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第二幕

勇者と言う危険毒物

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リリアナ様を連れてやってきたのは、公国 ミルドレア
アルディスと同じ方針で国を動かしているはずの国である。
はずのね。

「リリアナ様、本当にここでいいんですか? 城にたどり着く前に何回慰み者になるつもりです?」
そこら中で、犯罪が起きている。
強盗しかり、強姦しかり、殺人しかり。
「……城までお願いします。無事なのかだけ知りたいのです」
「間違いなく、無事とは程遠いだろうさ」
そんな黒姉さんの言葉と共に、歩いて城に向かう。
誤認のおかげでバレないしね。
「それにしても、この誤認ってやつは、便利だね」
「そうでもないですよ? 目的の効果を発揮させるために何度も重ねて掛けないといけませんし」
例えば今の状況なら、不審と思えないって誤認を掛けて、その上に気にならない、意識しない、見えてない。
こんな感じである。
召喚された時にあんなにも上手くいったのは、状況がお互いに違和感を感じにくかったから。
補正が良い仕事しました。
「最大の弱点として、サンクチュアリを発動されると魔力が霧散して効果が解けます」
「ん? だったらなんでアルディスの城で発動できたんだい?」
あれ? そう言えば何で発動したんだろ?
「愛菜様の生来スキルは相手に掛けるだけなのではなく、自分を変化させる魔法でもあるからでしょう」
「そう言えば、そういう風に使ってましたね。あの時、1人でしたし」
私自身をそういう風に認識させる存在に変化させる。
強化魔法の1種。
自分の中だけで完結するからサンクチュアリは効かないね。
やばい、チート過ぎる。
あっ、てことはあの時、やり方次第でもちょっと簡単に、いやだめだ、あそこまでやったから落ち着いたんだ。
私、グッジョブ。
「無駄話してたら、到着ですね」
うん、勇者に占領されてるね。
「おや、客人かな」
「いえいえ、お構いなく」
誤認の方向性を変える。
どう変換されたのか分からないけど、すんなり謁見の間に到着である。
さて、本来こんなとこに座りっぱなしなんてありえないけど。
普通にいるね。
執務室で仕事しなさいよ。
「何者だ!」
「……かつての王はどちらに?」
王族ならではの話し合いとかあるかもしれないから無視してと。
周囲を見るに、勇者で固めてあるね。
あれだね、貴族を滅ぼしたかな?
ここの貴族は、いい人達のはずだけど。
来るまでの間で、まともな状態の場所はなかった。
王都周辺とその外とで、酷い差がある。
まぁ、子供がどうにか国の真似事をしようとしたら、こうなるよね。
範囲を狭めるしかない。
「愛菜様、わたくしここに住みます」
頭おかしくなったかな?
「リリアナ様? 正気ですか?」
「はい! 愛菜様もどうぞここに移住してくださいな。陛下の元で新たな時代を作っていきましょう」
洗脳に近いかな。
思考判断を奪っているわけじゃないけど、正常な判断をしているわけじゃない。
「アイナ、どうする?」
「……放置で」
幸せならそれでいいじゃない。
1人2人なら連れて帰ってもいいけど、国をまとめて囲う気は無い。
「リリアナがここまで言っているのだ、せめて少し話をさせてくれないか」
「人間風情が、精霊姫に随分な口の利き方ですね? 消されても良いと」
乗ってあげる。
スキルを見極めたいしね。
「これは失礼を、人の王程度ではまだお目にかかることも出来ぬ存在とは、つゆ知らず」
「構いませんよ、それで話とは? 聞くだけ聞いてあげましょう」
なるべく偉そうに喋る。
黒姉さんが、必死に笑いをこらえてるから、かなり違和感があるはず。
いいもーん。
宮廷作法のスキル持ってるしー。
フェリーシア様と2人きりで遊んでたりする。
「私はこの世界を憂いておるのです」
「それで? 私になにかさせたいと?」
そろそろスキルが飛んでくるはず。
「いえいえ、私のモノになってくれたらそれで」
へぇ? 魔眼だねこれ。
面白い、どんな生活してたらこんなの発現するんだろ。
「魔王相手に、魔眼ですか? 甘い」
蝕の魔眼を発動して、魔眼の魔力を吸い尽くす。
「魔眼持ちだと! くっ、お前ら始末し──」
無理かなー、君ってば魔眼の力に頼りきってたでしょう?
ちゃんと、魔眼と併用して交渉術とか磨いておかないと、配下の不満が爆発するんだよ?
「リリアナ様、そこで呆然としているのは構いませんけど、どうします? 巻き込まれますよ?」
「愛菜様? そのお姿は」
あっ、誤認解けてる。
そりゃそうだ、向こうの魔眼に意識が全部占拠されたんだから、正しく戻せば違和感を感じるよね。
「はいはい、逃げますよー」
そうして、ミルドレアは陥落した。
幸い、別の勇者がちゃんとしていたらしく、今度はいい国になると思う。
攻めやすくて、簡単に手に入れられそうな、いい国に。
勇者に頼りすぎるとろくな事にならないね。
もう2つも滅んだよ?
どっちが魔王なんだか。
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