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第二章

代替わりまでのひととき

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「剣聖技だと…… 何故、ハイエルフである君が使えるんだ」
「習ったからですよ。あの人間のオスは、やけに私に剣聖になれとうるさかったですが、私の筋力で出来るわけないと分かっているでしょうに、それで、魔法で誤魔化してる私の剣技もどきに対応もできない盾役としての恥さらしは、いつまで呆けているのです」
情けない。
どうやら、何も成長していないようですね。
さすがは、15年もの間、誰によって今生きている幸運を享受しているのかを理解できないだけはあります。

「くっ、こんな所で、負けるわけにはいかないんだ!」
「だから? どうするんです? 喚くだけなら、誰にでもできるんですよ」
勇者が未熟だったから、ただそれだけでブレイブハートに選ばれた。
その程度の人間が、世界の命運を握ってると思い込むとは、いい度胸です。
超越種とは何か、思い知りなさい。

「ここで、お前を、討つ!」
「ヘビーストライク。インパクトの瞬間だけ重量をはね上げることで、その威力を強化する。私には無理な技術ですね。私では手首が折れます」
ですが、それはつまり、インパクトの瞬間以外は、脅威ではないのですよ。
つまり、相手が力を込めるタイミングで逸らせば。

「ぐっ」
「動きが甘い、私が打ち合うとでも思いましたか?」
その重量に負け、大きく体勢を崩す。
だからこそ、慎重にならねばならないのですが、甘すぎますね。

「単調、短絡、練度不足。15年、何をしてきたのです。そこの獣人のメスと交尾でもしてたと言われたら納得しますよ」
「貴様」
怒ってる余裕があるのですか?
それぐらい酷いと言っているのですが。

「閃刃一刀、これは、数多の剣閃を一刀の振りにて放つ。要は、大量の剣閃を1度で放つという、頭のおかしい技です。人間が使えるのが驚きですが、魔法による再現は可能ですので、私も使っておりますが、こんなもの誰でも出来るんですよ」
剣技として放とうとするから、極限の技になっているだけで、魔法を併用すれば、一気に容易になるんですよ。
複数の攻撃を1度に放つというのは、魔闘技の基礎技の1つですので。

「筋力のない私の模倣すら防げない盾役など、何の役にも立ちませんよ? 忘れているようですが、私は、ハイエルフです」
最も得意とするのは、魔法なんですよ。
剣技ではないのです。

「剣聖技 終刀一閃」
やっと来ましたか、聖剣、ブレイブソウル。

「これは、聖剣? 私を、選んでくれたのか…… そうか、ならば、それに恥じぬよう──」
「極点集中 黒龍槍破」
やっと、砕けますね。
欲望まみれの駄作。

根元に、ヒビが入ったと同時に、粉々に砕け散る。
脆い、脆すぎます。

「イリス、お仕事です。さっさと片付けなさい」
苦笑しながら、指を鳴らしたのを見るに、ちゃんと片付いたのでしょう。
未成熟なハイエルフ1人に壊滅するような脆弱なパーティが15年の成果とは、嘆かわしいものですね。

「私は、一体何を……」
正気に戻りましたか。
私には、もうどうでもいいですが。

「数多の人間のメスを苗床として捕え、陵辱の限りを尽くした鬼人のメスを仲間にして、楽しく過ごしていただけですよ。人間のオス」
そして、それは今死にましたよ。

「遅くなりました。リジェ先輩、こちらは片付きました。次はそれでいいんですよね」
やめなさい。
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