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第二幕
身体に精神状態が引っ張られるというあるある
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「戻る場所を間違えたという可能性は?」
『ありえないわ、間違いなくエルフの森があった場所よ』
となると、超広範囲に強烈な攻撃をした何者かがいるわけだ。
大きな樹は、黒姉さんが何かしたんだと思う。
外界との遮断が目的かな。
あれなら、間違いなくどんな攻撃でも傷つかない。
神樹の姫と言われるだけはあるよね。
本人は自然のままの大地にいる限りは死なないんだし。
「とりあえず、森を再生させましょう」
『そうね、せっかく居心地のいい森だったんだもの、元に戻しましょう』
そして、力を行使しようとした時、それは起こった。
「くかか、何やら小さき者がおったな、すまぬすまぬ、いつもの癖でな」
「あのね、僕は話し合いに来てるんだよ? せっかくの進展を台無しにしないでくれるかい?」
「慌てるな、死んでなどおらぬよ、ほれ」
そんな頭上での会話を聞きながら、正直逃げようか悩んでいる。
何せ、空を飛ぶそれは、私にとっても出来れば相手したくない程の強大な生物なのだ。
精霊王をも凌駕する事もある生物。
神として崇める者達もいるような危険であるが人よりも知能の高い生物。
それを、龍と呼ぶ。
目の前にいるのは、金の鱗を持つ龍であった。
見た目的にはワイバーンの親玉みたいな感じ?
龍は鱗の色で司る属性が分かる。
金の場合は光或いは聖属性。
先程の攻撃を見るに、聖属性であろう。
ホーリーブレスを規格外に威力を上げたら似たようなことが出来るはず。
「随分なご挨拶ですね? こちらは吹き飛んだ森を修復しているだけですのに」
そう、お陰様でせっかく発動した魔法が吹き飛んだ。
まぁ、森という概念があった場所に私の魔力が行き届いたから、あの程度ならノーダメージだけどね?
精霊姫って規格外側の生き物だし。
「申し訳ない、話し合いをしたい相手が引きこもってしまってね、こちらに気づいてもらうにはあれぐらいのことをしないといけなくて、ついいつも通りにやってしまったんだ。許して欲しい」
『仕方ないわね、いいわよ。それで、後ろの神樹をどうにかしたらいいの?』
えっ? ちょっとこのポンコツ何考えてるの?
そりゃ、あれ樹だからあなたのカテゴリーに入るけど、この胡散臭い人間に協力するつもり?
「ああ、できればお願いしたい。僕は話し合いをしたいだけなんだ」
『分かったわ、大丈夫わたくしに任せて』
「何ふざけた事言ってるんですか、ダメに決まって」
いるでしょうと繋げるはずの私の言葉は紡がれることはなかった。
『わたくしの邪魔をする子はいらないわ』
私は、正式に契約を交わしたはずの半身にズタズタに切り裂かれた。
そして──
「いらないなんて言っちゃダメだよ。この子はまだ気づいていないだけなんだ」
「触るな」
すんでのところで空間転移で私は逃げた。
「痛い、けどすぐ治る。これ回復魔法いらないかな」
それにしても、あの勇者やってくれる。
私ですら警戒心が薄れるぐらいの威力だなんて思ってなかった。
気づいていればあんなに簡単に奪われなかったのに。
ー説得ー
自らの意思に賛同を得てもらう事が容易になる。
※私は持ってないけど、生来スキルとして持ってるやつがいたら危険。
契約可能な存在なら、簡単に奪取できる。
とりあえず、ここから森を広げよう。
早くしないと、黒姉さんの努力が水の泡になる。
神樹による外界遮断は、あの勇者の声を届かせないためだったんだろうね。
あいつが居るだけで、精霊が全員敵になるかもしれない。
精霊王ですら、あんなにあっさりと連れて行けるんだから。
私との親和性とは何だったのか解放出来たら、みっちり説教である。
なんせ、私はそこまで影響なかったしね?
警戒心が薄れてしまったのはショックだけど。
私も契約可能な存在だもの。
死後の予約みたいな形で。
そんな私が、対抗できたのに、あっさり負けて。
イライラする。
でも、とりあえず森を接続する。
これで、私の領域。
まずは、先に黒姉さんに接触しよう。
あのポンコツ精霊王じゃ、私の森を奪い取るのに時間がかかるからね。
「無事に変質してるってことは契約はできたんだね、その精霊王がいないのは何故なのか聞きたくないところだけどね?」
「ご察しの通り、取られました」
黒姉さんに抱きついて少し泣いた。
うん、なんか情緒が落ち着かない。
精霊王との契約とはお互いを半身だと思い、共にこれからを生きていこうという、それだけ強い絆を示すはずだったのだ。
あんなにあっさり取られて悔しかったのだ。
「こっちも、似たようなものさ、ほとんどの精霊があっちに付いちまった。幸い、フェリの旦那はこっちにいるが」
「私、魅力なかったんですね…… あっさり契約を持ちかけられて、図に乗ってたんでしょう。フェリーシア様と精霊様の絆は強かったというのに」
黒姉さんの言葉に、ものすごく衝撃を受けてしまった。
だって、同じ半身のはずだ。
結婚と精霊王との契約は重さだけなら同じぐらい、強い信頼と絆の証のはずだ。
気づいてしまったら涙が止まらなかった。
「あっ、そういう事じゃなくてだよ、あー、泣かない泣かない。まったく、強い子だから油断してたよ。あんたからすりゃ、本当の意味で初の寄り添える相手だったね」
「だって、 私、ずっと1人だった、受け入れてもらえて、これからもずっと一緒のはずで、この世界にやっと本当の自分の居場所ができたって思えたのに、思い上がってただけだったなんて……」
とめどなく流れ出る思いに耐えられなかった。
みんなあれにやられてたんならまだ、我慢できた。
取り返そうと思えた。
でも、ここにいるみんなの精霊達は、また新たにみんなを選んだ精霊や、屈することなく残った精霊だから。
あの声に負けなかった絆の証だから。
「私の半身は、私じゃなくても良かったんですね」
「……そうだね、あれはまだ精霊王になったばかりだ。自分と親和性の高い相手がどれほどまでに珍しく、そして自分を求めてくれる相手なのか分かっていない。代わりなんてすぐ見つかる。そう思っていてもおかしくないよ。むしろ、あんたの方が珍しい。そうやって悲しめるほど精霊に想いを向けられる人間はなかなかいない。だから、ここにいる連中はあんたを気にかけてるんだ。泣いてばかりいると、こいつらが暴れ出すよ?」
オロオロと、周りに集まってきている精霊達は、ずっと話し相手になってくれてた子達だった。
つまり、あのスキルに惑わされなかった子達。
うん、1番の相手にはあっさり捨てられたけど、目の前の子達は私がどうなっても私を好きでいてくれるらしい。
前を向かないとね。
「すみません、取り乱しました。あのポンコツに説教するつもりだったのを忘れておりました。ぶん殴って、別れてやります」
「いや、そこまでしなくても、ほらあっちもどれだけ貴重か分かれば」
「黒姉さん? 私は希少な器だったからなんて理由でしか選ばれてなかった方が堪えますが?」
それ、結局私じゃなくてもいいじゃん。
「あー、随分ぞっこんだったんだね」
うん、私もびっくりした。
だから、ぶん殴って説教して契約解消である。
私以外の器探しを頑張ってもらおう。
まぁ、知人としてなら、その、ね?
「まあ、あんたが猛アプローチかける未来しか見えないから良しとしようか」
「なっ、そんなことしませんよ! その、本当に私以外の子と契約したら、その、泣きますけど」
「依存しすぎ、あんたも頭冷やせ」
ゲンコツされた。
すっごい痛い。
黒姉さんの華奢な身体から想像つかないぐらい痛い。
「痛いです。それより、あのクソ勇者のスキルに完全に対抗出来るのはどのぐらいいますか? 私ですら警戒心が薄れるぐらいの影響が出ましたので、戦闘に影響が出る人はこのまま待機していて欲しいんですけど」
「戦闘に出れるのは悪いけどほとんどいないよ、最初のブレスで大概戦線離脱してる」
え? あれぐらいならフェリーシア様が余裕で……
「フェリーシア様は?」
「フェリなら元気だし、大丈夫だ。こっちの被害が大きかったのは、戦闘中だったからだよ」
黒姉さんがずっと応対してくれてた理由もこれだった。
どうやら、私が契約のために離脱した後、すぐに休戦を破り攻めてこられたらしい。
これ自体はただの偶然だったのだろう。
もちろん、エルフが出てる以上、勇者であれどそう簡単には攻めれない。
一種の膠着状態に入っていた時に、ブレスが飛んできたようだ。
当然、目の前の戦闘に集中していた両陣営は壊滅的被害。
特に森を失ったため、黒姉さんが神樹を使い、籠城をしようとしたのだろう。
そこで、あのスキルだ。
関係性の薄い精霊達が一気に敵に周り、大混乱。
勇者側も自分の使い魔や従魔を根こそぎ持っていかれて敗走。
黒姉さんは神樹に積めれるだけ積めて籠城し、今に至るということである。
怪我の治療は済んでいるが、私と同じ状態になったのだろう。
それはそうだ、あのスキルに屈することなく共にある理想的な関係の味方が目の前にいるのだ。
泣きたくもなるし、心が辛くなる。
到底、戦えないだろう。
「こと、私達にとっては最悪の相手だったんですね」
「そうだね、あんたですらあれだけ取り乱すんだ。分かるだろう?」
私なんかより、遥かに長い間付き合いのある契約精霊が突然、牙を向くのだ。
お前などいらないと言わんばかりに。
私に至っては、直接言われている。
とてもじゃないが、立ち直れないだろう。
「……ところで、聖女含めた私の私兵は」
「察してるんじゃないかい?」
そっか、盟約すら越えられるんだ……
「ご主人様! 戻ってきてたんですね!」
あれ? いるね?
「見た目が違うのによく気づきますね?」
「私がご主人様に気づかないとかないから。戻ってきたなら言いたいことがあったの!」
だいぶ、グイグイ来るけどなにがあったの?
「私の仇が、あのいけ好かない勇者の仲間にいたの! あれ、私に譲って! 絶対に殺す」
「あいつ、単独じゃないんですね」
「当たり前でしょ! あいつ話し合いがどうのって、意味分からないスキル使って手勢を増やしたがってるのよ? この世界に平和をとか薄ら寒いこと言いながらやって来るんだから、確か手勢を増やして、現魔王の吸血鬼の軍勢に勝って、それを功績に自分たちの国を作るとかほざいていたわ」
それはまた、面白いことを。
そりゃ、クズ勇者は喜んで仲間に入るわよね。
だって、あのスキルがあれば魔族も軍勢に入れられ……
もしかして?
「フェリーシア様を呼んできて、あなたの復讐相手は取ったりしないから好きにしていいわ。まずは、こっちの戦力を確認したいから」
「ご主人様ならそう言うと思ったわ! 任せて! その代わりに間違ってあれを殺したら、延々とご主人様の横で泣くからね」
何それ怖い。
妖怪の類じゃないの?
『ありえないわ、間違いなくエルフの森があった場所よ』
となると、超広範囲に強烈な攻撃をした何者かがいるわけだ。
大きな樹は、黒姉さんが何かしたんだと思う。
外界との遮断が目的かな。
あれなら、間違いなくどんな攻撃でも傷つかない。
神樹の姫と言われるだけはあるよね。
本人は自然のままの大地にいる限りは死なないんだし。
「とりあえず、森を再生させましょう」
『そうね、せっかく居心地のいい森だったんだもの、元に戻しましょう』
そして、力を行使しようとした時、それは起こった。
「くかか、何やら小さき者がおったな、すまぬすまぬ、いつもの癖でな」
「あのね、僕は話し合いに来てるんだよ? せっかくの進展を台無しにしないでくれるかい?」
「慌てるな、死んでなどおらぬよ、ほれ」
そんな頭上での会話を聞きながら、正直逃げようか悩んでいる。
何せ、空を飛ぶそれは、私にとっても出来れば相手したくない程の強大な生物なのだ。
精霊王をも凌駕する事もある生物。
神として崇める者達もいるような危険であるが人よりも知能の高い生物。
それを、龍と呼ぶ。
目の前にいるのは、金の鱗を持つ龍であった。
見た目的にはワイバーンの親玉みたいな感じ?
龍は鱗の色で司る属性が分かる。
金の場合は光或いは聖属性。
先程の攻撃を見るに、聖属性であろう。
ホーリーブレスを規格外に威力を上げたら似たようなことが出来るはず。
「随分なご挨拶ですね? こちらは吹き飛んだ森を修復しているだけですのに」
そう、お陰様でせっかく発動した魔法が吹き飛んだ。
まぁ、森という概念があった場所に私の魔力が行き届いたから、あの程度ならノーダメージだけどね?
精霊姫って規格外側の生き物だし。
「申し訳ない、話し合いをしたい相手が引きこもってしまってね、こちらに気づいてもらうにはあれぐらいのことをしないといけなくて、ついいつも通りにやってしまったんだ。許して欲しい」
『仕方ないわね、いいわよ。それで、後ろの神樹をどうにかしたらいいの?』
えっ? ちょっとこのポンコツ何考えてるの?
そりゃ、あれ樹だからあなたのカテゴリーに入るけど、この胡散臭い人間に協力するつもり?
「ああ、できればお願いしたい。僕は話し合いをしたいだけなんだ」
『分かったわ、大丈夫わたくしに任せて』
「何ふざけた事言ってるんですか、ダメに決まって」
いるでしょうと繋げるはずの私の言葉は紡がれることはなかった。
『わたくしの邪魔をする子はいらないわ』
私は、正式に契約を交わしたはずの半身にズタズタに切り裂かれた。
そして──
「いらないなんて言っちゃダメだよ。この子はまだ気づいていないだけなんだ」
「触るな」
すんでのところで空間転移で私は逃げた。
「痛い、けどすぐ治る。これ回復魔法いらないかな」
それにしても、あの勇者やってくれる。
私ですら警戒心が薄れるぐらいの威力だなんて思ってなかった。
気づいていればあんなに簡単に奪われなかったのに。
ー説得ー
自らの意思に賛同を得てもらう事が容易になる。
※私は持ってないけど、生来スキルとして持ってるやつがいたら危険。
契約可能な存在なら、簡単に奪取できる。
とりあえず、ここから森を広げよう。
早くしないと、黒姉さんの努力が水の泡になる。
神樹による外界遮断は、あの勇者の声を届かせないためだったんだろうね。
あいつが居るだけで、精霊が全員敵になるかもしれない。
精霊王ですら、あんなにあっさりと連れて行けるんだから。
私との親和性とは何だったのか解放出来たら、みっちり説教である。
なんせ、私はそこまで影響なかったしね?
警戒心が薄れてしまったのはショックだけど。
私も契約可能な存在だもの。
死後の予約みたいな形で。
そんな私が、対抗できたのに、あっさり負けて。
イライラする。
でも、とりあえず森を接続する。
これで、私の領域。
まずは、先に黒姉さんに接触しよう。
あのポンコツ精霊王じゃ、私の森を奪い取るのに時間がかかるからね。
「無事に変質してるってことは契約はできたんだね、その精霊王がいないのは何故なのか聞きたくないところだけどね?」
「ご察しの通り、取られました」
黒姉さんに抱きついて少し泣いた。
うん、なんか情緒が落ち着かない。
精霊王との契約とはお互いを半身だと思い、共にこれからを生きていこうという、それだけ強い絆を示すはずだったのだ。
あんなにあっさり取られて悔しかったのだ。
「こっちも、似たようなものさ、ほとんどの精霊があっちに付いちまった。幸い、フェリの旦那はこっちにいるが」
「私、魅力なかったんですね…… あっさり契約を持ちかけられて、図に乗ってたんでしょう。フェリーシア様と精霊様の絆は強かったというのに」
黒姉さんの言葉に、ものすごく衝撃を受けてしまった。
だって、同じ半身のはずだ。
結婚と精霊王との契約は重さだけなら同じぐらい、強い信頼と絆の証のはずだ。
気づいてしまったら涙が止まらなかった。
「あっ、そういう事じゃなくてだよ、あー、泣かない泣かない。まったく、強い子だから油断してたよ。あんたからすりゃ、本当の意味で初の寄り添える相手だったね」
「だって、 私、ずっと1人だった、受け入れてもらえて、これからもずっと一緒のはずで、この世界にやっと本当の自分の居場所ができたって思えたのに、思い上がってただけだったなんて……」
とめどなく流れ出る思いに耐えられなかった。
みんなあれにやられてたんならまだ、我慢できた。
取り返そうと思えた。
でも、ここにいるみんなの精霊達は、また新たにみんなを選んだ精霊や、屈することなく残った精霊だから。
あの声に負けなかった絆の証だから。
「私の半身は、私じゃなくても良かったんですね」
「……そうだね、あれはまだ精霊王になったばかりだ。自分と親和性の高い相手がどれほどまでに珍しく、そして自分を求めてくれる相手なのか分かっていない。代わりなんてすぐ見つかる。そう思っていてもおかしくないよ。むしろ、あんたの方が珍しい。そうやって悲しめるほど精霊に想いを向けられる人間はなかなかいない。だから、ここにいる連中はあんたを気にかけてるんだ。泣いてばかりいると、こいつらが暴れ出すよ?」
オロオロと、周りに集まってきている精霊達は、ずっと話し相手になってくれてた子達だった。
つまり、あのスキルに惑わされなかった子達。
うん、1番の相手にはあっさり捨てられたけど、目の前の子達は私がどうなっても私を好きでいてくれるらしい。
前を向かないとね。
「すみません、取り乱しました。あのポンコツに説教するつもりだったのを忘れておりました。ぶん殴って、別れてやります」
「いや、そこまでしなくても、ほらあっちもどれだけ貴重か分かれば」
「黒姉さん? 私は希少な器だったからなんて理由でしか選ばれてなかった方が堪えますが?」
それ、結局私じゃなくてもいいじゃん。
「あー、随分ぞっこんだったんだね」
うん、私もびっくりした。
だから、ぶん殴って説教して契約解消である。
私以外の器探しを頑張ってもらおう。
まぁ、知人としてなら、その、ね?
「まあ、あんたが猛アプローチかける未来しか見えないから良しとしようか」
「なっ、そんなことしませんよ! その、本当に私以外の子と契約したら、その、泣きますけど」
「依存しすぎ、あんたも頭冷やせ」
ゲンコツされた。
すっごい痛い。
黒姉さんの華奢な身体から想像つかないぐらい痛い。
「痛いです。それより、あのクソ勇者のスキルに完全に対抗出来るのはどのぐらいいますか? 私ですら警戒心が薄れるぐらいの影響が出ましたので、戦闘に影響が出る人はこのまま待機していて欲しいんですけど」
「戦闘に出れるのは悪いけどほとんどいないよ、最初のブレスで大概戦線離脱してる」
え? あれぐらいならフェリーシア様が余裕で……
「フェリーシア様は?」
「フェリなら元気だし、大丈夫だ。こっちの被害が大きかったのは、戦闘中だったからだよ」
黒姉さんがずっと応対してくれてた理由もこれだった。
どうやら、私が契約のために離脱した後、すぐに休戦を破り攻めてこられたらしい。
これ自体はただの偶然だったのだろう。
もちろん、エルフが出てる以上、勇者であれどそう簡単には攻めれない。
一種の膠着状態に入っていた時に、ブレスが飛んできたようだ。
当然、目の前の戦闘に集中していた両陣営は壊滅的被害。
特に森を失ったため、黒姉さんが神樹を使い、籠城をしようとしたのだろう。
そこで、あのスキルだ。
関係性の薄い精霊達が一気に敵に周り、大混乱。
勇者側も自分の使い魔や従魔を根こそぎ持っていかれて敗走。
黒姉さんは神樹に積めれるだけ積めて籠城し、今に至るということである。
怪我の治療は済んでいるが、私と同じ状態になったのだろう。
それはそうだ、あのスキルに屈することなく共にある理想的な関係の味方が目の前にいるのだ。
泣きたくもなるし、心が辛くなる。
到底、戦えないだろう。
「こと、私達にとっては最悪の相手だったんですね」
「そうだね、あんたですらあれだけ取り乱すんだ。分かるだろう?」
私なんかより、遥かに長い間付き合いのある契約精霊が突然、牙を向くのだ。
お前などいらないと言わんばかりに。
私に至っては、直接言われている。
とてもじゃないが、立ち直れないだろう。
「……ところで、聖女含めた私の私兵は」
「察してるんじゃないかい?」
そっか、盟約すら越えられるんだ……
「ご主人様! 戻ってきてたんですね!」
あれ? いるね?
「見た目が違うのによく気づきますね?」
「私がご主人様に気づかないとかないから。戻ってきたなら言いたいことがあったの!」
だいぶ、グイグイ来るけどなにがあったの?
「私の仇が、あのいけ好かない勇者の仲間にいたの! あれ、私に譲って! 絶対に殺す」
「あいつ、単独じゃないんですね」
「当たり前でしょ! あいつ話し合いがどうのって、意味分からないスキル使って手勢を増やしたがってるのよ? この世界に平和をとか薄ら寒いこと言いながらやって来るんだから、確か手勢を増やして、現魔王の吸血鬼の軍勢に勝って、それを功績に自分たちの国を作るとかほざいていたわ」
それはまた、面白いことを。
そりゃ、クズ勇者は喜んで仲間に入るわよね。
だって、あのスキルがあれば魔族も軍勢に入れられ……
もしかして?
「フェリーシア様を呼んできて、あなたの復讐相手は取ったりしないから好きにしていいわ。まずは、こっちの戦力を確認したいから」
「ご主人様ならそう言うと思ったわ! 任せて! その代わりに間違ってあれを殺したら、延々とご主人様の横で泣くからね」
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