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本の虫、再び

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「トーマ…ライアーネ……」

振り返って思わず呟いた私の目を、二人が真っ直ぐに見詰めてた。その目が、『ちゃんと話して』って言ってる気がした。だから私も、正直に話すことにした。

『セレイネスの王子様は人でなし。王女様の手紙をこんな形で捨てるなんて……』

石壁に私の字で書かれたその落書きを、トーマとライアーネにも見てもらった。

「…どういう意味だ…?」

「言葉通りに受け取ったら、ププリーヌを受け取った王子様がそのままププリーヌを捨てたって意味にも思えるけど、正直、前後の文脈がなかったらかなりいろんな意味にとれる内容だよね」

「…そうだな。

まず、この<セレイネスの王子様>がそもそも、王女様がラブレターを出した王子様だとは限らない。もしかしたら王女様のラブレターが本当の宛先である別の王子様に届く前に捨てたって可能性もある」

「そうね、それ以前に、ここに書かれた<王女様>だって、ププリーヌが言ってた王女様とは別人かもしれない。

第一、<王女様の手紙>がププリーヌのことを指してるとも限らないし」

「ああ、だから、ププリーヌが捨てられたっていう意味の落書きじゃない可能性もある内容だってことだよな」

「そういうこと。だからププ…プリムラ、まだ結論は急がなくていいと思う。ただ、あなたの足取りを調べる上では重要な手掛かりなのは間違いないと思う」

「確かに。<セレイネスの王子様>っていう言葉が出てきてるってのは大きいぜ。王子様っていうくらいだからどっかの国の王族な訳で、伝承として残ってる可能性はずっと高い」

二人がそう言った時、私は思い出したことがあった。

「…そう言えば、ナフィと一緒にいた時に読まされた本の中に<セレイネス>って言葉があった……」

呟いた私に、二人が「それだ!!」って声を上げる。

「本に載ってたってことは、他にもそのことが載ってる本がある可能性がある!」

「そうよ! シュクにもきっと、蔵書を集めた書庫や図書館があるはずよ! まずはそこで調べてみるって手があるわ」

「あと、シェリーナとルビンにも手紙で聞いてみよう! 印刷所なら本のこともそれなりに知ってるかもしれない! それとナフィもだ!」

そして私達は、ゼンキクアの町の跡を離れ、シュクで一番の蔵書を誇るという、国立図書館へとやってきた。そこで、一ヶ月くらいは腰を据えて本を調べることにしたんだ。シェリーナとナフィにもそれぞれ手紙を出して、返事も待つ。

「正直、俺もライアーネも、読める文字は限られてる。俺達が読める文字で書かれた本については俺達が調べてみる。プリムラはそれ以外で読める文字を片っ端から調べてみてくれ」

こうして私達は、<本の虫>になったのだった。

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