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ゾゾゾってなるの!
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魔王軍に属してない魔族を<はぐれ魔族>とか呼んだりするけど、実際には魔族も元々普通の獣と同じで割とその辺にウロウロしているものだった。しかもスケルトンドラゴンやスケルトンウルフやゾンビのように、獣や人間が死んで魔族化したものは、本質的には生きてた時よりも力は衰える。死や痛みを恐れないし力の加減をしなくなるから厄介なだけで、心づもりさえしっかりと持って油断せずに対処すれば、獣や盗人を警戒するのと変わらない。
せいぜい、親が子供に言うことを聞かせるための方便として、
「いい子にしてないと魔族が来るよ」
などと脅すことに利用される程度の存在でしかなかった。
それを、突然現れた<魔王>が支配下に置き、自らの軍勢としたのだ。
<魔王>というのは、お伽話の中にも出てくるし、神妖精族を滅ぼしたとも言われるくらいにこれまでにも何度か現れては善神バーディナムの加護を受けた勇者によってその都度倒されてきたそうだった。
それがただの<お伽話>なのか実際にあった話なのかは、その当時から生きている人がいないから実際には分からない。だけど、お伽話という形以外にも、その当時の書物や言い伝えの中にも残ってるそうだ。
でもこうして私達は今、魔王と戦っているのだから、それらの話は本当にあったことなんだろう。それがどれだけ正しく伝わってるかは別として。
私とポメリアは、はぐれ魔族を何とか退けながら西へと歩く。
そんな私達の前に、また、はぐれ魔族が現れた。
気を付けてたはずなのに、私の目がその姿を捉えた時には周囲を囲まれてた。
「クモコウモリ…!?」
木の枝からぶら下がる黒っぽい緑色の塊。木の葉に紛れて気付くのが遅れたんだ。しかもこいつらは、獲物が自分たちの包囲の中へ十分に入ってくるまで気配を殺してじっと待ち、そして一斉に襲い掛かって生き血を吸うという、魔族にしては知恵の働く奴らだった。
その姿は、まさに<翼を持ったクモ>そのものだ。女の子が嫌う魔物ナンバーワンの座をキープし続ける、私も大嫌いな奴らだ。
『ひいいいっ!』
内心、悲鳴を上げて一目散に逃げだしたかったけど、今では仮にも騎士の端くれ。魔族を相手にそんな不様な姿は見せられない。
「でも、イヤなものはイヤ~っ!!」
ポメリアには背中合わせになってもらって、彼女にも短剣で応戦してもらって、私は必死で剣を振り回した。正直、騎士としてはものすごく不様だったかもしれない。だけどイヤなの! 気持ち悪いの!
一番前の一番長い脚がコウモリみたいな羽になっててそれで空飛んで、残りの細くて長くてワシャワシャ動く脚で掴みかかってくるその姿が、ものすごくものすごくゾゾゾってなるの!!
せいぜい、親が子供に言うことを聞かせるための方便として、
「いい子にしてないと魔族が来るよ」
などと脅すことに利用される程度の存在でしかなかった。
それを、突然現れた<魔王>が支配下に置き、自らの軍勢としたのだ。
<魔王>というのは、お伽話の中にも出てくるし、神妖精族を滅ぼしたとも言われるくらいにこれまでにも何度か現れては善神バーディナムの加護を受けた勇者によってその都度倒されてきたそうだった。
それがただの<お伽話>なのか実際にあった話なのかは、その当時から生きている人がいないから実際には分からない。だけど、お伽話という形以外にも、その当時の書物や言い伝えの中にも残ってるそうだ。
でもこうして私達は今、魔王と戦っているのだから、それらの話は本当にあったことなんだろう。それがどれだけ正しく伝わってるかは別として。
私とポメリアは、はぐれ魔族を何とか退けながら西へと歩く。
そんな私達の前に、また、はぐれ魔族が現れた。
気を付けてたはずなのに、私の目がその姿を捉えた時には周囲を囲まれてた。
「クモコウモリ…!?」
木の枝からぶら下がる黒っぽい緑色の塊。木の葉に紛れて気付くのが遅れたんだ。しかもこいつらは、獲物が自分たちの包囲の中へ十分に入ってくるまで気配を殺してじっと待ち、そして一斉に襲い掛かって生き血を吸うという、魔族にしては知恵の働く奴らだった。
その姿は、まさに<翼を持ったクモ>そのものだ。女の子が嫌う魔物ナンバーワンの座をキープし続ける、私も大嫌いな奴らだ。
『ひいいいっ!』
内心、悲鳴を上げて一目散に逃げだしたかったけど、今では仮にも騎士の端くれ。魔族を相手にそんな不様な姿は見せられない。
「でも、イヤなものはイヤ~っ!!」
ポメリアには背中合わせになってもらって、彼女にも短剣で応戦してもらって、私は必死で剣を振り回した。正直、騎士としてはものすごく不様だったかもしれない。だけどイヤなの! 気持ち悪いの!
一番前の一番長い脚がコウモリみたいな羽になっててそれで空飛んで、残りの細くて長くてワシャワシャ動く脚で掴みかかってくるその姿が、ものすごくものすごくゾゾゾってなるの!!
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