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第一章
辺境の地にて
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「こんな所に何をしに来たの? ここは危険だから、帰りなさいな」
「あなたを倒しに来ました。エミリーさん」
なにか悪いことしましたかね?
「あなたを倒して、私の使い魔に」
言い終わる前に街へと送ってあげる私は優しいのです。
「ハデス、場所を移しましょう」
「冥王領域 展開」
あれから、辺境の地を転々と移動してるんですけど、私が一応は魔物の扱いになるため、使い魔にしようと色んな方々が襲ってきます。
まぁ、アイリスさんは冗談なのは分かってますけれど。
危ないので街に返します。
それにしても、なんでみなさん私とパーティ組もうとしてくれないんですかね?
もう、ペナルティは終わってるんですけれど。
「こんな所にいましたか、勝手に移動を繰り返さないで貰えますか」
「でしたら、一々、冒険者をけしかけないでくれない? それとも、そちらの方針が変わったのかしら」
ちゃんと、本部からの依頼は片付けておりますし、通常の冒険者のような活動もしてあげておりますのに。
「魔物ごときが」
「……発言には気をつけなさい」
前と違い、悪意に気づくんですよね。
それでも、他の人よりはるかに鈍感でしょうけど。
なので、こうやって怒ってますよとアピールしないと、嫌がらせがエスカレートするんですよ。
これで3回目ぐらいですね。
「事実でしょう、こちらの恩情で成り立っている立場の分際で、調子に乗らないことです」
おや、怒ってますアピールたりませんでしたね。
さじ加減が大変です。
「誠意が見えないわ、やり直し」
本部へと転移させる。
このぐらいならいいでしょう。
なんて思ってましたが、失敗しました。
後日、討伐隊がやって来ました。
「なんの用かしら? 私への討伐指定は、なくなったはずだけど?」
と、一応正論を振りかざして見たんですけど、返答は範囲魔法攻撃でした。
それも、矢継ぎ早に放たれるので、上下関係を教えてやろうみたいなものではなく、討伐目的ですね。
「仕方ありません、事情を確認しに行きましょう」
強力な障壁を貼って、まるで中にいますよーと誤解させている間に済ませてしまいましょう。
冥王魔法、転移はこういう時に便利ですね。
本部へと直接向かったのが、失敗でしたね。
「予想通りの動きをしてくれて助かる、セラとは違って、時間はかかったがな」
捕縛の魔法陣ですか、初めて見ました。
なるほどー、あの会議がすんなり片付いたのは、これが目的ですか。
アンデッドですからねー、身動きさえ封じてしまえば、テイムできると。
仮に出来なくても、人間でもあるので隷属魔法による、奴隷化も狙えますからね。
しかして、聞き捨てなりませんね、セラさんがなんですって?
怒りに任せてやり過ぎましたね。
どえらい事になっていたので、セラさんも回収です。
大聖女様のおかげで回復魔法使えるんですよ。
「セラさん、無事ですか? 生きてるのなら逃げましょう」
「どうにか生きてるわ、だから、だからね? 叩き潰すのに協力しろや、クソガキ」
わー、こわーい。
─────────────────────
私は、人間というものを信じすぎていたのだろう。
盟約は、交わした一族に受け継がれず、いつでも破ることが出来ると、ついぞ気づくことが出来なかったのだから。
気づいた時には、私の自由はなく、里は、人のものとなった。
エルフとは自然に生きる。
それ故に、神樹を中心とした森から出ることは無い。
だが、それだけでは生きていけないのだ。
そのため、盟約を交わし、互いに良き隣人として過ごしてきた。
それはこれからも続くものだと、私達は思っていた。
私のお気に入りと言ってもいい、エミリーが辺境の地で活動し始めてすぐ、私は冒険者ギルド本部へと呼ばれた。
内容としては、今後の人族への対応を話し合おうといったものだった。
当たり前のように、部屋に入った私を待っていたのは、人族の醜い欲望そのものだった。
魔力を封じる結界に、グランドマスターとの戦闘となれば、さしもの私も、抵抗と呼べるほどの抵抗はできず、彼等にいいようにされた。
私のようなエルフの中でも、力の強いものは、精霊に近い性質を持ち、本人の意思さえ無視するのなら、とても使い勝手の良い魔力タンクとなるだろう。
かつては、幼きエルフを捕まえ、尽きぬ魔力庫として人族に利用されていた時代もある。
私は、その時代と同じことを、いや、より酷いことをされ続けた。
壊れても構わないというように、私は魔力を定期的に空になるまで抜き取られ、無理やり回復させるために、神樹で作られた拘束具を付けられたまま、ひたすらに───
痛めつけられた体は、神樹の持つ力で、癒され、その度にまた何度も──
反応が悪くなれば、里の仲間達を使って、私を追い詰める。
そんな毎日だった。
里は人族のための牧場のような扱いだった。
当然、家畜のように扱われるのは私達、エルフだ。
人族との盟約など何の役にも立たず、私達は蹂躙された。
まさか、人族の血を引かぬ者にも裏切られるとは思わなかったが、もはやどうでも良きことだった。
でも、助けてくれるのもまた、人族だったらしい。
「あなたを倒しに来ました。エミリーさん」
なにか悪いことしましたかね?
「あなたを倒して、私の使い魔に」
言い終わる前に街へと送ってあげる私は優しいのです。
「ハデス、場所を移しましょう」
「冥王領域 展開」
あれから、辺境の地を転々と移動してるんですけど、私が一応は魔物の扱いになるため、使い魔にしようと色んな方々が襲ってきます。
まぁ、アイリスさんは冗談なのは分かってますけれど。
危ないので街に返します。
それにしても、なんでみなさん私とパーティ組もうとしてくれないんですかね?
もう、ペナルティは終わってるんですけれど。
「こんな所にいましたか、勝手に移動を繰り返さないで貰えますか」
「でしたら、一々、冒険者をけしかけないでくれない? それとも、そちらの方針が変わったのかしら」
ちゃんと、本部からの依頼は片付けておりますし、通常の冒険者のような活動もしてあげておりますのに。
「魔物ごときが」
「……発言には気をつけなさい」
前と違い、悪意に気づくんですよね。
それでも、他の人よりはるかに鈍感でしょうけど。
なので、こうやって怒ってますよとアピールしないと、嫌がらせがエスカレートするんですよ。
これで3回目ぐらいですね。
「事実でしょう、こちらの恩情で成り立っている立場の分際で、調子に乗らないことです」
おや、怒ってますアピールたりませんでしたね。
さじ加減が大変です。
「誠意が見えないわ、やり直し」
本部へと転移させる。
このぐらいならいいでしょう。
なんて思ってましたが、失敗しました。
後日、討伐隊がやって来ました。
「なんの用かしら? 私への討伐指定は、なくなったはずだけど?」
と、一応正論を振りかざして見たんですけど、返答は範囲魔法攻撃でした。
それも、矢継ぎ早に放たれるので、上下関係を教えてやろうみたいなものではなく、討伐目的ですね。
「仕方ありません、事情を確認しに行きましょう」
強力な障壁を貼って、まるで中にいますよーと誤解させている間に済ませてしまいましょう。
冥王魔法、転移はこういう時に便利ですね。
本部へと直接向かったのが、失敗でしたね。
「予想通りの動きをしてくれて助かる、セラとは違って、時間はかかったがな」
捕縛の魔法陣ですか、初めて見ました。
なるほどー、あの会議がすんなり片付いたのは、これが目的ですか。
アンデッドですからねー、身動きさえ封じてしまえば、テイムできると。
仮に出来なくても、人間でもあるので隷属魔法による、奴隷化も狙えますからね。
しかして、聞き捨てなりませんね、セラさんがなんですって?
怒りに任せてやり過ぎましたね。
どえらい事になっていたので、セラさんも回収です。
大聖女様のおかげで回復魔法使えるんですよ。
「セラさん、無事ですか? 生きてるのなら逃げましょう」
「どうにか生きてるわ、だから、だからね? 叩き潰すのに協力しろや、クソガキ」
わー、こわーい。
─────────────────────
私は、人間というものを信じすぎていたのだろう。
盟約は、交わした一族に受け継がれず、いつでも破ることが出来ると、ついぞ気づくことが出来なかったのだから。
気づいた時には、私の自由はなく、里は、人のものとなった。
エルフとは自然に生きる。
それ故に、神樹を中心とした森から出ることは無い。
だが、それだけでは生きていけないのだ。
そのため、盟約を交わし、互いに良き隣人として過ごしてきた。
それはこれからも続くものだと、私達は思っていた。
私のお気に入りと言ってもいい、エミリーが辺境の地で活動し始めてすぐ、私は冒険者ギルド本部へと呼ばれた。
内容としては、今後の人族への対応を話し合おうといったものだった。
当たり前のように、部屋に入った私を待っていたのは、人族の醜い欲望そのものだった。
魔力を封じる結界に、グランドマスターとの戦闘となれば、さしもの私も、抵抗と呼べるほどの抵抗はできず、彼等にいいようにされた。
私のようなエルフの中でも、力の強いものは、精霊に近い性質を持ち、本人の意思さえ無視するのなら、とても使い勝手の良い魔力タンクとなるだろう。
かつては、幼きエルフを捕まえ、尽きぬ魔力庫として人族に利用されていた時代もある。
私は、その時代と同じことを、いや、より酷いことをされ続けた。
壊れても構わないというように、私は魔力を定期的に空になるまで抜き取られ、無理やり回復させるために、神樹で作られた拘束具を付けられたまま、ひたすらに───
痛めつけられた体は、神樹の持つ力で、癒され、その度にまた何度も──
反応が悪くなれば、里の仲間達を使って、私を追い詰める。
そんな毎日だった。
里は人族のための牧場のような扱いだった。
当然、家畜のように扱われるのは私達、エルフだ。
人族との盟約など何の役にも立たず、私達は蹂躙された。
まさか、人族の血を引かぬ者にも裏切られるとは思わなかったが、もはやどうでも良きことだった。
でも、助けてくれるのもまた、人族だったらしい。
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