130 / 159
第三部幸福のひと3
しおりを挟む
~熱射病~
その日の晩、ルエラは熱を出して再び寝込んでしまいました。
いきなりお日様の光に長時間あたったので、熱射病になってしまったのです。
甲板で立ちくらみを起こしたルエラを乗組員が担ぎ上げて寝室に連れていきました。
寝室につながる書斎で、書類に目を通していたリクは驚きました。
自分たちが何かしてしまったのではないかと、萎縮しきっている乗組員に気にしないよう声をかけて医者に診せました。
「どうやら、はしゃぎすぎたようですね」
日光にあたるのは良いことだけど、短い時間から始めること。
甲板にでる時は、帽子をかぶるように伝えます。
冷たいタオルで、冷やして水分を取って休めば、すぐに良くなるだろうと笑いました。
「ありがとう。ドクター」
「お元気そうで何よりです」
ほっと胸を撫で下ろしたリクに頭を下げて、寝室をでていきました。
医師が扉をしめて立ち去ってから、リクはルエラを軽くにらみました。
「ルエラ?」
「ごめんなさい」
布団で顔半分を隠して、ちろりと視線だけリクに向けます。まだ熱い額に口づけて、
あまり心配かけないでくれとルエラの柔らかな髪を優しくすきます。
「もう少し気をつけるわ」
布団から真っ赤な顔で申し訳なさそうに言うルエラの手をリクは、そっと握ります。
熱帯びた妻の手は熱く、リクの手は少しひんやりしていたので、
ルエラは気持ちよさそうに目を細めました。
そのまま妻が小さな寝息をたてるまで、ずっと手を握り続けていました。
ぼんやりぼんやり、ランプのあたたかな灯りが室内を優しく照らしていました。
つづく
その日の晩、ルエラは熱を出して再び寝込んでしまいました。
いきなりお日様の光に長時間あたったので、熱射病になってしまったのです。
甲板で立ちくらみを起こしたルエラを乗組員が担ぎ上げて寝室に連れていきました。
寝室につながる書斎で、書類に目を通していたリクは驚きました。
自分たちが何かしてしまったのではないかと、萎縮しきっている乗組員に気にしないよう声をかけて医者に診せました。
「どうやら、はしゃぎすぎたようですね」
日光にあたるのは良いことだけど、短い時間から始めること。
甲板にでる時は、帽子をかぶるように伝えます。
冷たいタオルで、冷やして水分を取って休めば、すぐに良くなるだろうと笑いました。
「ありがとう。ドクター」
「お元気そうで何よりです」
ほっと胸を撫で下ろしたリクに頭を下げて、寝室をでていきました。
医師が扉をしめて立ち去ってから、リクはルエラを軽くにらみました。
「ルエラ?」
「ごめんなさい」
布団で顔半分を隠して、ちろりと視線だけリクに向けます。まだ熱い額に口づけて、
あまり心配かけないでくれとルエラの柔らかな髪を優しくすきます。
「もう少し気をつけるわ」
布団から真っ赤な顔で申し訳なさそうに言うルエラの手をリクは、そっと握ります。
熱帯びた妻の手は熱く、リクの手は少しひんやりしていたので、
ルエラは気持ちよさそうに目を細めました。
そのまま妻が小さな寝息をたてるまで、ずっと手を握り続けていました。
ぼんやりぼんやり、ランプのあたたかな灯りが室内を優しく照らしていました。
つづく
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる