116 / 159
第二部 はじまりは美しい29
しおりを挟む
~会話~
ルエラは、息を切らして駆けよってきた屋敷の主人にこっぴどく叱られました。
「屋敷から黙っていなくならないでほしい」
つばを飛ばさんばかりに怒鳴られて、ルエラは素直に謝りました。
「さあ、戻るよ」
ルエラに手をさしだします。おずおずと手を握るとしっかりと握り返されました。
そのまま小道をのぼり、屋敷へと向かいました。
屋敷へ帰ると皆がルエラのことを寝ずに待っていました。
緊張した顔が緩んで、安心したように息を吐きました。
「あの…ごめんなさい」
心配かけてと呟きます。それから、ほんの少しのお小言をもらい、
やわらかなソファにかけました。
あたたかいお茶をいれてもらって、人心地ついてから、
ルエラはぼつりぽつりと話始めました。
突然の自分の生い立ちに、驚き悲しかったこと。
自分の信じていたものが、がらがらと崩れ落ちていくようで傷ついたこと。
これから、いろんなことが変わってしまうのかと思って戸惑ったこと。
自分だけが知らなかったと思うと腹がたって仕方なかったこと。
「それに、やっぱり実感がわかないの」
いくら本当のことを話されても、すぐに受け入れることは、難しいのだと伝えました。
「うん。そうだね。」
お父様は、ゆっくりと頷きます。ルエラにとって、お父様はお父様です。
その気持ちは、一生揺るがないように思えました。
それから、はっとしたように屋敷の主人の方を見ます。
「あの…おじ様が、私の本当のお父さん…よね」
ちゃんと確認していなかったように思えたので、小首を傾げて聞きました。
屋敷の主人は、あっけに取られたような顔をして、それから思い切り吹き出します。
「今さら、それを聞くかなぁ」
ややあって、ノエルがくすくす笑い始めました。
笑いは、波紋のように広がって、ルエラをのぞくみんなが笑います。
ルエラは、顔を真っ赤にしてから、ふてくされるようにして、そっぽを向きました。
窓からは、白々と夜が明けていくのが見えます。
いつの間にか、夜通し話し込んでいたのかと思うと、ルエラは少し嬉しくなったのでした。
つづく
ルエラは、息を切らして駆けよってきた屋敷の主人にこっぴどく叱られました。
「屋敷から黙っていなくならないでほしい」
つばを飛ばさんばかりに怒鳴られて、ルエラは素直に謝りました。
「さあ、戻るよ」
ルエラに手をさしだします。おずおずと手を握るとしっかりと握り返されました。
そのまま小道をのぼり、屋敷へと向かいました。
屋敷へ帰ると皆がルエラのことを寝ずに待っていました。
緊張した顔が緩んで、安心したように息を吐きました。
「あの…ごめんなさい」
心配かけてと呟きます。それから、ほんの少しのお小言をもらい、
やわらかなソファにかけました。
あたたかいお茶をいれてもらって、人心地ついてから、
ルエラはぼつりぽつりと話始めました。
突然の自分の生い立ちに、驚き悲しかったこと。
自分の信じていたものが、がらがらと崩れ落ちていくようで傷ついたこと。
これから、いろんなことが変わってしまうのかと思って戸惑ったこと。
自分だけが知らなかったと思うと腹がたって仕方なかったこと。
「それに、やっぱり実感がわかないの」
いくら本当のことを話されても、すぐに受け入れることは、難しいのだと伝えました。
「うん。そうだね。」
お父様は、ゆっくりと頷きます。ルエラにとって、お父様はお父様です。
その気持ちは、一生揺るがないように思えました。
それから、はっとしたように屋敷の主人の方を見ます。
「あの…おじ様が、私の本当のお父さん…よね」
ちゃんと確認していなかったように思えたので、小首を傾げて聞きました。
屋敷の主人は、あっけに取られたような顔をして、それから思い切り吹き出します。
「今さら、それを聞くかなぁ」
ややあって、ノエルがくすくす笑い始めました。
笑いは、波紋のように広がって、ルエラをのぞくみんなが笑います。
ルエラは、顔を真っ赤にしてから、ふてくされるようにして、そっぽを向きました。
窓からは、白々と夜が明けていくのが見えます。
いつの間にか、夜通し話し込んでいたのかと思うと、ルエラは少し嬉しくなったのでした。
つづく
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう
白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。
ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。
微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる