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相談
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私はさらに考えた。
だけどはっきりとした結論は出ないまま朝になってしまって、ほとんど一睡もしないで点呼の時間を迎えてた。
と言っても、昨日、みんなして鍛錬に張り切り過ぎたことでライアーネ様から、
「明日は一日、休養日とする! しっかりと体を休めて疲れを取れ」
って言い渡されてしまったそうで、点呼の後は休息の時間になってしまった。
だから私は部屋に戻って、かつての宿舎と同じように同室になったソーニャに、
「あの…」
と話し掛けようとした。相談する為に。
……って、あれ…? 私、今、何を話し掛けようとしたんだっけ……?
「どうしたの? ヒドイ顔。ちゃんと寝た?」
「ああ…うん、なんだかよく寝られなくって…」
「あ~、それは私も同じかな。なんか焦っちゃって」
「うん、そうだよね。ここでこんなことしてていいのかなって」
「まったくだよ。早くドゥケとポメリアのこと助けに行きたいのにさ」
「ホントホント」
……おかしい。話したかったことってこんなのだったっけ?
なんだかひどく頭が混乱してる気分。大事なことを忘れてる気がするのに思い出せない。
「…ごめん。なんか頭が痛いから、今日は寝るね…」
「そっか、寝られるんだったら寝た方がいいね。私も今日は本でも読んでゆっくりするよ」
なんて、『違う、こうじゃない』と思いつつ、私はベッドに入って横になり、ほとんどそれと同時に眠りに落ちてしまったのだった。
「そろそろ昼食だけど、どうする? 起きられる?」
ソーニャに声を掛けられて、私はハッと目が覚めた。寝過ごしたみたいな気分になって焦ってしまう。
それでも体がすごく重く感じられて、起き上がるのが辛かった。
「辛いんだったら無理しない方がいいよ。昼食は私が持ってきてあげる」
「ありがとう…」
申し訳ないなと思いながらも甘えさせてもらった。
すると、ソーニャが部屋を出て行ったのと入れ替わるようにして入ってきたのが、
「ティアンカ…?」
そう。ティアンカだった。そして、彼女の顔を見た瞬間、すべてを思い出す。
「…記憶を消すって、こういうこと……?」
思わず呟いてしまった。
そんな呟きは彼女には届かなかったみたいで、
「大丈夫ですか? 体調を崩されたとお聞きしたので……」
とかなんとか。
『誰のせいだと思ってんの…?』
ついイラっとしてしまった。
だけど、彼女に当たっても仕方ないのは分かってる。彼女もただ、自分の<使命>に忠実なだけだ。
それは分かってるんだけど……
でも……
でも、彼女の顔を見て決心がついた。
「……勇者に、なってもいいよ……」
だけどはっきりとした結論は出ないまま朝になってしまって、ほとんど一睡もしないで点呼の時間を迎えてた。
と言っても、昨日、みんなして鍛錬に張り切り過ぎたことでライアーネ様から、
「明日は一日、休養日とする! しっかりと体を休めて疲れを取れ」
って言い渡されてしまったそうで、点呼の後は休息の時間になってしまった。
だから私は部屋に戻って、かつての宿舎と同じように同室になったソーニャに、
「あの…」
と話し掛けようとした。相談する為に。
……って、あれ…? 私、今、何を話し掛けようとしたんだっけ……?
「どうしたの? ヒドイ顔。ちゃんと寝た?」
「ああ…うん、なんだかよく寝られなくって…」
「あ~、それは私も同じかな。なんか焦っちゃって」
「うん、そうだよね。ここでこんなことしてていいのかなって」
「まったくだよ。早くドゥケとポメリアのこと助けに行きたいのにさ」
「ホントホント」
……おかしい。話したかったことってこんなのだったっけ?
なんだかひどく頭が混乱してる気分。大事なことを忘れてる気がするのに思い出せない。
「…ごめん。なんか頭が痛いから、今日は寝るね…」
「そっか、寝られるんだったら寝た方がいいね。私も今日は本でも読んでゆっくりするよ」
なんて、『違う、こうじゃない』と思いつつ、私はベッドに入って横になり、ほとんどそれと同時に眠りに落ちてしまったのだった。
「そろそろ昼食だけど、どうする? 起きられる?」
ソーニャに声を掛けられて、私はハッと目が覚めた。寝過ごしたみたいな気分になって焦ってしまう。
それでも体がすごく重く感じられて、起き上がるのが辛かった。
「辛いんだったら無理しない方がいいよ。昼食は私が持ってきてあげる」
「ありがとう…」
申し訳ないなと思いながらも甘えさせてもらった。
すると、ソーニャが部屋を出て行ったのと入れ替わるようにして入ってきたのが、
「ティアンカ…?」
そう。ティアンカだった。そして、彼女の顔を見た瞬間、すべてを思い出す。
「…記憶を消すって、こういうこと……?」
思わず呟いてしまった。
そんな呟きは彼女には届かなかったみたいで、
「大丈夫ですか? 体調を崩されたとお聞きしたので……」
とかなんとか。
『誰のせいだと思ってんの…?』
ついイラっとしてしまった。
だけど、彼女に当たっても仕方ないのは分かってる。彼女もただ、自分の<使命>に忠実なだけだ。
それは分かってるんだけど……
でも……
でも、彼女の顔を見て決心がついた。
「……勇者に、なってもいいよ……」
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