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ヤンが言ったゼンキクアっていう国があったらしい海辺の土地を、東への旅の最終目的地にして、私達はシュクへと足を踏み入れた。
最初に立ち寄った町は西との交易の中継地として重要な町らしくて、かなり栄えてる感じだった。そこでもまず冒険者ギルドに立ち寄って、シュクに関する大まかな情報と仕事を得た。
シュクは、大陸の東の殆どを支配してる大きな国だった。広さだけなら<北の方の大国>よりも小さいかもしれなくても、寒くて殆ど人が住めない場所も少なくない向こうに比べて<国力>という意味では決して負けてないらしい。そういう意味では北の方の大国の影響を受ける心配が少ない場所でもあった。
でも、その街に入った途端、私は人に話し掛けられるようになってしまった。
「あんた、その顔はラプンの人かい?」
って。
ラプンというのは、ゼンキクアとの交易があったっていう海の向こうの国のことだった。ゼンキクアがなくなってからもそこの人達はラプンとの交易を続けてて、ラプンの優れた工芸品や純度の高い金細工、虫の糸を編み込んだ生地はすごく珍重されて、手に入れたいっていう人やそれで商売がしたいっていう人はたくさんいるらしい。
人除けの為にやったメイクが逆に人寄せになってしまった。
困ったな……
だけどジルはあくまでこのメイクをした私についてきてる訳だから、今さらやめる訳にもいかない気がする。少なくとも、ジルが私につきまとってる間は。
…あれ? でも私がこのメイクをやめたらつきまとわれる理由がなくなるってことでもあるよね…?
ゼンキクアがあった土地にジルの親戚とか知り合いとかがいなくても、少なくとも同じ民族だっていうことならまだ居心地はいいんじゃないかな。だからそこに着いたらメイクをやめて、それでジルが離れてくれるならいいかもしれない。
というわけで、しばらくの間は我慢して、ゼンキクアがあったところに着いてから改めて考えることにした。
トーマとライアーネと小さいアーストンは町はずれに現れる獣退治に、私は反対側の町はずれに現れる獣退治の仕事を見付けて、それぞれの仕事へと向かった。仕事の期間は三日。それが終わったらまた冒険者ギルドの前で落ち合おうということになった。
ジルは当然、私の方についてくる。
仕事の場所に着くと、そこは小さな畑がいくつも集まったような場所だった。
こんな畑だと牛とか馬で耕すには不便だろうなって思ってたら、人が、これまであまり見たことのない道具を使って耕してた。
これを全部人の力だけで耕したのか…?
正直、少し呆れたような気分になったのだった。
最初に立ち寄った町は西との交易の中継地として重要な町らしくて、かなり栄えてる感じだった。そこでもまず冒険者ギルドに立ち寄って、シュクに関する大まかな情報と仕事を得た。
シュクは、大陸の東の殆どを支配してる大きな国だった。広さだけなら<北の方の大国>よりも小さいかもしれなくても、寒くて殆ど人が住めない場所も少なくない向こうに比べて<国力>という意味では決して負けてないらしい。そういう意味では北の方の大国の影響を受ける心配が少ない場所でもあった。
でも、その街に入った途端、私は人に話し掛けられるようになってしまった。
「あんた、その顔はラプンの人かい?」
って。
ラプンというのは、ゼンキクアとの交易があったっていう海の向こうの国のことだった。ゼンキクアがなくなってからもそこの人達はラプンとの交易を続けてて、ラプンの優れた工芸品や純度の高い金細工、虫の糸を編み込んだ生地はすごく珍重されて、手に入れたいっていう人やそれで商売がしたいっていう人はたくさんいるらしい。
人除けの為にやったメイクが逆に人寄せになってしまった。
困ったな……
だけどジルはあくまでこのメイクをした私についてきてる訳だから、今さらやめる訳にもいかない気がする。少なくとも、ジルが私につきまとってる間は。
…あれ? でも私がこのメイクをやめたらつきまとわれる理由がなくなるってことでもあるよね…?
ゼンキクアがあった土地にジルの親戚とか知り合いとかがいなくても、少なくとも同じ民族だっていうことならまだ居心地はいいんじゃないかな。だからそこに着いたらメイクをやめて、それでジルが離れてくれるならいいかもしれない。
というわけで、しばらくの間は我慢して、ゼンキクアがあったところに着いてから改めて考えることにした。
トーマとライアーネと小さいアーストンは町はずれに現れる獣退治に、私は反対側の町はずれに現れる獣退治の仕事を見付けて、それぞれの仕事へと向かった。仕事の期間は三日。それが終わったらまた冒険者ギルドの前で落ち合おうということになった。
ジルは当然、私の方についてくる。
仕事の場所に着くと、そこは小さな畑がいくつも集まったような場所だった。
こんな畑だと牛とか馬で耕すには不便だろうなって思ってたら、人が、これまであまり見たことのない道具を使って耕してた。
これを全部人の力だけで耕したのか…?
正直、少し呆れたような気分になったのだった。
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