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第二幕

精霊の嫁

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黒姉さんには、ぎゅっと抱きしめられるぐらいで済みました。
「さて、なら正式に契約だね」
「脱ぐ必要ありました?」
ないよ?
って真顔で言われたんだけどー!
じゃあ脱いでねって言われたから、アディみたいにちゃんとした理由があるんだと思ったのに!
「着装」
戦闘態勢である。
「冗談だよ、さすがに子どもの体に無茶はさせらないからね」
「変態神樹と違って良識があったんですね!」
ゲンコツされました。
解せぬ!
「そう言えば、真名はあるのかい?」
「真名ではありませんが、精霊名を貰いました。エルフィーリアと言うそうです」
多分愛称はエルです。
「今度からはそれを名乗るといいさ、私らはいつも通りアイナと呼ぶけどね」
「黒姉さんは、どちらで呼ばれたいです?」
ずっと黒姉さん黒姉さんと呼んでいたので、正式に契約するわけだし、変えた方がいいかなって。
「黒姉さんでいいさ、アイナにそう呼ばれるのは嫌いじゃない。それに、名前で呼ばせたらアリア様って呼ぶだろう?」
間違いなく、そう呼ぶつもりでしたよ。
「呼んじゃダメなんですか?」
「対等でいたいからね」
納得。
 「神樹の姫、アリアが問う。汝、我と共にあるか」
「森の精霊姫、エルフィーリアは貴女が私に望む全てを捧げます」
そして思い切り吹き出す黒姉さん。
「ちょっと! なんで吹き出すんですか!」
「いや、だってお前、ふふ」
酷い、せっかく珍しく精霊姫らしいことしたのに。
「悪い悪い、ただ、全部を捧げたりしなくていい、私たちは対等でいよう。これから先何が起ころうとも、今までのように楽しくすごそうじゃないか」
「では改めまして、これからもよろしくお願いします」
グッダグダだったけど、契約は成立した。
私たちはずっと一緒である。
「という訳で今夜は初夜となるわけだけど」
「助けてフェリーシア様!」
逃げましたが何か?

「なにもフェリに任せることは無いじゃないか」
「黒姉さん、私が精霊になるまであそこまでの行為は、禁止します」
ドリアードは女性嫌いなんて噂が流れた理由を見ました。
フェリーシア様に頼んで、淫らな夢の中で黒姉さんは仕方なしに発散していたわけですが、あんなにされたら壊れます。
ええ、文字通りに。
「ちっ、やってしまえばこっちのものだと思ったんだけどね」
「数百年お預けです」
数千年にならないことを祈りたい。
「アイナ、寝る前にこれを食べるといい」
「さしもの私でも即死するような代物ですね!」
神樹の作る毒である。
食べない限り効果はない代わりに、食べてしまうとほぼ全ての生物は即死する。
私の場合、精霊になるね。
「さあ、すぐに精霊になるんだ。なあに一瞬で終わるさ」
「いーやーでーすー」
蝕の魔眼で魔力に変換しておく。
「まあ冗談はさておき、今後はどうするんだい?」
「魔王としての仕事はあちらがやってくれるでしょうから、私は森の精霊姫として神樹の嫁としてゆったりと、この森を要塞化しようかと思いますが」
フェリーシア様と私が作り上げる幻惑の森を基盤にして、そうそう入ってこれない裏ボスポジションに入ろうと思います。
ふっふっふ、これでのんびりしても大丈夫。
「なんでだろうね、賑やかになる予感しかしないよ」
「やめてくださいよ! 思っても言わないでください。言霊という私のいた世界での伝承が」

とか悪ふざけをしつつ、魔王の森を作り上げて隠居生活モードに入ってたんですけどね。

「我は獣人の中の王、獣王国のレグルスである。魔王よ、いざ尋常に勝負といこうではないか!」
「帰れ! 何回目ですか!」
「待たれよレグルス殿、此度は私に譲ってくれる約束のはず、さあ魔王殿、天界の騎士ウォルターが相手です」
「あなたも帰ってください! 私はひっそりとしてたいんです!」
「待ちなさい、今回はわたくしの番だったはずですわ、さあ、エルフィーリア様、わたくしと共にこの腐敗した世界を変えるのです」
「かーえーれー!」
なんで今までひっそりしてたはずのトップクラスの実力者が、こぞってここに来るんですか!
「威の魔眼、少しは落ち着きなさい!」
「やはり、これでこそ森の魔王だな」
「ええ、これ程の魔眼を苦もなく使いこなすとは、やはり噂の魔王とはこの方で間違いないでしょう」
「御二方とも魔王魔王と、この方はわたくし共の救世主となってくださるお方。精霊姫のエルフィーリア様ですわ」
人の話聞いてくださいよー!
私だって怒りますよー?
「大体、なんで私のところに来るんですか! 入るなという警告のつもりで幻惑を掛けてもらってるのにあっさりと突破して来ますし、魔王ならアルディスにいるじゃないですか」
「はっはっは、何を申すか、同じ魔王なら手に入れたい方に来るのが当然であろう」
「ロリコン帰れ! 黒姉さん以外に貰われるつもりはありません」
なんなの、変態しかいないのこの世界。
「まったく、レグルス殿は言葉選びが悪すぎる。エルフィーリア様、我ら天界に属するものは貴女に1度我らの世界を見てもらいたいだけです」
「肉体捨てないと行けない場所に連れてこうとしないでくれます? しかも、天界に縛り付けるつもりですよね?」
「我らが王の寵愛を受けることになんの問題が?」
加護なら、精霊王様から大量に掛けられてるのでもう要りません。
「エルフィーリア様、わたくしの」
「貴女がいちばん怖いですよ! なんですかその禍々しい力を放つ首輪は!」
絶対使い魔にしたいだけですよね?
しかも、完全服従の。
「なんで一年足らずで、こんな変態ばっかり来るんですかー! 黒姉さん早く帰ってきてくださいー!」
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