落人物語

信濃

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武田家との出会い

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少し、昔のことを思い出してみようと思う。
私と三右衛門は元々、農民であった、
お互い、貧しくはないが豊かでもない生活を送っていた、
その頃の武田家は私たちにとっては雲の上の「領主」であった
だが、ある出来事がきっかけで「主家」となったのだ。

ある日、年貢を納めに行くと代官が変わっていた、
なんでも、前の代官が隠居したので
新しい代官が派遣されたらしい。
いつもと変わらない厳しい年貢を納め
帰ろうとすると、呼び止められた

「おい、私へ何か貢物はないのか?」と代官に言われたのだ

お互い訳がわからず困った顔をしていると

すると代官が、「これからは別に私に対しても貢物を納めよ」、とにやけながら言った、

とんでもない奴が来たなとお互い話しながら帰ったのだが、それ以降代官の横暴は
酷くなる一方であった

年貢を納めらていても、代官に貢物を渡せないと、代官所の奥に連れて行かれて、
棒で叩かれたりした、

さらに、年貢すらも納められなかった場合は、軽くて投獄、重いと処刑まであったのだ

この横暴に対して、村で会合をした結果
有志を募り、武田家の本拠である
「躑躅ヶ崎館」への直訴をすることになったのだ、

それに志願したのが私と三右衛門であった

直訴の日、村の皆に別れを告げて出立した

直訴は、死罪が妥当だからである

覚悟を決め館の門付近で待っていると、
武者行列がこちらに向かってきた、
覚悟を決め馬上にいる武士に直訴状を渡したところ、付近にいた近臣であろう者らに捕らえられ、館の中へ連れて行かれた

これで終わりだ、と思った矢先に館の庭先に案内をされ、庭の土の上に座ると

先程、馬上にいた武士がこちらを向いて座っていた、

「こちらの侍様のお名前は?」と近くにいた武士に問いかけると

「先程、貴様らが直訴した方だが、こちらのお方は、武田家当主、武田晴信様だ」と
告げられた

私たちは直訴する相手を間違えたと、死を覚悟して頭を下げた

だが、次に言われたのは「面をあげよ」との一言であった

晴信様がそう申されたのだ

困った顔をしていると、次にこう告げられた

「農民が2人でここまで直訴にくるということは、よほど困っているのであろう
申してみよ」と言ってくださったのだ

私たち2人は、あったことをそのまま伝えた、

晴信様はしばらく考えたのち、「追って沙汰する、それまで近くの寺に泊まれ」と仰ったのだ、

2人で驚いた顔をしていると、近くにいた
武士が、「案内をする、ついて参れ」と言って寺に案内をした 

そこから数日は生きた心地がしなかった、
そもそも直訴は死罪な上に、代官の横暴に対する証拠がなかったらただの無駄死にである、

そしてある日、館に2人で呼ばれたのである

第一声に晴信様は
「でかしたぞ、2人」と言ってくださった

お互い訳がわからない顔をしていると、続けて晴信様は

「2人が真実を言っている目をしていたのだ、だから代官屋敷に抜き打ちで調査隊を派遣したのだ、
すると、不正の証拠に、今川家臣との内通の約束状まで出てきた」と告げられた

私が「代官様は?」と聞くと

晴信様は家臣に命じ一つの「桶」を持って来させた

「それ」が何なのかは農民の私たちでもわかった、「首桶」である

晴信様は、「手打ちに致した、新しい代官は私の近臣の中から信頼のおける者を行かせる、そしてお主ら2人はその勇敢さに免じて、死罪を免除とする」と言ってくださったのだ

その日、館を後にして、村に帰り、結果を伝えると、村の皆は大喜びした、


そのあと、私たち2人に思いがけない知らせが来るのであった・・・



・・・・あとがき

ここまでお読みいただきありがとうございます!
2話目、如何でしたでしょうか?
コメント等をいただけると大変参考になります、

改めて、お読みいただきありがとうございます!
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