ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

文字の大きさ
33 / 105

分かってるけど…

しおりを挟む
 何とも言えない湯あみの時間が過ぎて、今度は逆にのぼせそうになって私は風呂から上がらせてもらった。熟れた果実のように真っ赤になった私をさすがにポメリアも呼び止めようとはしなかった。
「ああ…これはあれだ、<湯あたり>ってやつだ……」
 頭がくらくらして立っていられなくなったから、肌着だけを纏って私はテントの中で横になってた開け放った出入り口から流れ込んでくる風が心地いい。
 湯あたりとは言ったものの、たぶんそれだけじゃないってのも分かってた。ドゥケとみんなのイチャイチャっぷりに当てられたんだ。
「はあ…何してんだろ私……」
 正直、ドゥケに対してイライラするのはやめようって思ってた。私一人がいくら反発したって、みんながドゥケを必要としてるのは変わらないしさ。
 それに……
 それに、ドゥケって確かに優しいし……
 一人、自分のことを受け入れてない私に対しても彼は気遣ってくれてた。確かに女の子にはだらしないかもだけど、少なくとも女の子を弄ぼうとか玩具にしようとかそういうのじゃないっていうのは、ここまで見てきてさすがに分かったよ。
 彼は、戦で心をすり減らしそうになってる彼女達を支えてくれてるんだ……
 彼がいるから、みんなは戦えてるんだ……
 他の部隊の様子を見てて分かった。あれが本来の<戦の姿>なんだ。傷付き、心をすり減らし、同じ王国軍の仲間すら妬みの目で睨み付けずにはいられなくなる。
 この青菫あおすみれ騎士団がそうならずにいられてるのは彼のおかげなんだって分かった。
「認めるしかないじゃない……」
 手で自分の顔を覆いながら私は自らに言い聞かせるようにそう呟いてた。
 だけど、だからって私が彼を受け入れるっていうのは話が違うからね…!
 彼のことは認めるけど、私がこうして正気を保ってられるのは、みんなが正気を保ってるからなんだからね!
 …って、それ自体が彼のおかげだっての…
 彼がいるからみんなの正気が保たれてるんだっての。
 分かってるよ…
 分かってるけど、だからって心も体も彼に対して開くって、私にはできないよ……
 ここでは私の方が異端なのかもしれない。でもさ、私は私なんだよ。他の子達じゃないんだ。そこを曲げたら、私が私でなくなっちゃう気がするんだよ。
 それに、ドゥケも私に「心を開け」みたいなことを言ってこないしさ。それがまた気遣われてるんだって分かるけど、それに甘えてるだけなんだって思うけど……

 そんなことを思ってる間に、私はいつの間にか眠ってしまってたみたいだった。だけど次の瞬間、
「―――――っっ!?」
 私は、自分がテントごと地面を転がってることに気が付いたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...