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第三部幸福のひと6
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~揺れ~
「確かに、私じゃ役にたたないわ」
予想に反して、船は嵐の中へ航海することになってしまいました。
叩きつける雨風と大きく揺れる船のなかで、ルエラはじっとしているのが精一杯でした。
船に慣れたとはいえ、それは穏やかな海でのこと。嵐となると話は別です。
豪雨と船を突き上げるようなひどい風、それと乗組員たちの怒鳴り合う声が聞こえてきます。
何もできない自分に、腹立たしいと思いながらもじっと座って外をみています。
私を産んでくれたお母さんも嵐のなか、船にいたのね
稲光がする黒雲を眺めながら、ふとそんなことが思い浮かびました。
そのことに想いを馳せた途端、頭に激しい痛みが走りました。ひどい頭痛です。
顔をあげることができず、思わず肘をつきました。
「ルエラ、大丈夫かい?」
様子をみにきたリクは、ルエラがうずくまっているのを見て走りよってきました。
「天候のせいだろう」
嵐に合い天候が変わることで、体調を崩す者は数多くいます。
すぐに薬を用意しようという夫の手をルエラはぱしりと払いのけました。
「自分のめんどうぐらい自分でみるわ」
こめかみを押さえながら、ルエラは薬棚に向かいます。
薬を飲んでおとなしく寝ているから、早く仕事に戻ってほしいと伝えます。
リクは狼狽しつつも頷いて、急いで外へでていきました。
以前、リクに教えてもらったように薬を湯に溶かして飲みます。
寝室の奥に大きめのソファがあるので、動きやすい衣服を身につけたまま、
毛布にくるまりました。
つづく
「確かに、私じゃ役にたたないわ」
予想に反して、船は嵐の中へ航海することになってしまいました。
叩きつける雨風と大きく揺れる船のなかで、ルエラはじっとしているのが精一杯でした。
船に慣れたとはいえ、それは穏やかな海でのこと。嵐となると話は別です。
豪雨と船を突き上げるようなひどい風、それと乗組員たちの怒鳴り合う声が聞こえてきます。
何もできない自分に、腹立たしいと思いながらもじっと座って外をみています。
私を産んでくれたお母さんも嵐のなか、船にいたのね
稲光がする黒雲を眺めながら、ふとそんなことが思い浮かびました。
そのことに想いを馳せた途端、頭に激しい痛みが走りました。ひどい頭痛です。
顔をあげることができず、思わず肘をつきました。
「ルエラ、大丈夫かい?」
様子をみにきたリクは、ルエラがうずくまっているのを見て走りよってきました。
「天候のせいだろう」
嵐に合い天候が変わることで、体調を崩す者は数多くいます。
すぐに薬を用意しようという夫の手をルエラはぱしりと払いのけました。
「自分のめんどうぐらい自分でみるわ」
こめかみを押さえながら、ルエラは薬棚に向かいます。
薬を飲んでおとなしく寝ているから、早く仕事に戻ってほしいと伝えます。
リクは狼狽しつつも頷いて、急いで外へでていきました。
以前、リクに教えてもらったように薬を湯に溶かして飲みます。
寝室の奥に大きめのソファがあるので、動きやすい衣服を身につけたまま、
毛布にくるまりました。
つづく
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