はじまり

はじまり４４

～隠密～ 


クローディアとシキは、一曲踊った後、祭りの群集を
抜けました。 

『首尾よく見つけたら、人気のない路地裏に馬車が用意してあります』 

『私がいるので、そこまで案内してください』 

一緒についてきてくれるよう頼み、シキの手を引いて、 
目印の路地裏を曲がり、ソウが乗っている馬車を見つけました。 
馬車の扉を叩くと、窓からソウが顔をのぞかせます。 
シキに向かって、ぺこりと頭を下げると乗るように馬車の扉を 
開きました。 

「これは一体？」 

クローディアとソウの顔を交互に見て、少し警戒するように 
瞳を光らせました。 

「お願い、信じて」 

薄いブルーの瞳がまっすぐに自分の瞳をのぞきこみます。 
クローディアの必死な様子に、肩の力を抜いて、そのまま乗り込みました。 
二人が乗り込んだのを確認して、馬車が動き出します。 
クローディアは、シキの隣に座り強く手を握りました。 
二人の向かい側に、ソウが無表情で座っています。 
シキはクローディアの手を握り返して、そっとソウの顔を伺います。 

ソウは、ほんの少し微笑んでシキに話しかけました。 

「お会いしてほしい方がいるんです」 

帰りは、無事に靴屋までお送りしますとの言葉に 
うなづいて、そのままクローディアの頭にもたれかかかりました。 


つづく