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第二部はじまりは美しい2
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~嵐の夜~
ある夜の晩でした。“美しいひと”は、いつものように、
寝巻きに着替え、ベッドに入る準備をしていました。
薄暗い部屋の中、ランプの炎がゆらゆら揺れています。
“美しいひと”の部屋には、たくさんの立派な家具がありました。
いつもぴかぴかに磨かれています。
壁紙も窓ガラスもカーテンにも塵ひとつありません。
ぴかぴかに磨かれた家具は、柔らかな炎に包まれるかのように、
ぼんやりと優しく照らしだされています。
あたたかいベッドのシーツは、いつも取り替えられます。
誰が自分のシーツをかえてくれているのか、
“美しいひと”は、そんなことちっとも考えたことがありませんでした。
だって、考えなくても“美しいひと”の前に、なんでも
でてくるからです。
さらさらとした絹糸のような金の髪をすいてから、
“美しいひと”は、よく手入れされた自分の爪をながめます。
明日は、一体どんな1日になるのかしらとぼんやりと思ったところで、
窓ガラスが大きく揺れました。
今朝から風が強く、雨が降っていました。
港町はそれはそれは、騒がしくありました。
雲をみて、天候を予測する人が、『嵐になるかもしれない』と
言いましたので、港町の人々は嵐に備えていました。
外は騒がしくあるものの、“美しいひと”は、
ふうん、と思っただけでした。
“美しいひと”の住んでいるお屋敷は、とても大きく立派です。
ちょっとやそっとのことでは揺らぎません。
なにより小高い丘に建っていますので、安全でした。
夕方から雨足が強くなり、風も強くなってきました。
夜には嵐がくることを誰もが予感しました。
絹の寝巻きに身を包み、あたたかなランプの炎のつく
部屋の中から外を眺めます。
だんだんと強くなってくる雨と風を眺めながら、
“美しいひと”は、大きなあくびをして、ベッドの中へと
潜り込みました。
“美しいひと”が寝入ってしまったのを見計らったかのように、
召使いが部屋の中にそっと入ります。
“美しいひと”を起こさないように気をつけながら、
そっとランプの炎を消しました。
つづく
ある夜の晩でした。“美しいひと”は、いつものように、
寝巻きに着替え、ベッドに入る準備をしていました。
薄暗い部屋の中、ランプの炎がゆらゆら揺れています。
“美しいひと”の部屋には、たくさんの立派な家具がありました。
いつもぴかぴかに磨かれています。
壁紙も窓ガラスもカーテンにも塵ひとつありません。
ぴかぴかに磨かれた家具は、柔らかな炎に包まれるかのように、
ぼんやりと優しく照らしだされています。
あたたかいベッドのシーツは、いつも取り替えられます。
誰が自分のシーツをかえてくれているのか、
“美しいひと”は、そんなことちっとも考えたことがありませんでした。
だって、考えなくても“美しいひと”の前に、なんでも
でてくるからです。
さらさらとした絹糸のような金の髪をすいてから、
“美しいひと”は、よく手入れされた自分の爪をながめます。
明日は、一体どんな1日になるのかしらとぼんやりと思ったところで、
窓ガラスが大きく揺れました。
今朝から風が強く、雨が降っていました。
港町はそれはそれは、騒がしくありました。
雲をみて、天候を予測する人が、『嵐になるかもしれない』と
言いましたので、港町の人々は嵐に備えていました。
外は騒がしくあるものの、“美しいひと”は、
ふうん、と思っただけでした。
“美しいひと”の住んでいるお屋敷は、とても大きく立派です。
ちょっとやそっとのことでは揺らぎません。
なにより小高い丘に建っていますので、安全でした。
夕方から雨足が強くなり、風も強くなってきました。
夜には嵐がくることを誰もが予感しました。
絹の寝巻きに身を包み、あたたかなランプの炎のつく
部屋の中から外を眺めます。
だんだんと強くなってくる雨と風を眺めながら、
“美しいひと”は、大きなあくびをして、ベッドの中へと
潜り込みました。
“美しいひと”が寝入ってしまったのを見計らったかのように、
召使いが部屋の中にそっと入ります。
“美しいひと”を起こさないように気をつけながら、
そっとランプの炎を消しました。
つづく
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