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第三章

帰還せし転生者

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「やっと帰ってこれた」
どう足掻いても無理だとか言ってたけど、問題ねぇじゃん。
まっ、ハイエルフと言えど知らないことはあるってことだな。

あ、あれ?
おかしい。
ちゃんと帰ってこれたよな?
景色も、人も、何もかも記憶の通りだ。
なのに、なんで、なんで動けない。
触れない、話せない。
確実に、上手くいったはずなのに!
なぜだ!

「ハイエルフの忠告を無視するからだぞ? ちゃんと言っていただろう、どう足掻いてもお前の力では成功せんと」
なんで、お前がいる……。
「お前の魂を転生させたのは誰だと思っている。勝手は許さんぞ? あのハイエルフを軽く襲ったのは助力をさせんためだ。必要なかったがな」
あぁ、魂の支配権がお前にあるから、俺の自由には出来ないってことか……。
くっそ、せめて、せめて一言だけでもあいつに──


「少しは楽しめましたか? 人間のオス」
「……最後のは、助かった」
それは良かったです、高くつきますので覚悟しておいて下さいね。
そう楽しそうに、リジェは笑いながら言い残し、帰って行った。

「返せる気がしねぇな」
「ふん、あの程度で良いなら我に頼めば良かろう。そこまで狭量ではないぞ」
はいはい、でも恥ずかしいだろ?
妹に頑張れよって言うためだけに帰りたいだなんてお願いするの。
だってお前、すげぇ美人なんだもん。
カッコつけたままでいたいじゃん。

「今度はちゃんと相談するよ」
「あれが欲しいなら、諦めよ。あれは、過保護なものが多すぎる。我でも好きには出来ぬ」
あー、確かに好みだよ。
成長していったら、間違いなくな。
でもさ、俺の手元に置いちゃったら、あんなに笑ってくれないと思うんだよ。
一応、俺は王だしな。
王妃にするには、苛烈過ぎる。
それにさ、俺には既に最高の女がいてくれるんだ。
これ以上を望むことなんて、これからもずっと一緒にいてくれって事以外ないと思うんだよ。

「恥ずかしいことを言うでないわ。頼まれなくとも、永遠に一緒じゃ」
「そりゃ嬉しいね」

*******************

「幸せならそれでいいのでしょう」
「魂を支配されるってことは、どんな感情も思うがままということですものね。想い人を都合のいいように改竄した記憶で潰すぐらいお手の物ですわね」
心からの言葉だけは、想い人に伝えてあげましたし、これ以上は何もしません。


「誰? えっと何、コスプレ? すごい本物みたいな耳だけど」
「名乗るほどの時間もないので、手短に伝えます。ヒロトと呼んでいたそれからの言葉です。結婚しようとかずっと一緒だぜなんて言ったくせに、死んじまってすまねぇ、渡したかった物も言葉も沢山あるんだけど、これだけはどうしても伝えたかったんだ。くっそ失礼だし、ふざけんなって思うだろうけど、俺は君の幸せを心から願ってる! だそうです。それでは、もう会うことは無いでしょう、人間のメス」
「えっ、ちょっと待って! ヒロトの事、なんで知ってんの! どういうこと」
「うるさいですね、人間のメス。そのヒロトとやらが最後に望んだ事です。もう二度と思い出すことが出来なくなるから、言葉を伝えて欲しいと頼まれたのでやってあげてるだけです。では、私は帰ります長居すると死にますので。あぁ、ひとつ忘れておりました」
異世界転生ってマジであったんだよ。
今目の前にいるやつ、マジで本物の異世界人だぜ、写真撮っとけよ。

「やかましい人間のメスでした」
「最後のあの板は何だったのか、主様はご存知ですか?」
写真という目の前の光景を、記録することが出来る魔道具のようなものだそうですよ。

******************

「何度見ても、クオリティの高いコスプレにしか見えないけど」
すっごい可愛い女の子だったな。
異世界転生かぁ、ちょっとだけ羨ましいな。
でも、私はこれから幸せにならないといけないわけだし、後追いなんてできない。
でも、もし私も異世界に行けるなら、その時はまた会いたいな。
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