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第四章、幸せは近くに
カタクリ
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「カタクリはどうして神様になったの?」
カタクリは私の出生のことや両親について話してくれたが、未だ彼自身についてはあまり話してくれない。
「、、、オレを神にしたのも人間だ」
「え、、、不本意なの?」
「当たり前だ」
カタクリはそう呟くと面を持って来た。神職が月峰神を模した面だとカタクリは言うが、あまり似ていないような、、、。
「かつて、この地の人間達は山に棲む豺を畏れ、鎮める為に土地を守る神として崇め祀った」思っていたよりも深い理由に少し困惑する。
「カタクリが何かしたの?」
「する訳ないだろ。天変地異や流行り病など、人間ではどうしようもないことを人間達は神の祟りと考え、恐れる。それらが起こった時、人間達は救いを求めて生贄を寄越してきた。それが生き神の始まりだ」
だからこの地の伝承に生き神が神になる、とは書かれていないんだね。
「生き神の始まりはもうずっと昔だ。、、、時が経てば、あらゆる物はその在り方を変える」
ずっと昔から、生き神というのは続いていた、、、。
ただ、その在り方が変わっているだけで、根本的には同じこと。
「、、、思いのままじゃないの?」そう尋ねるとカタクリは眉間を摘んだ。
「だとしたら今、オレもお前も此処にはいないだろ」
「う、、、」
「人の言葉を理解し、姿も変えたが、、、得たものより失ったのものの方が多い」きっと、失ったものという中にお母さんも入っているのだろう。
「ずっと一人で山を守って、、、寂しくなかったの?」
「オレにとって山は命に等しい。この山の神となった以上、守り続けなくてはいけない。山が滅ぶのなら共に絶える」
「そうなんだ、、、」軽々しく聞いてはいけなかった気がして、申し訳ない気持ちで頭がいっぱいになる。
「私やお母さん以外にもカタクリのことが見える子はいたの?」
「ああ」
カタクリがずっと一人じゃなかったと知れて、少し安心した。
「、、、この地で生まれた子は生後三十日程経つと、必ずこの社に連れて来られる」
「どうして?」
「初宮参りだ」
「、、、はつみやまいり?」
聞き慣れない単語だ。初めて聞いた気がする。
「この地で生まれた命を祝福するんだ」
つまり、カタクリに赤ちゃんを見せに行く、、、ってこと?
「生まれたばかりの赤子の中に、オレに気付く子は多い。それからまた一年程村で過ごし、再び社に呼ばれる。その頃にはもう殆どの子はオレを見ることはないが、、、マヨイやお前のように、ごく稀にその力を持ち続けることがある」
カタクリは一体、何人の子と出会い、さよならをしてきたのだろうか。
随分前に問われたあの言葉が蘇る。
『置いて逝く側と置いて逝かれる側、どちらが辛いんだろうな』
そういうことだったんだ、、、。
「この地から出た生き神の子はいたの?」
「いない」さらりと、でも悔しそうに言った。
きっと、私みたいに外に興味を持った子はいたはず。それに、カタクリは生き神の使命を哀れんでいるのだろう。それなのに、どうして、、、。
「この地で使命を果たすことを、当然だと受け入れる生き神の子も少なくなかった。そのような子を外に出してやったとして、果たして一人では生きていけないだろう」
「、、、」
「生き神の力を持った子供は山に招かれ、、、やがてこの山で死に、神とされる。土地を守る為のその犠牲が人には分かりやすく、、、人は信仰を厚くする。だが人はすぐに忘れる。見えないものを信じ続けるのも難しいのだろう。信仰心が薄れると土地は荒れる。土地が荒れると人々は救いを求める、、、そしてこの地に生き神が生まれる」
「犠牲と信仰、、、?」
「人の信仰心というのは、そういうものだ」
何かを犠牲にして信仰心を保っている。よく理解出来ていないのに、カタクリはそう言っているような感じがした。
カタクリは私の出生のことや両親について話してくれたが、未だ彼自身についてはあまり話してくれない。
「、、、オレを神にしたのも人間だ」
「え、、、不本意なの?」
「当たり前だ」
カタクリはそう呟くと面を持って来た。神職が月峰神を模した面だとカタクリは言うが、あまり似ていないような、、、。
「かつて、この地の人間達は山に棲む豺を畏れ、鎮める為に土地を守る神として崇め祀った」思っていたよりも深い理由に少し困惑する。
「カタクリが何かしたの?」
「する訳ないだろ。天変地異や流行り病など、人間ではどうしようもないことを人間達は神の祟りと考え、恐れる。それらが起こった時、人間達は救いを求めて生贄を寄越してきた。それが生き神の始まりだ」
だからこの地の伝承に生き神が神になる、とは書かれていないんだね。
「生き神の始まりはもうずっと昔だ。、、、時が経てば、あらゆる物はその在り方を変える」
ずっと昔から、生き神というのは続いていた、、、。
ただ、その在り方が変わっているだけで、根本的には同じこと。
「、、、思いのままじゃないの?」そう尋ねるとカタクリは眉間を摘んだ。
「だとしたら今、オレもお前も此処にはいないだろ」
「う、、、」
「人の言葉を理解し、姿も変えたが、、、得たものより失ったのものの方が多い」きっと、失ったものという中にお母さんも入っているのだろう。
「ずっと一人で山を守って、、、寂しくなかったの?」
「オレにとって山は命に等しい。この山の神となった以上、守り続けなくてはいけない。山が滅ぶのなら共に絶える」
「そうなんだ、、、」軽々しく聞いてはいけなかった気がして、申し訳ない気持ちで頭がいっぱいになる。
「私やお母さん以外にもカタクリのことが見える子はいたの?」
「ああ」
カタクリがずっと一人じゃなかったと知れて、少し安心した。
「、、、この地で生まれた子は生後三十日程経つと、必ずこの社に連れて来られる」
「どうして?」
「初宮参りだ」
「、、、はつみやまいり?」
聞き慣れない単語だ。初めて聞いた気がする。
「この地で生まれた命を祝福するんだ」
つまり、カタクリに赤ちゃんを見せに行く、、、ってこと?
「生まれたばかりの赤子の中に、オレに気付く子は多い。それからまた一年程村で過ごし、再び社に呼ばれる。その頃にはもう殆どの子はオレを見ることはないが、、、マヨイやお前のように、ごく稀にその力を持ち続けることがある」
カタクリは一体、何人の子と出会い、さよならをしてきたのだろうか。
随分前に問われたあの言葉が蘇る。
『置いて逝く側と置いて逝かれる側、どちらが辛いんだろうな』
そういうことだったんだ、、、。
「この地から出た生き神の子はいたの?」
「いない」さらりと、でも悔しそうに言った。
きっと、私みたいに外に興味を持った子はいたはず。それに、カタクリは生き神の使命を哀れんでいるのだろう。それなのに、どうして、、、。
「この地で使命を果たすことを、当然だと受け入れる生き神の子も少なくなかった。そのような子を外に出してやったとして、果たして一人では生きていけないだろう」
「、、、」
「生き神の力を持った子供は山に招かれ、、、やがてこの山で死に、神とされる。土地を守る為のその犠牲が人には分かりやすく、、、人は信仰を厚くする。だが人はすぐに忘れる。見えないものを信じ続けるのも難しいのだろう。信仰心が薄れると土地は荒れる。土地が荒れると人々は救いを求める、、、そしてこの地に生き神が生まれる」
「犠牲と信仰、、、?」
「人の信仰心というのは、そういうものだ」
何かを犠牲にして信仰心を保っている。よく理解出来ていないのに、カタクリはそう言っているような感じがした。
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