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第一章
人類からの追放
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「あっ、目が覚めた? 良かった良かった。混ぜ合わせるのに失敗したかと思ったわよ」
目が覚めたと思ったのだが、多分夢だと思ったので、そっと目を閉じる。
銀髪幼女が居るのです、しかもとびきりの美人ですよ。
可愛いじゃなくて美人です。
夢に違いありません。
「いやいやいや、起きて起きて、体の調子見ないと」
夢だと思いたかったのですけど。
「ハデス、何をしてるのです。ここは冥界では無いんですよ? それに、あれだけのダメージを受けておきながら、平然としておりますし、何より、なんですかあの口調は」
私を通して、致命傷だったはずですが。
「なるほど? そもそもが、冥王の裁きの範疇で起きた事であるということですか?」
だとするのなら、覚悟なさい。
「いや待ってちょうだい、これにはちゃんとした理由が、待って、話を、聞いて」
ボコボコにした後に、詳しく話を聞きました。
まず、私をもぐもぐしてくれたあれは、冥王の裁きによって生まれた、疑似生命体。
だったら良かったんですけど、あれはハデスの使い魔の1人だったようです。
ハデスの望みを叶えるために最善を尽くすという行動だけを取ります。
はい、つまりは、ハデスの望み、冥界から現世へと契約者と共にありたい。
これを叶えるため、あれはまず、ハデスに致命的なダメージを与え、こちら側に無理やり引き込み、その後、私との繋がりを利用し、こちらで完全に回復。
その際、より強く繋ぐために私の損傷を限界まで高め、馴染ませた。
しかして、これではハデスの器がないため、器を作ることにした。
ちょうどよく、大聖女と言う、人類最高峰の1人がいたわけです。
「で、人格と器の構成に大聖女様を使ってしまったので、女の子になっていると」
「そうなのよ。8割ほど影響を受けてるから、口調にも影響が出てしまったのよ。まぁ、エミリーが滅びる間だけですから、冥王的には問題ありませんわ」
つまり、ハデスの力は2割しか出ないということですね。
使い魔としてみるならそれでも、最高峰でしょうけれど。
「人類の敵みたいな組み合わせですね」
「まぁ、2割だけだから、そんなに影響はないと思うわよ? 冥王の目を持ってる方が強いもの」
逆を言うと、人から狙われる存在になったのに、弱いということですけれど。
「いえいえ、ちゃんと蘇生してるのだから、暴れなきゃ大丈夫ですわよ。私も大聖女とは言わないけれど、中聖女ぐらいの力を持った使い魔みたいなものですもの」
聖女様のランクは大、中、小では、ありません。
「出ていけ、化け物が!」
何がちゃんと蘇生してるからですか!
国から討伐指定されましたよ!
追放処分なんてものじゃないですよ!
──────────────
冒険者ギルド本部にて、会議が行われていた。
内容は、冥王と共に限界した、一人の少女の処遇についてだ。
「エミリーちゃんが魔物扱いになってるようだけど、どこのバカかしら、そんなことしでかしたのは」
そう静かに怒りを示す女性は、単独Sランクの冒険者であり、エルフと呼ばれる種族の王、名をセラと言う。
セラの見た目、白金の長い髪に、金の瞳、白き肌、華奢な体ではあるが、その美貌ゆえに、まるで刃物のような鋭さの圧を与えてしまうのもあって、場の気温が下がったかのような印象を与える。
「セラよ、少し威圧を抑えろ、慣れておらぬ者もおるのだ」
セラをなだめようとするこの男は、本部のギルドマスター、便宜上、グランドマスターと呼ばれる男だ。
ドワーフと呼ばれる種族と龍との血を引いており、その姿は筋肉の塊と呼ぶべきであろう。
顔は端正なものなので、恐ろしいギャップであるが。
「冥王の契約者で、冥王が花嫁に選ぶほどの逸材を討伐指定しただけでなく、本部に報告することなく、勝手に討伐隊を率いて襲ったと聞いているのだけど、エルフ側に対する宣戦布告と受け取って何が悪いのかしら?」
時にエルフとは、盟約を大事にする一族である。
故に、交わした盟約を反故にすることは、たとえ滅びることになったとしてもないのだ。
その交した盟約には、事情も精査せずに討伐指定、並びに討伐隊を許可なく率いて行動を起こすことを禁じているものがある。
でなければ、勝手な理由で戦争を仕掛けると事が可能になるからだ。
つまり、今回の場合エルフとの盟約を破ったことで、エルフとの約束事など守る気は無い。
そう伝えてしまったことになる。
宣戦布告とは大袈裟でもなんでもない。
それ故、中立の立場となるべく冒険者ギルドの本部があるのである。
そこを通さなかったという時点で、反逆の意思ありとみなされる。
「まぁ待て、エルフ側だけで済む話ではない。さて、なぜそのような許可を出したのか聞こうか、人間の王よ」
そう話を振られたのは、純然たる人族である大国 ディオゾーヌの王、ヘルマン・カイトスである。
「……信じてはもらえぬだろうが、俺は許可などしていない。まず、話すら聞いておらぬ」
悲壮感漂うその姿に嘘はないだろう。
だが、だとしたら大きな問題である。
「ヘルマン殿がそのような体たらくでは困りますな」
と口に出したあたりで会議は終わりを迎えた。
当然であろう。
当の本人が、ここに来たのだから。
目が覚めたと思ったのだが、多分夢だと思ったので、そっと目を閉じる。
銀髪幼女が居るのです、しかもとびきりの美人ですよ。
可愛いじゃなくて美人です。
夢に違いありません。
「いやいやいや、起きて起きて、体の調子見ないと」
夢だと思いたかったのですけど。
「ハデス、何をしてるのです。ここは冥界では無いんですよ? それに、あれだけのダメージを受けておきながら、平然としておりますし、何より、なんですかあの口調は」
私を通して、致命傷だったはずですが。
「なるほど? そもそもが、冥王の裁きの範疇で起きた事であるということですか?」
だとするのなら、覚悟なさい。
「いや待ってちょうだい、これにはちゃんとした理由が、待って、話を、聞いて」
ボコボコにした後に、詳しく話を聞きました。
まず、私をもぐもぐしてくれたあれは、冥王の裁きによって生まれた、疑似生命体。
だったら良かったんですけど、あれはハデスの使い魔の1人だったようです。
ハデスの望みを叶えるために最善を尽くすという行動だけを取ります。
はい、つまりは、ハデスの望み、冥界から現世へと契約者と共にありたい。
これを叶えるため、あれはまず、ハデスに致命的なダメージを与え、こちら側に無理やり引き込み、その後、私との繋がりを利用し、こちらで完全に回復。
その際、より強く繋ぐために私の損傷を限界まで高め、馴染ませた。
しかして、これではハデスの器がないため、器を作ることにした。
ちょうどよく、大聖女と言う、人類最高峰の1人がいたわけです。
「で、人格と器の構成に大聖女様を使ってしまったので、女の子になっていると」
「そうなのよ。8割ほど影響を受けてるから、口調にも影響が出てしまったのよ。まぁ、エミリーが滅びる間だけですから、冥王的には問題ありませんわ」
つまり、ハデスの力は2割しか出ないということですね。
使い魔としてみるならそれでも、最高峰でしょうけれど。
「人類の敵みたいな組み合わせですね」
「まぁ、2割だけだから、そんなに影響はないと思うわよ? 冥王の目を持ってる方が強いもの」
逆を言うと、人から狙われる存在になったのに、弱いということですけれど。
「いえいえ、ちゃんと蘇生してるのだから、暴れなきゃ大丈夫ですわよ。私も大聖女とは言わないけれど、中聖女ぐらいの力を持った使い魔みたいなものですもの」
聖女様のランクは大、中、小では、ありません。
「出ていけ、化け物が!」
何がちゃんと蘇生してるからですか!
国から討伐指定されましたよ!
追放処分なんてものじゃないですよ!
──────────────
冒険者ギルド本部にて、会議が行われていた。
内容は、冥王と共に限界した、一人の少女の処遇についてだ。
「エミリーちゃんが魔物扱いになってるようだけど、どこのバカかしら、そんなことしでかしたのは」
そう静かに怒りを示す女性は、単独Sランクの冒険者であり、エルフと呼ばれる種族の王、名をセラと言う。
セラの見た目、白金の長い髪に、金の瞳、白き肌、華奢な体ではあるが、その美貌ゆえに、まるで刃物のような鋭さの圧を与えてしまうのもあって、場の気温が下がったかのような印象を与える。
「セラよ、少し威圧を抑えろ、慣れておらぬ者もおるのだ」
セラをなだめようとするこの男は、本部のギルドマスター、便宜上、グランドマスターと呼ばれる男だ。
ドワーフと呼ばれる種族と龍との血を引いており、その姿は筋肉の塊と呼ぶべきであろう。
顔は端正なものなので、恐ろしいギャップであるが。
「冥王の契約者で、冥王が花嫁に選ぶほどの逸材を討伐指定しただけでなく、本部に報告することなく、勝手に討伐隊を率いて襲ったと聞いているのだけど、エルフ側に対する宣戦布告と受け取って何が悪いのかしら?」
時にエルフとは、盟約を大事にする一族である。
故に、交わした盟約を反故にすることは、たとえ滅びることになったとしてもないのだ。
その交した盟約には、事情も精査せずに討伐指定、並びに討伐隊を許可なく率いて行動を起こすことを禁じているものがある。
でなければ、勝手な理由で戦争を仕掛けると事が可能になるからだ。
つまり、今回の場合エルフとの盟約を破ったことで、エルフとの約束事など守る気は無い。
そう伝えてしまったことになる。
宣戦布告とは大袈裟でもなんでもない。
それ故、中立の立場となるべく冒険者ギルドの本部があるのである。
そこを通さなかったという時点で、反逆の意思ありとみなされる。
「まぁ待て、エルフ側だけで済む話ではない。さて、なぜそのような許可を出したのか聞こうか、人間の王よ」
そう話を振られたのは、純然たる人族である大国 ディオゾーヌの王、ヘルマン・カイトスである。
「……信じてはもらえぬだろうが、俺は許可などしていない。まず、話すら聞いておらぬ」
悲壮感漂うその姿に嘘はないだろう。
だが、だとしたら大きな問題である。
「ヘルマン殿がそのような体たらくでは困りますな」
と口に出したあたりで会議は終わりを迎えた。
当然であろう。
当の本人が、ここに来たのだから。
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