本にまつわるエトセトラ

天鳥そら

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もどってくる本

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 本を購入するとき、特に紙の本を買うとき、ちょっとした葛藤があるかもしれません。この本が面白いかどうか、金額に見合った価値があるか、ずっと手元に置いておきたいと思う本か。

 その葛藤に勝った本が手元にあるわけですが、その本をいつまでもいつまでも手元に置いておけるかはわかりません。紙の本であれば家の中にスペースが必要になります。お屋敷でもない、広い部屋でもない場合、置ける冊数は限られてきます。

 ひとりであれば、本に埋もれて生活することもできますが、ふたり、さんにん、子どもがいるとばればそうもいきません。ましてや、猫や犬、鳥と暮らしている場合、本をおもちゃにされる未来も見えてきます。同居者の性質により、本を厳重に管理する必要があります。

 本が好きでも無限に買うわけにはいかない、買いためた本はどこかで手放す決心をしなければならない。

 現在は、2024年2月25日です。春が近づいてきたからでしょうか。断捨離やお掃除、整理整頓の文字が浮かび、実際に手放すかもしれない雰囲気になってきました。学生さんや引っ越しが決まっている方は、なおさらでしょう。お気に入りとまではいかないものの、自分を支えてきてくれた参考書やちょっとした読み物があるかもしれません。

 ずっと取っておきたいけど取っておけない。何もかも持っていけない。手元からこぼれ落ちた本が、メルカリやアマゾン、古本屋さんに流れていきます。

「誰かに大切にされるといいな」

 そんな想いのこもった本たちが、実際に、誰かの手に渡っていきます。そして、手元に残り続けた本は、自分のバイブルのようなものかもしれません。自分を支え、励まし、人生の一部となった本たちです。

 それほどまでに大切な本を手放す決断をすることがあります。本の劣化と破損が著しい場合です。それでも古書店で引き取ってくれる場合もあれば、自分で修理を施して手元に置く選択肢もあります。

 私は私にとって大事だと思える本を手放しました。


 もう、良いだろうと思いました。何度も何度も読んだから、満足したから、もう手放しても大丈夫だろうと思いました。

 それなのに、心に残り続けているんですよね。

 また読みたい。

 また会いたい。

 あの本を手にしたい。

 何年も経ったころ、古本屋でみつけました。同じ著者、同じタイトルです。以前、持っていた本とは違いますが、もう一度手元に置きたいと思いました。手に取ったとき、心の奥から手が伸びたような気がしました。

 なつかしく、やさしい、うれしい、あたたかい感情がよみがえりました。本を手放してから何年も経っていましたが、同じ著者、同じタイトル、だけど以前とは違う本を手元に置いています。

 自分にとって大切な本はもどってくるんでしょうね。

 でも、できるなら、次は手放さずにいたいです。

 もし、カバーが取れたら自分でカバーを作ろう。

 本の修繕法を学んでも良いかもしれない。

 そんなことを考えています。
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