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第二幕

ある意味パワーレベリング

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しばらくして、私は目が覚めた。
「終わったわ」
「そうですか、ではもうしばらく続けますので、お願いします」
返答も待たずに、またバフをかける。
剣を振る。
倒れる。
回復されて目覚める。
これの繰り返し。
一日が終わるまで、繰り返した。
「少しは長持ちするようになりましたね。感謝します。また明日からもやってもらいますけど」
「痛くないのか、痛いのが快感なのかどっちよ?」
失礼な奴隷である。
「どちらでもありませんよ、私は勇者ですからね、スキルに応じて練度を上げる行為がバカみたいに効率がいいんですよ」
使ってるだけで、武神になれるぐらい気持ち悪いぐらい強くなる。
「だからって、あんな怪我をし続けてまでやる必要があるの?」
「はぁ? あるわけないでしょう。やりたいからやってるだけですよ。格上を倒せる奥の手をもっと強くしとこうと思っただけですし」
この人、もしかしてスキルを伸ばそうとしたことない?
「やらなくてもいいのにやる……」
「あなたの回復魔法のスキルも勝手に上がってますよ」
手軽に重症患者ができるから、実はwin-winである。
「なんでよ? スキルは儀式を通してしか上がらないでしょう? 上がるのは技術だけ」
「あー、なるほど、協会という組織は育成をする相手を選んでるんですね。勇者を警戒して」
つまり、妹さんは余程才能があったのだろう。
それこそ、勇者側の聖女と同じように。
だから、目立ってしまったのか。
自動蘇生オートリザレクション
使えるなら、欲しいよね。
「どういう事よ」
「本来スキルというのは、使えば使うほど練度が上がって、出来ることが増えます。が、回復魔法の場合、健康な人にかけても意味が無い。即ち今私がやっているように、死にかけの怪我を治療するという形を取らねばならない」
さて、それがどれほど辛いことか分かるだろうか。
どうやって怪我人を用意するかという話だ。
教会にいれば誰か必ず訪ねてくる。
だが、勇者に連れ出されれば別だ。
その辺の人間を痛めつけ回復させ、また痛め付ける。
これを繰り返し、心を砕く。
あとは従順に回復を行うヒーラーの完成だ。
教会はそれを恐れ、段階を踏ませることで、目立たないようにしていたのだろう。
「あなたの妹さんはオートリザレクションが使えたんでしょう。だから、教会としても育てたかった。そして、見つかった」
こう考えると、勇者は誘拐犯の集まりである。
死ねばいいのに。
何しても許されると思い込んでいるのだから仕方ないけど。
いつか、ボコボコにしよう。
「まぁ、そんなことはどうでもいいので、あなたもスキルが強化されるのでまだ付き合ってもらいますね」
「どうでもって」
「勘違いしているようですけど、私はあなたを許したつもりはありません。意味が分かりますか?」
1度たりとも謝罪されていない。
言葉だけの心のないものなんて必要ない。
「また明日からも、やってもらいます」

それから数日、精霊とお話しながら、ぶっ倒れながら練度上げに勤しんだ。

「短時間なら、もはや代償はなさそうですね」
「推測するに、身体の方が作り変わっていってるんじゃないかい?」
というのは、黒姉さんの言葉である。
有り得そうで怖い。
「てことは、私はお役御免ね」
「はあ? 次はあなたを鍛え上げるんですから、休ませませんよ」
ぶっ倒れるか、障壁が壊れるまでホーリーブレスを打ち続けろと命じて精霊とお話する。
ちなみに、ある程度摩耗したら障壁を新しくするので、時間内に破壊するか威力が跳ね上がるかしないと倒れるだけである。
頑張れ。
精霊との会話は、わらわら寄ってくる子達は小さな子供と会話するような感じで、時折やって来る人型を取る子達は丁寧に応対する感じ。
どちらも色々と教えてくれる。
ただし、契約はしていない。
際限なく契約させられそうだからね。
でも、力は貸してくれるみたい。
優しいんじゃなくて、うっかり私が契約するのを待ってる感じ。
子供みたーいと侮ってはならない。
「おーい、ぶっ倒れたぞー」
「あっ、じゃあ精霊さんたちお願いしますねー」
『わーい』
「油断も隙もないなー」
『ちっ』
悪態もつくのは面白いけど。
という事で、精霊術も練度上げしながら聖女を回復させる。
「起きましたねー、どうぞ続けてください」
「人でなし!」
はいはーい、頑張れー。
そんな充実した日々を過ごすこと1ヶ月ぐらい。
「やっと壊したわよ!」
「えっ? あと4枚ありますけど?」
順調である。
さすがに毎日、ここの往復だけだとつまらないので、エルフの皆さんとも交流してたんだけどね。
「アイナちゃーん、かくごー」
「戦技、斬」
「ちっ」
何故か、自分達も鍛えて欲しいと、わらわら来るようになったので毎回ぶっ飛ばしてる。
精霊がガードするのかダメージはまるでないみたいだから、気にしないで攻撃できるのはこっちとしてはやりやすいけど。
「アイナちゃんって人族にしては強いよねー、楽しい」
「本気の殺し合いだと、エルフの皆さんには到底勝てそうにないですねー」
アイナちゃんもエルフなんだけどと呆れられた。
私はまだ契約してないから、エルフの利点がありません。
「ちょっと! なんで枚数増えてるのよ! 1枚は壊したでしょ!」
無視無視。
実際の戦闘の時に卑怯だ! とか言っても意味ないし。
「それ壊せるようになったら、少しは勇者相手でも戦えるようになりますよ」
「……ご主人様そういう所優しいわよね」
優しくはありませんけどねー。
「復讐推奨してるので」
「ご主人様的に、私が勝てる見込みは?」
「今のペースなら4年我慢してください」
戦い方を教えて、それを身に付けてもらうまでにそれぐらいはかかる。
「1年でものにしたいって言ったら、やってくれるの?」
「……正気ですか? それ私と同じレベルでやるってことですよ?」
勇者としての補正のない人が勇者と同じレベルで成長しようとしているのだから、正気か疑いたくもなる。
「死ぬつもりでやってきたから、ご主人様は強いんでしょ?」
「……分かりました。それでも1年は無理です。私自身もやらないといけないことがありますので」
先延ばしにしていたことをやるしかない。
とかなんとか思っていたけれど、実質1年で全てを詰め込むことになった。
エルフの森に勇者の軍勢が攻めてきたのだ。
悠長なことをしていられなくなった。
代わりに、どう扱ってもいい敵ができたのは良かったかもしれない。
短期間で強くなるしか無くなったから。
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