ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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約束

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 ドゥケにしがみついて泣くカッセルの姿を見て、私は、みっともないとか情けないとか不様とか、そういう感じは受けなかった。それよりもただ彼がどれだけ真剣なのかが伝わってきただけだった。だから、胸が締め付けられるような気がしたんだと思う。
 それでも、私は言った。
「カッセル。あなたの負けだよ。私達は魔王を倒す。バーディナムに対して不信感があるのは私もだけど、でも、あなたの言うことが正しいのかどうか私には分からないから、私は私の信念を貫く。魔王を倒すよ」
「……」
 カッセルは応えなかった。応えずに、ただ、悔しそうに唇を噛みしめていた。血が出るくらいに。
 その時、私達の上を何かの影がよぎった。ハッと見上げると、そこには巨大な翼を広げたものが三つ。
 …じゃない? その後ろにさらにいくつもの影が。
「ドラゴン……?」
 ドラゴンだった。ドラゴンが何頭も空を横切っていく。渓谷の方へ向かって。
「ドラゴンが、どうして……?」
 呟いた私の視線の先で、ドラゴンたちは一斉にブレスを吐きかけた。それは魔王の体を包み、焼き焦がす。しかし、それでも魔王は倒れなかった。
「ドラゴンも魔王を倒そうとしてるのか…?」
 今度はドゥケが呟いた。それから自分にしがみついたカッセルに視線を下ろして、
「…バーディナムを倒そうとするのなら勝手にすればいい。だが、俺は魔王を倒す。それだけだ」
 と告げつつ、カッセルの手を振り払った。支えを失ったカッセルは地面に突っ伏して倒れる。
 そんな彼にはもう構うことなくドゥケが私とリデムに向かって言う。
「じゃあ、行こうか」
 私とリデムも黙って頷いた。
 バーディナムと魔王とドラゴンが戦ってるところに飛び込むなんて正気の沙汰じゃないって分かってるのに、私は少しも怖くなかった。キッと唇を固く結んだ彼の横顔を見てると、不思議とホッとする気がした。
『そうか…私はたぶん、ドゥケのことが好きなんだ……』
 なぜか、こんな時だというのにそんなことを思ってしまった。そして彼とこうして一緒に戦えるのが嬉しいって……
「ドゥケ。私一人でアリスリスにひっぱたかれるのは嫌だから、あなたもちゃんと一緒にひっぱたかれてね」
「…どうしてそんな話になってるんだ……?」
 私の言葉に、彼は苦笑いを浮かべながら応えてくれた。でも、
「でも、そういうことなら仕方ない。ひっぱたかれてやるさ。何度でもね」
 私とドゥケのそんなやり取りを、リデムが嬉しそうに微笑みながら見てたのだった。

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