ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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厳しい現実

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 その日の夜は魔王軍の進撃もなく、そのままみんな休むことができた。だけど、リデムが受けた念話によると、山向こうの部隊が昨夜、魔王軍の攻撃を受けて被害が出たって話だった。向こうにも探知の魔法を使える魔法使いがいたけど、たまたま体調を崩して調子が悪かったところに攻撃を受けたらしい。
 幸い、何とか凌ぐことはできたけど、何人かが亡くなったらしいという話も伝わってきた。
 ここでは戦死者が出てないからなんとなく実感が薄かったけど、私達がいるのは本当に命懸けの戦場なんだっていうのを改めて思い知らされた気がした。
 こちらの陣地は余力があるから、怪我人の収容と物資の補給と攻撃の時の様子を確認する為に、部隊を一つ、そちらに出すことになった。
「…と、シェリスタ、行ってくれるか?」
 ライアーネ様が十人を選んで、その中に私も選ばれた。「はい!」と敬礼にも力が入る。いつもの任務じゃないけど、これも大事な役目だ。しっかりしなくちゃ。
 すぐさま用意をして、物資の輸送と怪我人の収容の為の馬車に乗り込み、私達は山向こうの陣地へと向かうことになった。
 それを、ドゥケがやっぱり軽薄そうに笑いながら見送ってた。
『…ふん!』
 と私は無視したけど、しばらく進んだところで不意に気が付いた。
『…あれ? ということは、ドゥケはいない…?』
 そう。ドゥケはいない。私達、青菫あおすみれ騎士団のメンバーだけでの任務になる。それは、私にとっては初めてのことだった。私がここに配属された時にはドゥケがいたから。
『いやいや、あんな奴がいなくたって私達だけでもできる…!』
 何となく背筋が冷たくなるのを感じながら、私は気合を入れ直して自分に言い聞かせた。私だってもう六体も魔物の兵を倒したんだ。一人前の騎士なんだ…!
 山越えそのものは、それほど急峻なものじゃなかったから順調そのものだった。途中、はぐれ魔物に遭遇したりもしたけどみんなで力を合わせればどうってこともなかった。そうだよ。これが私達の力なんだ。
 だけど、山向こうの部隊に到着したら、そこは私が想像していた以上に厳しい状態だった。私達がいる陣地とは大違いだった。壊された建物。騎士も戦士も関係なく、傷を負ったままそれを修理する姿。地面に寝かされた重傷者達。
『これが…前線……?』
 支援物資の搬入を手伝いながら私はそんなことを思ってた。
 物資を下ろした荷馬車に、今度は重傷者を収容する。この部隊のヒーラーが疲弊して手が回らないからだ。だから体を動かすのは問題ない軽症者はそれこそそのままにされてる。
 重傷者は私達が連れ帰って、ポメリアに治してもらうんだ。

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