
「先輩はそんなおチビちゃんが危なっかしくって見ていられなくなった。んで、先輩は考えた。『だったら、他の釣り人に釣られる前に自分で釣り上げよう。自分の魚籠に入れておけば、もう他の奴に釣られる心配はない』ってね。でしょ? 先輩」
「まるで今までの俺たちを見ていたかのような口ぶりだな」
「先輩の性格を知っていて、これまでの会話を聞いていたら簡単に想像できましたよ、先輩ってけっこう単純ですからねぇ。うふふふ」
全く悪気のない笑顔で『単純』と言い切るパイラにラチアは顔をしかめたが、自分でもそれが否定できない性格だと分かっているので何も言い返さなかった。
「……ふん、登記申請してくる。それまでラヴィを頼めるか?」
「もちろん。いってらっしゃーい!」
ラチアはラヴィたちをその場に残して、ステージの横にある大きな建物の中に入っていった。
ラチアたちは横に並んで歩いていて、ラヴィは常にラチアを盾にする位置取りでパイラから隠れるようにしている。
さっきのことが相当怖かったらしい。
「あらら、もしかして怖がらせちゃった? ごめんねー。あたしはパイラ。パイラ・ロードグレイ。先輩より五つ年下の十九歳だよ、よろしくね。おチビちゃんのお名前は?」
「ボ、ボク……ラヴィ」
ラヴィはラチアの後ろに隠れながら顔を半分だけ覗かせてビクビクと怯えながら挨拶をした。
「ラヴィ? 覚えやすいね! 音の感じもキュートでラブリーだよ。で、歳はいくつ?」
「四歳……か、五歳。よく知らないけど、多分」
「おっとっと、そうだった。アニオンって実年齢より早く育つんだったね。人間で言うところの八歳か十歳ってとこかぁ。あと五年くらいであたしと同じ年になるんだね!」
『その間に自分も歳をとるって計算が抜けてるだろ……』
ラチアは心の中でそう突っ込んだが、あえて口にしなかった。
彼女は怯えているラヴィの手を強引に掴んで、陽気に「握手、握手ぅー!」と手を振りながら笑っている。
ラヴィがどんなに警戒していても彼女はそんなことなんてちっとも気にせずに、あくまでもマイペースだ。
「先輩。この子首輪をしていないってことは、まだ未登記ですよね? 野良だったんですか?」
「ああ、怪我の治療をしてやったら妙に懐かれてしまってな。たまに寝惚けて俺のベッドの中に潜り込んでくるほどだ」
「先輩のベッドに……」
「……なんだ、その邪推してそうな視線は」
「先輩、この子ってオス? メス? 子供すぎてわかんないんですけど」
「メスだって言ったら?」
「幼女趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「オスだって言ったら?」
「ショタ趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「俺はどう答えればいいんだ?」
どっちで答えても変態扱いだ。正解が見あたらない。
「『パイラ、愛してるのはキミだけだよ』って、甘い声で囁いてくれるのが正解です」
「…………(フッ)」
「え? なんで黙っちゃうんですか!? てか、今鼻で笑いませんでした!?」
ラヴィは二人の会話を聞きながら『靴を仕入れてくれたおじさんとは別のパターンだけれど、パイラって人もこれはこれでラチアと仲が良いんだろうな』と思った。
「そんなことより仕事のほうはいいのか? そろそろ隊に戻らないと隊長に怒られるだろう」
「泥棒を逮捕しに行ってくるって出てきましたから平気です」
「おい、俺はいつから泥棒になったんだ?」
「あたしと初めて会った時ですね。先輩はあたしの心を瞬時に盗んじゃったんです」
うふふふ。と、身体をくねらせているパイラを見てラチアは半ば以上本気でイラッとした。
「そんな怪しげなモノなんか盗んだ覚えはない」
「それに今ではあたしが隊長なんですよ。あたしを怒ることができるのは連隊長だけです。あたし出世街道まっしぐらなんです!」
「都合の悪いことは聞こえない耳なのも、相変わらずだな」
パイラが今日はずっと自分たちについてくるつもりなのだと分かったラチアは、げんなりと肩を落としてもう一度溜息を吐いた。
この街に入ったばかりの時でさえ人の多さに感動していたラヴィだけれど、市場の中の人混みには「ひわあぁぁ……」と、改めて感嘆の声を漏らした。
二十メルク以上も幅のある道の両側に、商人たちが露店を開いて雑多な商品を売っている。
通り過ぎる買い物客を呼び込もうと大声を張り上げている売り子の声や、値切り合戦でヒートアップした客と店主の怒鳴りあい。
市場の途中途中に設けらている広場では必ず何組かの大道芸人たちがいて、口から火を噴いたり、十本ものナイフでジャグリングをしたりと、買い物客の目を愉しませてくれている。
多くの買い物客で賑わっている市場はお祭りのように活気づいていて、耳のいいラヴィには痛いほどだ。
多種多様なお店がある市場で最もラヴィの興味を惹いたのは、砂糖を練り込んだ小麦粉を油で揚げた油菓子の匂いだった。
鼻をひくひくさせて、口元から、たり……と涎を垂らしていると、
「おチビちゃん、あれが食べたいの? おっし、お近づきのしるしにお姉さんが奢っちゃうよ!」
パイラが気前よく買ってくれた。
ついさっきまでパイラを怖がっていたのに「はい、どーぞ」と熱々の油菓子を渡されたラヴィは、持たされた油菓子とパイラを交互に見て「パイラはいい人だね!」と目を輝かせた。
「もぉもぉ何よ『いい人』だなんて、恥ずかしいわねぇ。もう一回言ってくれる? 先輩の心にも届くくらいに大きな声で」
油菓子一つで簡単にパイラに懐いたラヴィを見て、ラチアはなんだか複雑な気持ちになった。
『くそっ、俺と喋るようになるまで二日かかったくせに……』
市場の熱気と喧噪を楽しみながら(若干一名凹み気味)奥へ奥へと進んでゆくと、やがて他の場所とは明らかに雰囲気の違う広場に出た。
「なに……ここ……?」
ラヴィは一度どこかで感じたことのある黒い意思の流れを感じて体中の毛が逆立った。
その広場に集まった人間たちは、目をギラつかせて広場の奥にある半円状のステージを凝視している。
そこは楽しげな声など無く「五千二百F!」「五千三百F!」と競り値を重ねていく陰々とした雰囲気が凝り固まっていた。
「奴隷市場だよ」
「奴隷市場?」
「市民にとって奴隷は労働力であり財産。富がある人間は多くの奴隷を買って農場での労働力にしたり、私兵として抱えたりしてるの。ここはそんな奴隷を売買するところ」
ラヴィは目の前の光景に息を呑んだ。
競りに集まった人々の肩ほどの高さにあるステージの上には、手錠をかけられた狼タイプのアニオンが引き出されていて、周囲の人間たちが欲に汚れた目で値踏みをしながら買い取りの値段を大声で伝えている。
「六千F以上はいませんかぁー? 狼タイプ六歳のオス。労働力としても、兵士としても使える使い勝手のいいアニオンですよぉ!」
ステージの横で進行役を勤めている人間が商品となっている奴隷の説明を繰り返して買い手たちの様子を見いる。
暫くの間を置いても新しい声が上がらなかったので、トンと木槌を鳴らして落札を宣言した。
「では六千Fで落札。出品番号四十二はアルバンド商会さんに」
会場からパラパラとまばらな拍手が起きて、ステージにいた狼は虎タイプの屈強そうなアニオンに手錠を引かれてステージを降ろされた。
ステージを下ろされた狼の顔にはほとんど感情がなく、目は死んだ魚ように光を失っていた。
「すごく……悲しそう……」
見たままの感想を口にすると横にいたラチアが吐き捨てるように言った。
「当然だ。奴隷は自由を奪われて、命尽きるまで主人のために働かなければならない。そこに生き甲斐を見つけられる奴なんているはずがない」
「ラチア……もしかして、ボクも?」
自分もこれからそうしなきゃいけないのかと考えたラヴィは急に怖くなってきた。
奴隷市場の剣呑な空気も怖かったけれど、そこで値踏みをしている人間たちの目が、自分をこっぴどく殴りつけて追いかけ回してきた村人たちの雰囲気と似ているのが怖かった。
「違う、俺がオマエを売ったりするものか。昨日言っただろ? アニオンが人間の中で暮らすには主人を持たなければならない決まりになっているって」
「……えっと?」
覚えてなかった。可愛く首をかしげるラヴィにラチアがため息をつく。
「ったく……。昨日だけじゃなく、オマエが山を下りてくるたびにいつも言っていただろう。アニオンは奴隷。奴隷は商品。それが人間社会の共通の価値観だと。人里へ下りてくるなと言っていたのはこういう事情があったからだ」
ラヴィは目の前で行われている奴隷売買の光景を見て初めて、奴隷になるということがどういうことかをようやく実感した。
「ボク、あの時捕まってたら、あんなふうに売られてたんだ……」
ラヴィの顔から血の気が失せて真っ青になった。
不安そうに怯えているラヴィを見てラチアはポンとラヴィの頭に手を置く。
「そういうことだ。だが、心配するな。俺はオマエを奴隷扱いなんてしないし、他の誰かの奴隷にするつもりもない。だから今日、オマエの奴隷登記をするんだ」
「ふへ?……どいういこと?」
話の前後が微妙に繋がっていない気がして、ラヴィはもう一度不思議そう首をかしげた。
「えっとねぇ、わかりやすく言うなら、奴隷登記されていないアニオンって、川の中を泳いでいるお魚みたいなものなの。川の中のお魚は誰のモノでもなくって、それを釣り上げた人のモノ。で、おチビちゃんは釣り人がたくさんいる場所でふらふら泳いでいたお魚」
「ボク、お魚じゃないよ?」
「例え話だよ。そう考えるとわかりやすいでしょ?」
「う、うん……」
「先輩はそんなおチビちゃんが危なっかしくって見ていられなくなった。んで、先輩は考えた。『だったら、他の釣り人に釣られる前に自分で釣り上げよう。自分の魚籠に入れておけば、もう他の奴に釣られる心配はない』ってね。でしょ? 先輩」
「まるで今までの俺たちを見ていたかのような口ぶりだな」
「先輩の性格を知っていて、これまでの会話を聞いていたら簡単に想像できましたよ、先輩ってけっこう単純ですからねぇ。うふふふ」
全く悪気のない笑顔で『単純』と言い切るパイラにラチアは顔をしかめたが、自分でもそれが否定できない性格だと分かっているので何も言い返さなかった。
「……ふん、登記申請してくる。それまでラヴィを頼めるか?」
「もちろん。いってらっしゃーい!」
ラチアはラヴィたちをその場に残して、ステージの横にある大きな建物の中に入っていった。
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