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第二幕

王様から装備を貰うって勇者みたい

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黒姉さんの所に報告に行こうとした時、景色が歪んだ。
「森の精霊姫、少し待たれよ」
「……私が、神樹の姫に貰われるのは不都合があると?」
どう考えても狙ったタイミングのはずだ。
1体1なら勝ち目はありそうだけど、パッと見渡す限り、3人いる。
無理。
「過ぎたる力を王にならぬ者が持つべきではない」
「あなた方の都合に合わせる気はありませんけど?」
なんでこのタイミングで、邪魔をする。
おかしい、精霊王はその力故にそうそう世界に干渉しない。
「貴様の都合など知らん」
精霊王がこんなに雑な事をするだろうか?
何か考えがあって起こしているとしたら。
私は何をすべきか。
「蝕の魔眼」
『うわあ! 待った待った。死んじゃう』
なんか止められた。
「で、何の用ですか。アディに関しては終わったはずでしょう」
『終わったから呼んだの! あれでも一応森の精霊王だったから、普通に死なせると問題が多いから』
「それと私になんの関係があるんですか?」
正直、さっさと黒姉さんのところに行って抱きついてきたい。
黒姉さんはお姉ちゃん的な存在としては大好きだから。
うん。
その後の私に訪れそうな悲劇は気にしないでおこう。
大丈夫、いざとなったらフェリーシア様に泣きつく。
『あれの力を循環させるぐらいなら君に渡した方がよっぽどマシだ』
「また縮む!」
勘弁して! 幼女時代だけで数千年とかになったら、大人になるまでに歴史がいっぱい変わってしまう!
『縮んだりはしないよ、もうここまで来たら誤差の範囲だから』
「精霊王の誤差とか数百年になるじゃないですか!」
いーやーだー、せめて元の体型になりたいー!
『大丈夫だって、装備品になるだけだから、ほんとに人間感覚の誤差程度だよ』
「装備品?」
えっ、どういうこと?
アディが剣になるとか?
『そう、精霊装具って言うんだけど、ようは戦闘時の鎧みたいなものだよ。君の場合はドレスみたいになるかな』
「動きづら! 私、魔法だけで戦うわけじゃないんですけど」
ヒラヒラしてたら動きが阻害されて思わぬ隙に繋がる。
『ん? あー、君の想像しているドレスではないよ。そもそも、君は全身を覆うような服だと、気持ち悪くて着ていられないだろう?』
「ええ、物によっては、爛れます」
割と冗談ではなく、金属繊維とか使われると火傷みたいになる。
煌びやかな夜会のドレスとか無理。
あれ、繊維に拘りすぎて色んなものが混ぜられてて気持ち悪いじゃなくて火傷する。
『ということで、森人の正装と言ったところだよ。動きやすさは保証する』
「でしたら受け取ります」
森人の正装なら着たことあるし、あれなら戦闘の時も大丈夫。
ふわっとした時に
やめとこう。

『着装と唱えれば、勝手に装備されるから後で試しておいて』
「着装」
嫌な予感がしたので、即装備。
ほー、森人の正装かー。
どう見てもメイド服だよねこれ?
私の視界は魔力で広げられるから鏡いらず。
疲れるから鏡は欲しい。
「私は誰に仕える予定ですかね?」
『ごめんなさい、戻します』
蝕の魔眼で見つめてあげました。
魔力ごっそりチャージ。
多分、向こうからすると蚊に刺されたぐらい。
こっちは、布が当たって全身気持ち悪い感覚に襲われたというのに割に合わない。
「アンクレットとか付けれたんですね私」
『そりゃ特注品だもの、僕達じゃないと作れない鉱石が材料だからね』
素足に純白のレースのようなオーバーニーなブーツ。
薄いから見た目で言うならソックス。
その上からアンクレットが両足首と左側の太ももあたりに付いてる。
直接だとさすがに違和感があったろうなって感じ。
ちなみに色は綺麗な金色。
なんか色々と複雑な模様が入ってるけど説明しがたい。
腕の方は薄いレースのアームカバーって感じ。
服はあれだね、ウエディングドレスが1番近いかな?
全部レースで出来てるような隠せてるのか不安になるぐらいスケスケだし、丈が短いから、ミニスカート状態だし、これを結婚式で用意されたら、確実にぶん殴るけどね。
まぁ、とりあえず言えるのは白い。
しかもどういう仕組みか、透けてるのにちゃんと見えないんだよね。
不思議アイテムである。
ちなみに、ふんわりはしてないから、ピシッとしてる。
張り付いてるとまでは言わないけど、タイトだね。
おかげで動きやすい。
「しっかし、軽いですね」
『ちなみに、君のトレントゴーレムに蹴り飛ばされたとしてもダメージはないよ。吹っ飛ぶけど』
うわー、何そのチート素材。
『付け加えると、その状態だと領域魔法っていう属性を空間に満たすっていう僕ら王の域にある魔法が使えるようになる』
チート万歳。
『欠点は使えば使うほど君の成長期は遠ざかるってことかな』
デメリットがヤバすぎる。
でも、ねぇ?
自分の領域を作るぐらいなら既にやってるし、要らなくない?
自分と違う属性で満たしたら私が入れなくなる。
「ところで、属性で満たすと言いますけど、これがなくても既にやってますよ?」
『えっ? 嘘! やば、ちょっと待ってて緊急会議してくる』
不味かったらしい。
あー、それにしてもこの素材気持ちいいかも。
レースみたいな見た目だけど、何でできてるんだろう?
精霊王の特別素材なんだろうけど。
これ作れるようになったら、元人間としては露出が抑えられて助かるんだけど。
『ごめんね、とりあえず効果を変えるよ』
「認識阻害とか意味の無いものはやめてくださいよ? この世界に来た時からやってるので」
『緊急会議してくる』
使えねぇ!

ということで、結局その会議に入り込んだ私である。
何度手間をすればいいんだという話だからね。
「うわぁ、煌びやか」
『なにか希望はあるか』
あっ、長居しちゃダメな感じか。
「でしたらレジスト系をください」
『既についている』
あっそうなんだ、便利だな。
「魔眼の強化ってできます?」
『強化は無理だ、お前の魔眼はかなり特殊なのでな。我らの領域を超えている。代わりに新しい魔眼ないし、魔法を与えても良いが?』
魔眼は既に何種類があるし増やさなくていいかな。
となると魔法になるけど、私が使えない魔法となると割と少ない。
『魔法の無力化でどうだ?』
「もう持ってるんですよ、虚の魔眼」
試しに使ってみせる。
『ふむ、ならば魔眼の合成はどうだ?』
「できるんですか!」
それは欲しい!
魔眼を毎回切り替えないといけないから大変だったの。
場合によっては、それで詰むなんてことがあるし。
『では、着装している時限定だが、魔眼の合成を可能にしておこう』
やったね、戦闘でしか魔眼なんて使う事ないだろうし、大した制限じゃないしね。
「それでは、私は帰りますねー」
『呼び出して済まなかったな。向こうではさほど時間は経過していないから、気をつけてくれ』
それは逆に助かるかな。
『エルフィーリア、それがお前の精霊名となる。名乗るタイミングは任せる。真名としての縛りはない、安心するがいい』
そんな言葉を聞きつつ私は改めて、黒姉さんのところに向かった。
それにしても、王の皆さん暇なのかな?
最初はからかってくるし、その後はフランク過ぎるし、急に王みたいに振る舞うし。
まぁ、気にしても仕方ないよね。
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