ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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それを心の支えに

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「…じゃあ、カッセルが言ってたことは本当なの…?」
 呟くように言った私に、ティアンカは、
「カッセル…? ああ、あの裏切り者の人間ですか? あれの言うことは真に受けてはいけません。パートナーを喪って気が触れてしまっただけですから」
 とか、平然と。
 私はもう、立っていることもできなくなって、グラグラと揺れる体を何とか支えて、部屋に入って崩れるように椅子に腰かけた。ティアンカも私を追うようにして部屋に入ってくる。
 しかも、あの熱を帯びた目で私を見詰めながら。
 私はそんな彼女をまともに見ることもできなかった。頭の中がぐちゃぐちゃで、整理がつかない。
「それは…勇者はみんな知ってることなの?」
 辛うじてそう問い掛ける私に、彼女はやっぱりこともなげに言う。
「知りません。と言うか、忘れてます。勇者になった後でほとんどの人は消してほしいと言いますから」
 ……その気持ち、私にも分かる気がする。
 確かに、勇者になって大切な人を守りたいという気持ちはきっとみんなあるんだろう。だけど、それが全て善神バーディナムの掌の上ってことなの……?
 魔王を倒さないと、自分の大切な人が命を落とすかもしれない。だけど、命懸けで、いや、ポメリアの言ってたことが事実なら、勇者自身は命を捨てて魔王を倒しても、ほんの百年かそこらでまた元の木阿弥だなんて、そんなの知ってて戦うとか、私にはできそうにない。
 だけど……
『そうか……でも、しばらくの間は平和になるんだ……少なくとも、自分が大切な人が生きてる間くらいは。みんな、それを心の支えに勇者になるんだ……』
 そんな風に考えれば、まだなんとか納得できそうな気はする。
 気はするけど……でも、納得できないよ……!
「ごめん…考えさせて……」
 何とか絞り出すようにそう言った私に、ティアンカは残念そうに、
「そうですか。でも、私、待ってます。あなたならきっと立派なら勇者になれますから…!」
 全く悪気無く、たぶん純粋にそう言ってるんだろうな。ティアンカ自身は。それが彼女の役目だから。
 でも、私には……
 ……
 ……ドゥケは、どうだったのかな……ポメリアにそれを打ち明けられて、それでも納得して勇者になったのかな……
 そんな考えが頭をよぎった途端、私は無性にドゥケ自身にそれを問い質してみたいと思った。もしかしたら彼自身はそのことを覚えてないのかもしれないけど。
 だとしたら、なおさら、彼に会いに行かないといけない。正直、今でも無事でいる可能性なんてほとんどないだろうけど、でも、もしかしたら……
 そう考えてもすぐには決心できなくて、私は、体は疲れてるのにほとんど一睡もできずに夜を明かしたのだった。

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