ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

文字の大きさ
5 / 105

くっ、破廉恥な……!!

しおりを挟む
『ドゥケ様と一緒に戦い始めてから、我が青菫騎士団は一人の死者も出してないの。それも全て、ドゥケ様のおかげ』
 ライアーネ様が言ったことは事実だった。少なくとも私が来てからは誰一人戦死してないのは確かだった。他の騎士団や部隊には今でも少なくない戦死者が出てるとは聞くのに。
 だけどそれがあのドゥケのおかげというのがどうしても納得いかない。
 釈然としないまま宿舎内を歩いていると、ドアが開け放たれた部屋の中にいたリデムの姿が目に入った。
 ドゥケに付き従ってる魔法使いのリデムは探知魔法が得意だからいつも魔王軍の動向を探ってる。それで進軍してきたら迎え撃つのが私達の役目。
 なのに、リデムはドゥケに与えられた部屋で、あいつを膝枕に寝かせて酒を飲んでた。しかも自分が口に含んだそれを、口移しでドゥケに飲ませたりとか。
 くっ、破廉恥な……!!
 ライアーネ様はああ言ったけど、私にはやっぱりドゥケの何がそんなに魅力的なのかまったく分からない。
 私は一人、鍛錬用の剣を手にして宿舎の裏で素振りを繰り返してた。集中して汗を流して雑念を払いたかったから。
「九九八、九九九、千…!」
 汗がだらだらと滴って手がしびれて、腕が上がらなくなってきた。なのにあいつの破廉恥な姿が頭から離れない。
 ああもう! どうしろっていうのよ!?
 もう一度剣を振り上げようとした時、頭上で手が滑り剣がくるんと回って刀身が私の頭に迫るのが分かった。なのに疲れ切った私の体はそれに反応できずに、次に来る衝撃を想像して目を瞑ってしまった。大怪我は免れないと覚悟した。
 ……?
 でも、来るはずの衝撃は来なかった。それどころか剣が地面に落ちる音さえしなかった。恐る恐る目を開けて見ると、私の前に人影が立っていた。さっきまで周りには誰もいなかった筈なのに。
「…な…っ!?」
 って思わず声を上げた私をニヤニヤと笑いながら見ていたのはドゥケだった。その手には、私が振ってた剣が握られてた。
「熱心なのもいいけど、鍛錬で怪我しちゃ意味ねーだろ」
 いつもの軽口に、私の体の中を血が逆流するのが分かった。顔がカアッと熱くなり、全身がわなわなと震えるのが分かる。
「ぶ…無礼者っっ!!」
 叩き付けるみたいについ声を上げた私に、ドゥケは肩を竦めて言った。
「おいおい、こういう時はまず『助けてくださいましてありがとうございました』じゃないかな? 俺が気付かなきゃ、おたく、大怪我じゃ済まなかったかもよ」
「…ぐ……っ!!」
 この時、私は、頭に血が上りすぎて気付いていなかったのだった。私の視界にいなかったドゥケが、ほんの一瞬の間に私の手から離れた剣を、頭に当たる前に掴んで止めたというのがどういうことかっていうのを。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

あなたがそのつもりなら

素亭子
恋愛
リリアーナはランス侯爵からの求婚をうけて結婚したが、わずか一年で夫は愛人を持った。リリアーナの仕返しの話です

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

完結 報復を受ける覚悟の上での事でしょう?

音爽(ネソウ)
恋愛
目覚めたら、そこは記憶にない世界だった……

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

処理中です...