本にまつわるエトセトラ

タイトルにだまされた！

いつもは、本の中身を確認するのに…。

今日に限って、中身を確認せず購入してしまった。

急いでいたから、そのままレジに直行してしまった。

ジャンルからしてこういうストーリーだろうと思い込んでしまった。

こんな経験はありませんか？

私はあらすじや、解説を読んでイメージを膨らませてから本を家に持ち帰るので、こういった経験は滅多にありません。ですが、昨年人に勧められた著者の本を見つけ、中身を確認せずに図書室で借りてしまいました。

原作：安房直子さん
タイトル：『ハンカチの上の花畑』

ジャンルは童話で、彼女の作品は絵本でも知っていました。どこか不思議な空気のある作品だったことを思い出し、きっとかわいいお話だろうと思って借りました。時間がなかったことも、中身を確認しなかった原因の一つです。

ストーリーは郵便配達をする男性が、古くてもう人の住んでいないと思う酒屋に手紙を届けるところから始まります。誰も住んでいないと思った酒屋にはおばあさんが一人住んでいました。
昔は栄えていましたが、店が傾いてしまい、息子が店を立て直すため別の場所で働いているというのです。
手紙は息子からのものでした。

おばあさんは大変喜び、配達員にお酒をふるまいます。このお酒は小人がつくる不思議なお酒。郵便の配達員にこの小人を譲ってしまいます。

古くておばあさんが一人しか住んでいないという家屋は怖いものがあります。入ってはいけないといわれた洞窟の奥に、ろうそく1本で進んでいくような気分です。なぜでしょう。もう生きて出てこられないような雰囲気を、私は読みながら感じ取りました。

そしてこの小人がお酒をつくるところを誰にも見せてはいけない。どんなに美味しくてもこのお酒でお金を稼ぐようなことをしてはいけないという約束ごとがあります。
さらに、いつかは返してほしいというおばあさんの願いに、首を縦に振りました。

はい、このおばあさんとの約束ごとをすべて破ってしまいます。

約束を破ったら大変な目に合うよというおばあさんの忠告に恐れおののきながらも、怖いことが何一つ起こりません。それがまた怖い。不思議なものが絡んでくるとき、約束ごとというのはとても重要なものだという印象があります。

もしかして、ホラーだったんだろうかと私はドキドキしながら読みました。

子供の読み物だ。童話だ。ほのぼのだと思って手にしたお話が、冷たい手でそっと触れるような怖いお話もあるからです。こういう受け止め方をしたのは私だけではないようで、悪い結末を予想してしまったとレビューでこぼしている方がいました。

自分が子供だったらどうだろう。次々に約束ごとを破ってしまう主人公に、思わずやめてと叫んでしまったかもしれません。

ラストは詳しく語りませんが、大丈夫。何事もなく元通りの生活を送ります。


自分の予想と違ったけれど、ちょっとした冒険をしたような気分でした。