転生したし死にたくないし

雪蟻

文字の大きさ
上 下
28 / 48
第2章 学院の中でも準備です

夏休み

しおりを挟む
剣術大会が終わってからは、また串刺しの日々が始まり、勉強に調査に追われ、目まぐるしいまでに走り抜けていたら、夏休みというものが迫ってきていた。
学院の夏休みでは、学院生は二つに分けられる。
帰省組と居残り組である。
と言っても、部活動などをしていて残る必要があるだけであって選抜されるわけではない。
わたくしは帰省組である。
実を言うと残ってもよかったのだが、お父様から戻ってくるようにとの指示があったので、なるべく早く帰り着くように戻らねばならない。
もっと言うと迎えが来てしまうのでそれまでに準備を終えないといけない。
なので、ここのところ準備に追われていたのである。
どうにか片付いたので、後は当日までやることは無い。
「ティアラ様、どちらに向かわれるつもりで?」
「リアム様に呼ばれているのよ、やっと時間が取れるから早めに済ませておこうと思ったのだけど、何か問題でもあったかしら?」
やらないといけないことは全て終わらせたはずだけど。
「ここのところ、休息をとっていないように思えましたので、一度しっかりと休まれた方が良いかと」
「大丈夫よ、ちゃんと管理しているから。行ってくるわね」
確かに睡眠時間さえ削って、準備をしていたのだ。
休息を取るべきだと言われても、仕方ないだろう。
魔法も駆使して、少ない睡眠時間で効率的に身体を休めていたので、本当にちゃんと管理していたので問題ないが。
それよりも、リアム様である。
どのような理由でわたくしを呼んだのか分からないが、待たせるのはよろしくない。
アリアには悪いが、急がなくてはいけないのだ。

待ち合わせ場所はいつかの場所。
わたくしにとっては、毎日串刺しにされている場所。
「遅くなり、申し訳ございませんリアム様」
「いや、いきなり呼びつけたのだ。むしろ謝るのはこちらの方だよ、ティアラ嬢」
前回の時は、わたくしが常識外れの早い時間に行って待っていたが、今回はさすがに常識的な時間の範囲内で早く来たのだが、リアム様の方が早かったようだ。
「それで、どのようなご要件でしょうか」
「要件という程のものでは無いよ、あの時指摘してくれたおかげで、不意打ちとはいえ、勝てないと思っていた相手に勝つことが出来たよ、ありがとう」
「大したことはしていませんわ」
叱責した程度だ、あくまでその後はリアム様本人の努力によるものだ。
「そんなことはない、あの時指摘してくれたからこそ、腐ることなく前を向けたのだ、感謝している」
「では、今度は不意打ちでなく実力で勝ってみせてくださいませ」
「手厳しいな、やってみせよう。時にティアラ嬢は夏休みはどうされるのかな」
まさか、リアム様に夏休みの予定を聞かれるとは思っていなかった。
「父より、戻るように指示がありましたので、家に戻ります。その後の予定は決まっておりませんので、わたくしにも分かりませんわ」
何をするつもりなのか、はたまた何をさせるつもりなのかまったく予想がつかない。
「そうか、学院に残るのなら手合わせを願いたかったのだが、残念だな」
「わたくしでは、お相手は務まりませんわ」
なんでもありなら、魔法で防ぐことも出来る。
ただ攻撃となると、加減が難しいので手合わせではなくなってしまうのだ。
少しでも間違うと殺してしまうことになる。
「いや、ティアラ嬢だからこそ、うってつけだ。剣とは違う技で俺を圧倒してほしかったんだ」
成程、たしかにいずれ実戦となれば魔法が飛び交うことになる。
今実力を知っている相手に手合わせしてもらいたいという気持ちは分からなくはない。
「でしたら、今からわたくしの使う魔法を対処してみてくださいますか?」
「試験ということかな、分かったお願いするよ」
ある程度距離を取ってもらい、危なくないように手を加えた魔法を放つ。
「もしわたくしが本気でしたら、大怪我でしたわね」
「面目ない、分かってはいたがかなりの使い手なのだな」
魔獣が相手だと今のスピードではまるで歯が立たないので、どの程度まで通用するのか分からない。
素直に受け取っておくべきなのだろうか。
「そんなことありませんわ、実戦を想定するなら有効ではありませんもの」
結局、弱いのだろうと思うことにした。
「どこまでを想定しているのかは分からないが、ティアラ嬢の腕なら我国ならば、引く手数多なのは、間違いないだろう」
「お上手ですわね、でもそう言ってくださるなんて嬉しいですわ」
とりあえず、お世辞だろうと流しておくことにした。
正直、本当に自分がどの程度の位置にいるのかまったく分からないのだ。
比べる相手が強すぎて、本来どの程度が普通なのか分からない。

リアム様とはその後、取り留めのない話を少しした後に別れた。
「そう言えば、ソフィアはどうするのかしら?」
そんなことを思いながら1度部屋に戻ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

転生したので今度こそ選択を間違わずに暮らしたい

旦月双一
ファンタジー
 仕事と人間関係に嫌気がさしていたときついポロッと「異世界転生したいなあ」と言ってしまったのを新米女神に聞かれてしまい、なし崩しに転生させられてしまった。  そして更に気が付けば何故か大国の王女様になっていた。  しかも、誰かにばれたら幽閉か暗殺コースまである特大の秘密も持たされるなんて何の罰ゲーム?  「えっ?俺アラフォー男だったんだけど、なんで王子じゃなくて王女なの?政略結婚?男の相手なんて絶対に嫌なんですけど」  転生した今世こそ人間関係とお金に苦労せずに生活できるように、新米女神から貰った能力を使って(こそこそ)奮闘するお話。そして将来は権力(王家)から離れて暮らしたい!!

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

ある日、幼女が弟子にしろと言ってきたのだが

まさ☆まさお
ファンタジー
人間が元来持つ能力を超越する能力を【魔法】と呼び、その能力を持つ者、【魔法使い】が良くも悪くもその力を奮う世界。 世界中の国々は【魔法】が使える様になると、国に登録することを義務付けた。 登録された魔法使いは、力の暴走を防ぎ、確実に能力の制御を出来る様にする為として、学校に通うか、ランクの高い魔法使いに住み込みで弟子入りするか、どちらかを選択させられるのであった。 この話は、それまで普通の高校生だった少年が朝目覚めるとそんな世界にいて、なんやかんやと力を伸ばした少年の元に、幼い少女が弟子入り志願する物語である。

処理中です...