勇者置き去りの案内人

雪蟻

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第2章

☆勇者ダンジョンへ

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勇者ダンジョンまでは、当然あっさりと着いた。
私の敵となるような魔物は存在しないのだから仕方ないことである。
「勇者、闇雲にスキルに頼りすぎです。最低限の力だけで倒しなさい。魔王はゴリ押しで倒せるような雑魚ではありませんよ」
言ったところで、よく分からない言葉で言い訳をしてくるだけなので、最早返答など聞いてはいないのですけどね。
「倒せればいいと思います」
「体力は無限では無いのですけれど、彼が倒れたら貴女が代わりに前衛をするのかしら?」
こっちの聖女もどきは、目の前の戦いしか見えていない。
疲弊するのを待って襲ってくるものもいるというのに危機感がない。
こちらは、女が3人もいるのだ、そういう考えを持つ下衆はいくらでもいる。
「まあまあ、倒せたし、あれぐらいなら余裕だから、エルシアは気にしすぎだよ」
勝手に死んでくれたらいいのですが、そうもいかないのが難しいところですね。
「初代様、そろそろ目的の場所となりますが、このまま向かいますか?」
ミアは私のことを初代様と呼ぶことにしたようで、不思議な気分になる。
そして、唯一の気の休まる相手だ。
「このまま向かいます、既に踏破済みのダンジョンですので、武器だけ回収すれば用済みです」
あまり私に許されている時間もありませんしね。
「えー、疲れたんだけど」
「余裕ではなかったの? ヒール」
悪いが貴方に構う気は無い。
さっさと済ませてしまおう。

勇者ダンジョンなんてものは、所詮私を保存するためだけのもので、試練でもなんでもない。
本当なら、私の封印を解いてしまえば終わりなのだ。
それでも、彼が使っていた武器はここに眠っている。
見た目は派手で見掛け倒しのような装備だが、かなり強力な武器であり、防具である。
光属性の魔法を増幅させる効果があり、魔法も駆使して戦う勇者には最適な装備とも言える。
派手すぎて私は嫌いですが。
そして、彼の武器と私が揃わないと、あいつは出てこない。
本来はそういう封印だった。
次の代の勇者が聖女の封印を解き、魔王を倒す。
この流れになるはずだったのだけどね、騙して私を殺そうとした分、復讐を恐れて封印されていることすら彼らは秘匿したのだ。
リリーシャがいなければ、永遠に私は封印されたまま、朽ちるだけだったでしょうね。
そうして、思考することに集中している間に、装備を手にした。
踏破済みなのだから、戦闘も何も無い。
ただの流れ作業である。
「さて、武器も揃ったことですから、もうひとつの勇者ダンジョンに向かいましょう。安心してください、既に踏破済みです」
リリーシャが先に踏破してしまっている。
正直、時代が時代なら彼女が勇者と祭り上げられていたことでしょう。
疲労を無視した強引な旅に、効率重視の迷宮攻略。
ある意味では、私を遥かに超える力を持っている。
「てことは、転移で行けるんだ。何このヌルゲー‪、笑える」
中途半端に知識が豊富だ。
やはり、げーむとやらは侮れない。
リリーシャが言うには、この世界で再現するのは不可能だと断言していたから、こちらで普及する脅威は気にする必要はないようなので、安心です。
「では、移動しましょう。魔王を倒して終わりです」
転移が起動し、私達は帝国にある勇者ダンジョンにたどり着いた。
「戦争となれば、これの奪い合いになりそうですね」
流石は帝国の王女。
危険性とその利点をよく理解していますね。
「安心なさい、魔王と決着をつければここは消え去ります」
今回でどのような結末になろうと、勇者ダンジョンは崩壊する。

帝国の勇者ダンジョンは一本道である。
と言っても踏破したからそう変化したのだが。
踏破するまでは、かなり複雑な迷宮なのだが、踏破することで封印が解かれ、本来の姿に変わる。
これは、魔王へと至る、玉座への道。
本来ならば、あいつが座っていて、出迎えるのだろう。
「よし、それじゃこれを付けてね、エルシア」
「なっ、勇者様、それは──」
やっぱり、結局こうなるのか。
そうして、私は以前と同じ、封じの手枷を付けられた。
スキル ─自在変化─
どんな装備であっても、それに適した形で自らの性質を変え、装備できる。
それが、私のスキル。
リリーシャとは違った効果を持つ、このスキルのせいで私は拘束系の魔道具も装備として認識してしまい、どんな低俗な拘束具でも正しくその効果を発揮するように装備してしまう。
私の最大の弱点です。
こうなれば最後、私は自由を奪われ人形のように何も出来なくなる。
そして、それと同時に今回の勇者は死んだ。
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