はじまり

天鳥そら

文字の大きさ

大中小

63 / 159

はじまり６４

しおりを挟む

～資質～

「他の目的とは？」

用心深げにロイを見るシキに、穏やかに微笑みました。

「我々のことを信じるものが、どれくらいいるのかということ」

「私たちと協力してくれる、コンタクティとの接触」

息を飲むような雰囲気の後、静かな声が響きます。

「どうして我々を？」

今までの話を聞きながら、なおも冷静さを失わないソウに、
ルナが嬉しそうに手を叩きました。

「やっぱり」

はしゃぐ妻に落ち着くよう諭して、ロイが口を開きます。

「嵐の現場でのあなた方の対応です」

ソウは、嵐の中で船が破損し、港に甚大な被害が
でているなか、できうる限りの救助の指示を出しました。
津波に備えての避難への誘導、生存者の素早い安否確認と
重軽傷者を急いで病院へと運びます。
その後無残な瓦礫の後を人々が困らないよう、
まわりの者に協力を願いました。

そのほかにもどこから、手に入れたのか、食料や飲み物を
避難してきた人の手にわたるよう指示します。
うろたえる町の人が、よく知りもしない彼の言葉に従う
様子は見ていて壮観でした。

何よりも常に落ち着いて、先々の見通しをたてて
動いています。

「そういうポジションにいましたから」

照れたような口ぶりのソウから、今度はシキへと
視線を移しました。

シキは嵐の現場にはいなかったものの、港に降りて、
あたりを見渡します。
それぞれが、安全であることを無意識に確認していたのを
ロイは見ていました。
それから、避難所でルナがおなかを抱えて苦しんでいたのを
見つけて声をかけました。
緩い陣痛がルナを襲っていたものの、出産予定日は
まだ先でした。シキと話しているうちに、苦しみ始めました。

どこも重傷者の手当てで手がいっぱいなのを見て、
自分の屋敷に来るよう誘います。
来る間に、産気づき、到着早々出産したのでした。
けが人の手当てに借り出されていた彼女に付き添っていた医師も、
あとから、追いつき、胸をなでおろしたものです。

「クローディアが出産したばかりでしたから」

自然に、妊婦に意識がいったのだといいます。
その後は、ソウとシキと連係プレーをとり、ロイ自身も
加わって町の人たちと協力しました。

「とてもね、光ってみえたんだよ」

ロイは、簡潔に感想を述べます。
それから、今度はクローディアの方をみて微笑みました。

つづく

しおりを挟む