本にまつわるエトセトラ

再読して癒される

　
　本を1回読んで終わりという場合もあれば、同じ本を繰り返し読むということもありますね。

　幼少期、小学生時代の私は、気に入った作品をひたすら繰り返し読む子でした。気に入ったシーン、気に入ったセリフ、覚えているのではないかというぐらい読み込んでいました。

　それが、中学生、高校生と年を経るにつれて、本の世界がぐんと広がりました。中高時代は、どちらかというと漫画を読む方が多かったのですが、本も読んではいました。

　世の中には、なんてたくさんの本があるんだろう!

　どれもこれも、ぜんぶ読まなくてはいけない気がして、生き急ぐようにして読んでいた時期がありました。ラノベや文学、文芸のような物語に限らず、ビジネスや健康、歴史など、仕事に役立つなどと聞けば、読まなければいけない気がして読んでいました。

　それも楽しいんですよね。

　広がっていく世界、深まっていく知識。

　もっと遠くまで旅したい。

　もっと深くまでもぐっていきたい。

　どこまでもどこまでも、という気持ちがありましたので、他人とくらべたら少ないかもしれませんが、自分にできる範囲で読んでいました。

　それが、ちょっとづつ落ち着いて、また読み直したくなる時期が訪れます。

　1冊まるまる読み直すわけではなくても、気に入ったシーンだけだったとしても、一瞬にして、楽しかった心地よさが身体を包んでいきます。

　前に何度か読んでいるので、読むスピードも早いです。

　前に何度か読んでいますが、新たな発見があります。

　前に何度か読んでいるので、焦らずゆっくり読み進められます。

　楽しいですよね。シリーズものになりますと、好きな巻だけ抜き取ってじっくり読みます。

　ただ、自分が大人になってしまったことで、前には見えなかったことが見えるようになることもあります。

　ヒーローを讃える物語が流行っていたころは、それほど気にせず読み進めていましたが、今では、ヴィラン(あくやく)にも理由があり、彼らなりの信念や生き方があるという話です。

　ディズニーアニメーションでも、ヴィランにスポットライトをあてたお話がありますね。ヴィランに共感する場合もあるでしょうか。

　ヒーローやヒロインの方が悪役に見えたりと、私たちが成長すれば複雑に物語と向き合うようになります。

　本の内容は変わっていませんが、私たちの心は変わります。

　ストレートに楽しむことはできなくても、世界が広がって、より奥深く楽しめるようになったのかもしれません。

　ただただ楽しんでいた時代から、より深く物語の森に足を踏み込めるようになったのでしょう。

　もちろん、最初に読んだ時と同じように楽しめる場合もあります。

　また読みたいと思える本に出会えるっていいですね。